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天上のダイアグラム  作者: R section
第8章 境界の位

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第172話 砲火の行方

今回はとても重要でとても盛り上がる回です!!お楽しみに

暗闇は、隠す。

だが暗闇は、落とす。


落ちるのは血じゃない。

落ちるのは手順だ。

手順は、光より先に匂う。


―――大学 職員専用駐車場 MoRS工作用大型車両 進紅2式(雪乃視点)


轟音の直後、世界が傾いた。

床が壁になる。

壁が天井になる。


揺れが止まるまでの数秒は、長い。

長い間に、人は余計な言葉を吐く。

余計な言葉は、舞台になる。


だが雪乃は吐かない。

吐くのは息だけ。

息は薄く、短く。


視界の端で、拘束具の金具がわずかに反射する。


――“そこにいるはずのものが、いない”。


「……」


雪乃の演算装置は即座に状況を解析する。

このタイミングでの異常、媒介の消失

おそらく、敵の差し金だろう。


拘束していた帯が、切れている。

切り口が綺麗すぎない。

だが荒くもない。


“丁寧すぎない丁寧さ”。


状況分析から、仮定を導く

媒介にはここが車両の内部だとは伝えていない。

しかし、おそらくは爆発物で襲撃された。


ならば、敵が用意したと考えるのが当然だろう。


予想はまとまった。

だが、差し迫った問題がある。


”ここは安全ではない”


幸い、進紅2式はMoRSPMの強襲作戦用の車両だ。

武器は腐るほどある。


だが、敵の情報がない。


「さて、どうしましょうか...」


雪乃は率直に吐き捨てた。

改めてログと現在の空間情報を確認する。


媒介の高速具が綺麗だ。

異変に気付いて確認すると、明らかに正規の手段で解除されている。


雪乃の背骨が一拍硬くなる。

硬さは恐れじゃない。

距離が縮んだ感覚だ。


それが何を意味するのか、分からないはずもない。


外から、靴音。

一足。

二足。


走らない。

走れば目立つ。

目立てば顔が立つ。


扉が、わずかに軋む。

そして——声。

この場に似合わないほど丁寧な声。


「……回収」


雪乃は、冷静に回線を開く。


―――秘匿回線(音声のみ)


──中枢:接続確認。


雪乃は短く落とす。


「大佐。回収が入った」

「対象は“狐”ではありません」


返事は短い。硬い。


『動くな』


「承知しました。」


瞬間、扉が少し開く。

外の光が細く刺さる。


だが、だれも入ってこない。

作法を知っている。

裏の作法。


「……丁寧だね」


その声が落ちた瞬間、雪乃は確信する。

これは敵ではない。

“敵の声”じゃない。


だが、敵の言葉を運ぶ声だ。


―――大学屋上 (大佐視点)


大佐は作戦を針崎に任せて、隠密行動をしていた。

明らかに局面が動くと分かっているが、敵がどのような手段をとるか

それは大佐にしかわかっていなかった。


隠密行動といえば、軽装で静かなイメージだが

大佐はそうではなかった。


暫く屋上で気配を消していると、静かに扉が開く。

「UNIT-02 到着」


明らかに学生ではない。

作業着の上から、現行世代のプレートキャリア

片手にはギターケースと思われるもの


(ここまでするのか。)


おそらく中身はM700あたりだろうか。

確実に狙撃銃が入っている。

現代日本では簡単に手に入らないだろうに


(プロじゃないな。専門家だ。)


媒介は裏の世界のプロだった。

だが、目の前でギターケースをいじるその人物は

明らかに生業としてやっている専門家だ。


目の前の人物はギターケースから長い何かを取り出す。

そして先端に二回りほど大きい筒を付けて、柵の隙間に通す。


寝そべるような姿勢で高額照準器をのぞき込み

「UNIT-02配置完了」


自身の状態を正確に報告する。


(はぁ。だから嫌だったんだ。)

心の中で大佐は愚痴をこぼす。


そして、大佐は静かに、手元のM416を目の前の人物に向ける。


―――同時刻 MoRS本部 指令セクター


針崎は雪乃の尋問を聞いていた。

「さすがというべきですわね。」


氷室は坦々と報告する。

『媒介:心拍上昇』


「わたくしではここまで残忍にはなれませんわ。」


ただじっと雪乃の尋問を見つめる針崎だったが


ガシャン!!


