亜人わんこそば:その2
<数日後・・・>
「─── また出たよ、アスカ・・・。」
「うわっ、面倒くさ・・・。」
夜遅くに口喧嘩をして【動く要塞】に叱られた私と【歩く災害】は、罰として一緒に旅団の進行ルートを確認する先遣隊を務めていた。
そうして馬車隊が この先通る山岳地の下見をしていたのだが、そこで駿猿とはまた別の亜人を相手にすることになってしまった。
思わず口も荒くなる。
私は短弓を取り出すと、そのまま矢筒から矢を取り出して射る。
風切り音と共に、矢は一体の白い影に突き刺さった。
「SKEK!!」
それは身長100cm(5歳児ほど)の小さな亜人だった。
シファカという猿に似た その亜人は跳猿という名前で、その名の通り異常な跳躍力を持つ。
その脚力を活かした登攀は見事で ─── そしてウザったい。
どのくらいウザったいかというと、死にゲーとかで自身のキャラクターを待ち伏せしているザコくらいウザい。
想像してみて欲しい。
人間の子供程の体格とはいえ、こちらを殺傷する能力を十分に持った害獣が その跳躍力を活かした立体機動で死角から迫って来るのだ。
─── 多分、コイツがゲームに登場したらプレイヤーの死因上位を狙えるポテンシャルがあると思う。
「まるでアスカが沢山いるようだねぇ。」
「は?
誰がプレイヤーの死因ランキング上位のザコモンスターですか?」
「どうしてキレているんだい?
私は至極真っ当な意見を言っているのだよ?」
「カス。」
言い過ぎじゃないかと怒り出すルインを放って、私は背負っていた鞘から得物を取り出した。
それは大きめの穂先を持つ、途中で折れてしまったような中途半端な柄の長さをした槍だった。
─── 前世でいう剣槍に近いそれ。
本来は大楯を片手に持つことを前提に作られた特化武器なのでリーチが中途半端なのだが、私にとってはその中途半端なリーチと、中途半端なリーチゆえの軽量さが丁度良かった。
「さて・・・やりますかヴェイル。」
私は跨っているヴェイルの首筋を撫でた。
ここまで私を運んできた青毛の獣の鼻先から、ヴルルッと熱い息が溢れる。
「・・・ルイン、良い案があります。
先日の話ですが、もし貴方が私以上に跳猿共を片付けることが出来たら考えてあげましょう。」
「・・・え、本当 ───」
「─── はい、よ~いスタート。」
先日の件・・・ルインの恩師にあたる大魔女に頭を下げる話を餌にしつつ、しかし全く考える気がない私はルインの返答を待たずしてヴェイルと共に駆け出した。




