大魔女と吹っ掛け
<食後・・・>
「─── まぁ、やっちまったもんは しょうがない。
ここはアタシの可愛い教え子に免じて許してやろうじゃないか。」
「なんだ話が分かるじゃないですか、ババア。」
【老猿の大魔女】と死合っていた関係で、結局【歩く災害】との賭け ─── 私より仕留めた亜人の数が多かったら大魔女に頭を下げるのを代わってやるという話 ─── に負けてしまったので、約束を果たすべく大魔女に謝罪の話を切り出した私だったが、意外にもクソバ・・・大魔女は あっけなく手勢の亜人を殺しまくった件について許してくれた。
てっきり、何かまたタチが悪いことを言い出すかと思っていたのだが・・・───
「それはそれとして、この傷に関しては どうしてくれるんだい?」
大魔女は そういって、これ見よがしに私が先の死合の際に剣槍を突き刺した片腕を掲げた。
そこには わざとらしく包帯が巻かれており、傷口からは墨のようにドス黒い血が滲み出している。
・・・どうやら案の定、ゴネる気 満々だったようだ。
「傷くらい自分で何とかして下さいよ、子供じゃないんですから・・・。」
「アタシゃ老人だよ?
少しくらい労わってくれても良いんじゃないのかい??」
大魔女は老猿の仮面をつけているにも関わらず、器用に身振り手振りで呆れた表情を再現してみせた。
正直、メチャクチャ面倒臭い。
「はぁ・・・分かりましたよ。
手持ちの軟膏で良いですか?」
「バカだね、別に軟膏くらい腐るほど持っているよ。
アタシを誰だと思っているんだい?」
「あ”?」
私が親切心で背嚢から傷口に効く軟膏を取り出そうとすると、そんな嘲りの言葉が返ってきた。
提供された食事で鎮まった怒りが再燃する。
「・・・じゃあ水薬ですか? [1]
あれは作るのに時間が掛かりますし、外部から買うにしてもバカみたいに高いので出来れば貴方如きに渡したくはないのですが・・・。」
「やかましいねぇ。
アタシゃ大魔女だよ?
水薬くらい売ってやれるほど持っているさ。
同じようなことを何度も言わせるんじゃないよ。」
「えぇ・・・じゃあ何が欲しいんですか。」
面倒臭くなった私は、取り敢えず何が欲しいのか聞いてみることにした。
別に険悪になりたいワケでもないので、多少の不利益なら被る覚悟はある。
「そうだねぇ・・・三千ゴルド(金貨3,000枚、日本円にして約30億くらいの感覚)でどうだい?」
「え? 死にたい??」
提示された金額に、私は思わず殺気を滲ませた。
[1] 水薬:
ファンタジーで お馴染みの万能薬。この世界でも その万能性は健在であり、効果こそ種類ごとに分かれているが物によっては身体の欠損すらも回復させることが出来る。
但し精製において要求される技術ないし設備の水準は高く、市販される水薬の多くは魚油か薬草を煮詰めただけの紛い物に過ぎない。