スピーカーから大きな音が流れる。


「まずいですわ...大佐に至急連絡を」


『通知済み』


「氷室さん。加えて、返影作戦の方も実行してください。」


『了解。作戦実行:返影作戦

 F1:デコイの自爆を開始。』


「大佐。頼みますわよ。」


―――大学屋上 (大佐視点)


大佐は目の前の人物に照準を合わせる。

だが撃たない。


そもそも雪乃がいる場所は、その程度の銃撃ではびくともしない。

だから出るまでは撃たない。


刻々と時間だけが過ぎる。

しばらくして、新校舎の窓から閃光


バコン!!

次の瞬間、雪乃のいるトラックが横転する。


大佐は慌てて目の前の人物を撃った。

だが、急所を外れる。


仕留めきれなかったものの、人物は多大な損害を受けていた。

「クソ...なんなんだ。」


上手く体を動かせずにいるその人物に大佐は近づいた。


コツ

コツ

コツ


大佐愛用の軍靴だけがその場に響く


近づくにつれ、なんとなくの相手が同い年くらいであると気づく。


そして大佐は再び照準を合わせ、問う。

「誰だ。」


人物は大佐をみて驚く。

そして、尋常でないほど、恐れ戦く。


「ドレッドファントム!!!!」


大佐は答える。

「そうか。君もあそこにいたのか。」


「何故????何故なんだ!!」


「君はどこから来た。」


「お前が滅ぼした悪夢からだ!!クソッ!!」


「そうか...だが間違えないでほしい。私が滅ぼしたことは相違ない。

 だが、私が隠したことでもある。」


「だとしても、お前の...お前の過去は常に付きまとうぞ!!!」


「ああ、だが、私は繰り返し、繰り返させない。」


「はぁ?クソが!まだ殺したりないのか。この防霊め!!」


大佐は答えられなかった。


その人物が持てる力の限り、大佐を罵ったこともあり

気が付けば階段から複数の足跡が響く


それに気づいた大佐は引き金を引き目の前の人物は物となる。


そしてすぐに、階段の方へと向かう。

その間に、大佐の着用するチェストプレートに装着されているPTTスイッチを押す。


その瞬間、低くそして響くような音が周囲に広がる。


―――キュオオオオオオ....


大佐が着用する装備は外見こそ一般的な軍用装備だが

その内側は違った。


能力向上強制器具と呼ばれる強化外骨格に似たような装置が仕込まれており

その駆動音は亡霊の様だと忌み嫌われている。


かつて、とある戦場ではその前身である埋め込み型能力強化装置が少年兵に使われた。

そして多大なる成果をあげたが、のちに非人道的として歴史から葬られた。


そのような兵器を使う現代兵士はもういない。


だが...


足音がピタッと止む。


瞬間、ざわざわと声がする。


「亡霊...」

「まさか。ここは日本だ。」


そのような声がする。


直後、大佐は人間離れした速度で扉を抜ける。


パシュツ!

パシュツ!

パシュツ!


サプレッサーの乾いた銃声が数回


瞬く間に敵だったものは地面に倒れる。


―――キュオオオオオオ....


「あと一人か。」


目の前には武器すら持てないほどに、怯えた人物がいた。


「選べ。すべてを話して死ぬか。何もなさずに死ぬか。」


怯えた人物は答えた。

無線機のPTTスイッチに手を当てながら。


「亡霊だ...あの亡霊たちの生き残りがいる...」


大佐は即座に頭部を撃った。


―――少し後 進紅2式


外から、靴音。

一足。

二足。


走らない。

走れば目立つ。

目立てば顔が立つ。


扉が、わずかに軋む。

そして——声。

この場に似合わないほど丁寧な声。


「……回収」

「回収を開始する。」


丁寧だが、冷静だった声は扉を開ける。


雪乃は、扉の方を見ながら覚悟を決めた。


「雪乃。大丈夫か?」


声の主は聞いたこともない声ではなかった。

だが、明らかに冷たく、丁寧だった。


「たい...さ?」


「ああ、まだ混乱しているようだが、まずはここを離れよう。」


「はい。」


安心ともに、恐れも感じる。

何故だろう。


その人とつながりたいという欲望さえ抱くのに

なぜか恐ろしい。


雪乃は分からなかった。


だがひとつわかる。

この存在は私を傷つけない。

むしろ守ってくれる。


大佐の方へ身を寄せながら、雪乃はその場を後にした。


次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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