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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第5章 僕たちが救世主ってどういうこと?

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第2話 あなたが救世主です!

 なんのトラブルもなしに列車はイノーニへ近づいている。南下してるからもっと暑くなると思ってたけど、不思議なことに気温は途中から変わっていない。むしろ街へ近づくに連れ、少し下がってるかも。


 なんでもこの国にある氷原迷宮の環境が、地上にまで影響してるんだって。場所によって初夏から秋くらいの気温差があるみたい。だからこの国では穀物の生産が盛んだ。辺り一面麦畑みたいな場所を線路が通ってて、窓から見える景色は雄大だった。



「体も動かせないし退屈するかなって思ってたけど、全然そんなことなかったよ!」


「僕も出かける前は暇を持て余すかと思って、遊び道具とか探してたんだ。でもみんなと一緒なら必要なかったね」


「この旅で皆様の絆が、だいぶ深まりました」



 スズランが精霊たちの頭を撫でながら、にっこり微笑んでくれる。なにせ旅の間に【分配】の星が二つ溜まったし、こんな風に一つの部屋で過ごすのってすごい効果があった。これからは家にいるときも、全員ですごす時間をもっと増やそう。


 いくら親しい間柄でも、四六時中顔をつき合わせてたら、ストレスが溜まるかもしれない。でも僕たちに、そんな心配は無用だ。元の世界の話もいっぱいしてあげられたし、付き合い始めたばかりのシアともイチャイチャできてる。


 アイリスにちょっと呆れられたけどね!

 だって甘えてくるシアが可愛すぎるから、しょうがないじゃないか。



「こうやって天井の近くで寝るのもいいものね。屋敷を少し改装しようかしら」


「アイリスは本当に狭い場所が好きだな」


「それなら天蓋付きのベッドにすればいいんじゃないかな」


「それはいいアイデアね。さすが私の下僕(げぼく)だわ」



 ゴスロリツインテールお嬢様のアイリスなら、天蓋付きのベッドはとても似合いそう。レースをふんだんに使った外装に、花柄の布団一式とかは嫌がるかな。お姫様っぽくていいと思うんだけど……



「みんなー、スピードが落ちてきたよ」


「少し前に街の外縁部を通過している。そろそろ駅に到着するんだろう」



 ここは人族の国にある首都だから、僕にとっては過ごしやすかもしれない。まあお店やサービス業に就いてる人族ってかなり多いし、どの国でもあんまり変わらないかな。


 とにかくこうして気軽に別の国へ行けるのって新鮮だ。なにせ日本だと船や飛行機じゃないと、外国には行けないからね。ここは別名〝農業国〟って言われるだけあって、食材が安く買えるのも嬉しい。ニナの作ってくれる料理がどう進化するのか期待しよう。



◇◆◇



 列車を降りて大きく背伸びをする。列車のすれ違い待ちで毎日二回停車するとき、外に出て少しだけ体を動かすことはあったけど、久しぶりに地に足をつけたって感じ。



「まずは探索者ギルドへ顔を出すのだったわね」


「中級には入国を報告する義務はないが、一応推奨されているからな」



 上級探索者になると指名や緊急依頼の受理義務があるので、必ずギルドに伝えないといけないんだっけ。故意に報告しなかったりすると、ペナルティーがあるって言ってたな。地位や名声そしてお金を得てるだけあって、責任も伴うってことだろう。



「そのあとは買い物だね!」


「登山靴みたいな装備を、買っておいたほうが良いかも」


「私は浮きながら下僕に引っ張ってもらうから不要よ」



 えーずるいな、アイリス。紐とかつけて風船みたいに持ったら怒られるかな。うん、怒られる未来しか見えない、やめておいたほうが無難だ。



「スズランはボクが引っ張ってあげようか?」


「はい。疲れた時はよろしくお願いします、カメリア様」


「飛べるなんて羨ましくなんて無いからなっ」



 あっ、シアが拗ねた。エルフ族はスレンダーな体型だけあって、力や体力が無いもんなぁ。そのせいでメロンの持ってる筋力上昇の恩恵があまりない。あれって元の力に掛け算して強くなるみたいだからね。つらそうなら持久力の上がる【強壮】に星を振っておこう。



