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第3話 炎の精霊イグニスと風

「ギャー!!」

俺は叫びながら逃げるチビドラゴンを首輪片手に追いかけていた。

「まてごら!おい!ちょっと!ほんとに!」


チビドラゴンを捕まえて町の居酒屋にいたシェーンにあいにいった。「原因を排除した」というと、確証もないのに金を払ってくれた。いまはその金でそこそこ広い宿の一部屋を借りて夜が開けた後だ。

俺はヘルメスから”束縛の首輪”を渡されてそれをチビドラゴンにつけようとしていた。


優雅にコーヒーを飲みながら本を嗜んでいるヘルメスの前を横切る。

こいつ、、人に任せといて、、

「まあまあゼノさん。その首輪をつけるのは今夜その子が寝た後でもいいじゃないですか。」

「それで逃げ出してもう見つかられませんってなったらどうすんだよ。」

「まさか、窓もドアも開けてないんですよ、逃げ出せるわけありません。」

パリーン。

ガラスが割れる音がした。ヘルメスと俺は同時に同じ方向をみた。


「ディープ•チル!」

ヘルメスがチビドラゴンを凍らせた。

「プギャ!?」

体が凍って羽ばたかなくなったチビドラゴンは垂直に落ちて行った。

「ここ二階だけど」

ヘルメスがこちらを見た。



急いで階段を駆け下りて宿の裏庭に行った。

チビドラゴンは頭から血を流していた。

「おい!大丈夫か?」

「ギャっ、、」

俺に抱きかかえられたときの悲鳴は先ほどとは程遠い力のない声だった。

「どうしましょう、、治癒術師のところに行きますか?」

ヘルメスが焦っているのは声色から把握した。

「治癒魔法とかないのか?」

「あるにはあります、、でも僕は使えません、、」

「治癒術師はどこにいるんだ?」

ヘルメスが頭を抱える。

「隣町までいかないと、、、」

隣町。もしかしたらそこまで行く頃にはもうチビドラゴンは、、、、

考えすぎだ。冷静になれ。


深呼吸をした。その時だった。

体が落ち着き始めるとともに、体の奥底に潜む未知のエネルギーを感じた。

みなぎるような、猛烈なエネルギー。体内のエネルギーは次第に優しい穏やかなものになる。

そして、手のひらから放出される。

手から出されたエネルギーは緑の光を発してチビドラゴンの体に触れた。

その光がチビドラゴンに触れるとチビドラゴンの傷は癒えていった。


「まさか、、!」

口をぽかんと開くヘルメス。

「なぜあなたが回復魔法を!?」




「ごめんねぇ、、」

おれに抱えられたドラゴンの前で膝をついて謝るヘルメス。

部屋に戻ったあとでもチビドラゴンは変わらずむすっとしていた。


「なぁ、ヘルメス。俺は回復魔法を使えるのか?」

「あぁ、あれですか。あれはおそらく自然に出たやつですね。よくあるんですよ。生まれたての赤子が自分を守るために本能で魔法を出すことが。」

そうか。俺は生まれたての赤児か。

「あなたの体は成人男性なので魔力量はそれなりにあります。しかしその体は産まれて数日ですし、その体は魔法にも慣れていません。だから勝手に出てしまうんです。」

そうか、、別に特別ってことでもないのか。

俺は手の中のチビドラゴンを撫でた。

「ところでその子に名前をつけませんか。」

「名前か。ファイアードラゴンとかどうだ?」

「舐めてるんですか?」

ちょっとふざけただけなのにガチ目に否定された。

「イグニスとかどうですか!?」

少し興奮気味なヘルメスにおされつつ俺はイグニスを見つめた。



数日がたった。

「まて。」

俺はイグニスの前に魚をおいた。

イグニスは「待て」と言ったにもかかわらず魚を食べ始めた。

「結構懐いてますね」

頰に引っ掻き傷がついているヘルメスが言った。

「そうだな。こんなすぐ懐くもんなんだな。」

「まああなたの魂は特殊ですからね。」

嬉しいじゃねぇかよ。

俺は飯を食べるイグニスの頭を撫でた。


「そういえば先ほど二人が散歩に行っている最中シェーンさんがきました。新しい仕事を持ってきてくれたみたいです」

「内容は?」

「荷物の運搬です。お昼頃待ち広場に集合と言ってました。」

怪しいやつじゃないだろうな。




「お、きたな」

広場の噴水の前で腕を組み待ち構えていたシェーンと合流した。

「きてやったぞ」

「ではゼノ。俺と勝負しろ。」

サ○ヤ人か。

「はぁ?」

「そういえばお前の実力を見ていなかった。ほら、軽くでいいから」

そんな感じなんだ。

シェーンはファイティングポーズをとった。

「いいじゃないですか。僕はボコボコにしましたけどこの人かなり強いですよ。イグニスを試すいい機会です。」

「それもそうだな」

俺は腕を組んだ。

「イグニス。来い」

俺の肩の上に小さな炎の渦が生まれ、そこからイグニスが現れた。

「なっ、精霊使いだったのか。しかし大きさから見て下位の精霊だな?」

シェーンは顔をしかめた。

「俺は下位の精霊に負けるほど弱くはないぞ」

「来いよ」


俺がいうとシェーンは突進してきた。

「いけ!イグニス!かえんほうしゃ!」

イグニスは口から炎の息を吐いた。

「遅い!」

シェーンに間合いに入られていた。

シェーンの拳が飛んでくる。

拳を避けるとシェーンはよろけた。

「パンチはちゃんとすぐ引けよ!」

その後ろに蹴りを入れる。しかしびくともしない。シェーンはこちらを振り向いた。

「イグニス!おい!イグニス!かえんほうしゃ!」

イグニスがさらに強い炎の息を吐くとシェーンは両手でガードを作って後ろに引いた。

その瞬間、シェーンが急に吹き飛ばされ、壁にぶつかった。

「隙あり!」

シェーンの腹に拳を入れる。

「がっ!!」

シェーンが崩れた。

「降参だ。」



ヘルメスが駆け寄ってきた。

「シェーンさん。大丈夫ですか?」

「あぁ、少し擦りむいたかな。」

シェーンは肩の埃を払いながら言った。

「しっかし強いなぁ。最後あんな技があるとはな。」

「技っていうとあの吹き飛んだやつですか?」

シェーンは最後、なぜか急に吹き飛んで壁にぶつかった。

「ものすごい風に体が吹き飛ばされたぞ。」

俺の方をみる二人。

実のところ俺もわからない。ただ考えられるのはイグニスが何かをしたと言うことだろう。こいつは炎の精霊だから、、、イグニス?炎の爆圧か?そ、そうだよな!それかもしくはイグニスが空気を温めて気圧が下がったんだ!だから風が生じてジェーンが吹っ飛んだ!

俺はシェーンが叩きつけられた壁を見た。ずっと同じ、綺麗な石造りの壁を。

「ん、、、」

冷たい風が俺をつついた。

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