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記憶  作者: ミカクニン
第二章 −泡沫の思い出−
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第31話 −綺麗な海−

「南の方角にある海についてだ」


「え、海!?」


"海"という言葉を聞いた瞬間、リュコは目を輝かせまるで子供のように興奮しだす。


「もしかして、カロス海のこと?」


レイは、リュコのそんな様子を気にも留めることなくおじさんにそう聞いた。


「そうだ。実は昨夜、カロス海が異常に荒れているという報告が入ってな。お前達三人にはその原因を突き止めてきてもらいたいんだ」


おじさんはそう言うと、机の上にあるいくつかの紙をこちらへと差し出す。


「なるほどな...でもそれは俺たちじゃなくても良くないか?」


「確かに。他にも兵士たちは沢山いるのに、私達を行かせる理由がないでしょ」


先程まで子供のように浮かれていたリュコは、おじさんの話を聞いた途端真面目に喋りだす。


「実はそうでもない。ここ数年、魔物の数が急激に増えてきている。そのせいで兵士の数が足りていないんだ」


「だから私達に行かせるってことね...すっごく楽しみになってきた!早く行きたい!」


寸刻前までの緊張感のある空気が一瞬にして壊される。おじさんは呆れたような顔をし、レイはやれやれといったような様子だった。


「それで、いつ行くの?明日?」


リュコはおじさんに問い詰めるように聞く。


「今からだ」


「おぉ!じゃあすぐに準備しなきゃね!...って、え...?い、今から?」


「あぁ。だからリュコの言う通り、さっさと準備してこい。」


平然と話を進めるおじさんに対して、リュコは動揺を隠しきれていなかった。それはレイや自分も同じだった。


「今から行ったら二人の足手まといになっちゃうよ......」


ここに来た目的の一つである"強くなる"ということが全くできていない現状では、外に出るのはあまり良いこととはいえない。


「そんなことない!」


リュコの顔を見ると、驚くほどに真剣な眼差しでこちらを見ていた。


「で、でも」


「それ以上自分を下げること言ったら噛み付くからね!!」


「なんで!?」


リュコは狼と人の混血ハーフというだけあって歯はとても鋭利だ。噛みつかれたらひとたまりもないだろう。


「とにかく、私達はリオのことを足手まといだなんて思ってないし、思わない」


ちらりとレイの方を様子をうかがうように見ると、視線に気がついたのかこちらに顔を向けゆっくりと頷く。


「俺も同じだ。だからリオはそんなこと気にしなくてもいいんだぞ」


「ありがとう、二人とも...」


「じゃあ、そういうことで...行きますか!!」



***



「いやー、海なんて初めて行くよ。早くつかないかなー」


海に行く準備を終え、城下町から海国へと続く道を馬で移動中、リュコはつまらなそうにそう言う。


「一応近道を通ってはいるんだが、最低でも2日はかかるそうだ。」


「結構かかるなー...なんか一瞬でそこに移動できたりとかしないの?」


「それができたら皆やってるだろ」


「そーだよねぇ。しょうがない、しっかり2日かけて行きますか」


馬が道を駆ける音、レイとリュコの話す声全てが心地よく聞こえ、良い天気なのも相まってじわじわと睡魔が湧き上がってくる。


「ねぇ、海ってどういうところなの?」


「その果てが見えないほどに広大で、凄く綺麗なところだ」


「へぇ、すごいなぁ...」


うつらうつらと首が揺れ始め、周りの音や声もただの雑音として脳に処理されていく。目を閉じれば、いとも容易く眠りに落ちてしまうだろう。


「あれ、眠い?大丈夫だよ、寝てても」


その言葉は、夢現ゆめうつつにいる自分の耳にはとどかず、そのまままどろみの中へと誘われていく。





「見て、すごく綺麗よ」


「あぁ、そうだな」


あれ、もう海についたの?随分と早いな。


「初めてみたわ...本当に綺麗...」


確かにすごく綺麗だ。砂浜に打ち寄せる波の音も、空を悠々と飛ぶカモメも、目一杯に広がる青い海も、全てが綺麗だ。


「この景色をお前たちに見せられてよかった」


「私も、こんな綺麗な景色が見れて嬉しいわ。まるで夢のよう」


見たこともないはずなのに、この光景をこんなにも懐かしく感じるなんて、本当に夢を見ているんじゃないかとも思う。


「あら、───もそう思うわよね」


うん、そうだね。"お母さん"

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