「疲れたら僕が手をつないであげるから、頑張ろうね」


「う、うむ。ダイチがついてくれれば百人力だ」


惚気(のろ)けるのは程々にして、早くギルドへ行くわよ。場所はシアしか知らないのだから、しっかり案内しなさい」



 それにしても大勇者と大賢者って、なんで山奥に住んでるんだろう。やっぱり修行の一環とか、騒音で周りへ迷惑をかけないように、とかが理由かな。


 なんといっても山ごもりといえば修行の定番。野生動物と素手で格闘してるに違いない。そしていつしか芽生える熱い友情。強敵と書いて(トモ)と呼ぶってやつだ。顔に受けた傷が原因で隻眼(せきがん)になった巨大なクマと、肩を組んでるビジュアルが浮かんでくるよ!



◇◆◇



 石造りの建造物が多いアーワイチと違い、ここはレンガと木と漆喰かな、そんな家が多い。壁も白やクリーム色、それに黒いものがあって結構カラフルだ。探索者ギルドもレンガ造りの大きな建物で、周囲では一番目立っている。


 扉を開けて中に入ると、一斉に視線が突き刺さってきた。毎度のことなんだけど、なかなか慣れない。だけどなんだろう、単に見とれてるんじゃなくて何か期待されてる?


 こちらに届く声も「あのメンバーならいける」とか「これで被害を減らせれば」とか言ってるんだけど……



「救世主の皆様、ようこそイノーニのギルド本部へ!」


「えっと、救世主ってどういうことですか?」



 カウンターから出て僕たちを迎えてくれた受付嬢に、ものすごくいい笑顔で歓迎されてるよ!? それに救世主って、一体この街で何が起きてるのさ。



「実は皆様にぜひお受けいただきたい依頼があるのです」


「あのー、僕たちこの街に来たばかりだし、初級と中級の探索者なんだけど……」


「この依頼は探索者ランクを問わず受けられます」


「ここで出される依頼は特定アイテムの回収や輝力(きりょく)の確保くらいで、そのほとんどが上級探索者への指名依頼のはずだが?」


「今回は討伐依頼なのですが、条件が非常に厳しいのです」


「その条件とやらはなんなのかしら、話してみなさい」


「それはズバリ、胸の大きさです!!」



 なにその条件!?

 それにスズランの胸を凝視しないで。女の人じゃなかったらセクハラだよ? いや、この場合男女問わずセクハラでいいんじゃないかな。そもそもスズランは僕の精霊なんだからね!



「あの、私は非戦闘員なのですが」


「それだけ大きなものをお持ちなのです、これは立派な武器ですよ。戦闘力は十分あります」


「たしかに人をダメにする破壊力はあるな」



 シアまでなにを言ってるの!?

 そういえば以前、スズランの胸を凶器とか表現してたっけ……



「それにそちらの魔人族の方、あなたも合格です!」


「ボクってスズランより小さいよ?」


「魔人族でもトップクラスのものをお持ちなのに、なにをおっしゃってるのですか」



 周りの野次馬たちもウンウンうなずいてるけど、ちょっと声が大きすぎます受付けのお姉さん。確かにアーワイチでも、カメリアを超える人に出会ったことはない。樽っぽく大きくなってる人を、何人か見かけたことあるくらいだ。



「討伐依頼って危険があるでしょ? そんなの初級の僕たちは受けられないよ」


「いえ大きな胸を触られるくらいで、未だに怪我人は出ていないので大丈夫です。特にそちらのお二人は絶対安全です」


「ほっといてくれ!」


「今の体に不満はないのだけど、そう言われるとカチンとくるわね」



 あー、もう。シアとアイリスを怒らせないでよ。あとで愚痴を聞かされたり、腹いせに血を吸われるのは僕なんだからさ。



「えっと、とにかく詳しい話を聞かせてもらえませんか? 受諾するかはそれを聞いてから決めますので」



 イノーニの街についた途端、なんでこんな事になったんだろう。まだ観光や買い物もしてないんだけど……




 なんとか依頼を受けてもらおうとグイグイ来る受付嬢を眺めながら、僕はそっとため息をついた。


資料集や後の章にも記載しますが、この受付嬢はフロアチーフです。


◇◆◇


依頼を受けることにした主人公たちに迫る影。

明日更新予定の第3話「正々堂々勝負しろ」をお楽しみに。

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