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天上のダイアグラム  作者: R section
第8章 境界の位

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第173話 必然の均衡

―――MoRS本部 幽世 指令セクター


大佐が敵を圧倒している間、他の人員はある作戦を行っていた。


「皆さん。それでは始めますわよ。」


そう告げたのは針崎だった。


同時に、多くの人員がモニターへ向き直る。


「管理官、解析セクターより情報出ました。」


「よろしいですわ。メインへお願いします。」


中央にある大型モニターに映し出されたのは


”交代手順

1.国立社会学研究所の大型実験というカバーストーリーの流布

2.暗黙のルールの順守は社会性を獲得するが、自己を損なうという研究発表

3.OAが自己の意見を表明

4.構成員による、依然の価値観の混在化

5.大手企業へ、個人の意見を述べたり実行した者への優遇を依頼

etc...


というように、作戦のフローが組まれた。


「皆さん。この順番で行きますわ。しかし、ゆっくりと時間をかけてください。」

針崎は添えた。


「「「了解」」」


一同は動き出した。

まずは、工程1からだ。


「立案セクターより、CSの草案届きました。」

一人の司令部員が報告する。


「承知ですわ。メインへお願いします。」


詳細なカバーストーリーが表示される。


「さすがですわね。AIを使ってもこの速度...脱帽ですわ」


―――しずめの学校(しずめ視点)


学校はより一層静けさを増し、だれもが発言を控えていた。


ポーン


チャイムが鳴る。


担任が入室する。

どうやらいつもより表情が明るい。


「皆さんにお伝えしないといけないことがあります。」


表情は明るいのに重たい切り出しだった。

しずめは、なんとなくまた目が合ったような気がして不安を感じる。


そのような気も知れず担任は続けた。


「まず、先日からのフォームや提出といった行動は国立社会学研究所からの依頼で、全国の学校機関が実施していたテストです。」


当然、教室はどよめく。

否、教室ではない。

学校全体がどよめいている。


「落ち着いてください。我々学校側も決して安易に受け入れたわけではありません。」

学校が保身に走る中、しずめはとうとう口を開く。


「でも、先生方が何と言おうとも私たち生徒は混乱と恐怖を味わいました。」


「はい。なのでこの場でお詫び申し上げます。」


「お詫び...ですか。私たちの数日、限りある学生の数日を奪うということがあなた方教員に分からないわけがないでしょう?」


「はい。ですが、学校も文部科学省からの依頼には逆らえませんでした。」


「あなた自身は文科省からの依頼だと知っていたうえでこのようなことを?」


「いえ、私も今朝校長から聞きました。」


「では校長が直...あ...」


しずめは気づいた。

というより、しずめだから気づくことができた。


「いえ。分かりました。」


「納得していただけたようで何よりです。」


「納得?はは...(納得していない。でも、先生が可哀そうだ。)」


「ま、まぁ...ひとまず朝礼から始めましょう。」


朝の学校での一悶着は、整然と終わりを告げた。


―――MoRS本部 幽世 指令セクター


しずめの学校を含む、全国の教育機関での発表を終えて

工程は2に進んでいた。


「効果はどうでしょうか?」

そう針崎に質問したのは副管理官補佐の北村だ。


「どうでしょう。わたくしの予想では3割といったところですわ。」


それに氷室は事実を述べる。

『現実の回帰度:24% 』


「あら。もう少しかかりそうですわね。」


「それでは、次を始めましょうか?」


「ですわね。」


―――国立社会学研究所 会議室


教育機関での一件から、すぐにSNSでは、大規模実験の話題がトレンドを占めていた。

事前に予測していたかのように、国立社会学研究所は会見を行った。


「お集まりいただき有難うございます。当研究所所長より、事態の説明を」

「では私渡辺より常識の変容に係る社会的影響実験について」

そして詳細が所長より説明された。


一連の事実を説明した後、渡辺所長は結論を述べた。

「最後に、実験結果として社会において、暗黙のルールというのは社会性を獲得するが、自己を損なうということが分かりました。」

「簡単に言えば、自分らしさを犠牲にして社会に順応するということです。」


会場がどよめく


司会は続けて

「最後に、質疑応答を行います。希望者は挙手を」


あまりの衝撃に誰も質問を考えられなかったが、ある人物が口火を切る。

「はい。」


「では、あなた。」


「はい。大手前テレビの山西です。

 所長にお聞きしますが、暗黙のルールがなければ、現在の日本は成立しないよう

 に思いますが、それでも避けるべきだということですか?」


「お答えします。まず、我々はあくまでもそういった結果が得られたという発表であって、避ける避けないはこの先の社会が決めることです。」


「では、丸投げすると?」


「いえ、現代日本にとって、暗黙のルールが秩序の維持に大きく貢献しているのは自明です。ですが、それが過剰になると時には自己の喪失という毒になるということを知って頂きたいのです。それを元に、我々も含め社会全体が考える必要があると思っています。」


「分かりました。有難うございます。」


「では次の方。」


暫く質疑が続いた。


「ではこれにて会見を」


「待ってください。」

声を上げたのは渡辺所長だった。


「誰もあえて質問に挙げなかったので、自主的に答えさせていただきます。」

「我々が行った実験は多大なる被害をもたらしました。これは事実です。

 ですが、日本社会がいずれ直面する課題を早期に発見できたことは

 未来の社会にとって大きな利益となります。」


渡辺所長はあえて述べた。

MoRSの信念と重なるようなその言葉は人々へ大きなきっかけを作った。


―――MoRS本部 幽世 指令セクター


『現実回帰度:54%へ上昇

 暗黙に関する項目の理解度が上昇』


「渡辺さんはうまくやったようですね。」


「ええ、彼は我々の管理官ですわよ。疑念の予知などありませんわ」


”渡辺三郎”


MoRS本部 管理官

国立社会学研究所 所長


肩書は常にその人物の役目を示す。

渡辺という人物の肩書は多くの人間より重いものだった。


「それにしても、渡辺さんあんなに人前ではきはきと喋れるんですね。」


「失礼ですわよ。確かに研究バカと言えるでしょうが、彼は日本の社会心理学において第一人者ですわよ。」


「ですがMoRSの人員としてみる彼は、あまりにも変わっています。」


「ですわ、でも彼がいなければMoRSの根幹は生まれなかったと思います。」


「”知ることで初めて対策できる”ですか。」


「ええ」


彼のモットーは”知ることで初めて対策できる”だった。

それは、机上の空論だとしても、自明な理論だとしても

まずは知らなければ対策できない。


社会という大きな集合であっても

その中で知らない要素があれば大いに間違いを犯す。

ということだった。


「彼のモットーで言えば、社会が危険性をしったのであれば

 いずれ、社会自身が修正するように動くのですわ。」


「はい。そのためにも次の工程を始めましょう。」


―――アリシアCh 生配信


「皆さん。おはようございます。本日は私の配信にお越しいただきありがとうございます。」


オープンエージェントのアリシアは、配信を始める。

それと同時に、手元の端末を見て指令を確認する。


MoRS専用のメッセージアプリには

『暗黙のルールは必ずしも守らなければならないわけではない』

『上記のテーマで配信』

と表示されている。


よしっ!と心の中で唱え、視聴者へと向き直る。


「今回は今話題の、暗黙のルールについて、お話ししたいと思います。」


誰もが発言すれば刃を向けられる静寂から

意見を述べ、刃を削ぐ作戦が今、始まろうとしていた。


MoRSの本当の作戦はこれから始まる。

次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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