【Side:ルイン】大魔女の刻印
<亜人掃討後・・・>
アスカに暫く絶対服従することになった【拳獣】が、更に一部始終を聞いた姉貴分の【イカレ修道女】に説教を受けている頃。
一種の同好の士である【墓掘り学士】を連れた【歩く災害】は、ウキウキで駿猿の死骸の山を検分していた。
「どうだいグレイブ。
これだけあれば駿猿の生態について少しは分かるんじゃないかな?」
「本当は生きている駿猿を観察したいんだけどね。」
そう言いながらも、グレイブは手持ちの道具を広げて丁寧に駿猿の死骸を記録し始める。
眼球、歯・・・指紋の形状から爪の発達具合まで嘗め回すようにスケッチへと書き込んだ。
「・・・まぁ、死んでいるなら死んでいるで出来ることはあるが。」
そうして外側の記録を終えると、グレイブは『内側』を記録する為の道具を取り出す。
それはアスカの言うところの『手術刃』という道具であり、グレイブが生物標本の解剖用に持ち歩いている物であった。
「君もやるかい?」
「勿論だとも。」
グレイブと多少用途は違うものの、同じように手術刃を持っているルインは頷く。
そうしてグレイブが検分している駿猿の死骸とは別のモノの中から特に状態が良さそうなものを選んで、その近くに道具類を広げた。
「こういう機会にやっておかないと、直ぐに腕が鈍ってしまうからね。」
ルインはグレイブと同じように、手術刃の先端を見易くする為に切り開く箇所の獣毛を剃り始める。
───── ショリッ・・・
───── ショリッ・・・
───── ピタッ
その過程で、ルインは見覚えのある印を駿猿の死骸に見つけてしまった。
「うわっ・・・『大魔女の刻印』じゃないか・・・。」
それは親指が左右対称に2本生えている6本指の掌を裂くようにして巨大な目が覗いているようなシンボルだった。
普段は人を振り回す側のルインが、とても面倒くさそうに顔を顰める。
「・・・どうした?
何か良くないものでも見つけたのか?」
ルインの珍しい表情に気が付いたグレイブが尋ねた。
ルインは それには答えず、暫く何か葛藤するかのように うんうん唸っていたが、やがて解決したのか獣毛を剃る手を再び動かし始めた。
「・・・いや、まぁ どうにかなるだろう・・・多分。
あ~・・・込み入った話になるから、この話はアスカ達と合流してからにしようじゃないか。」
「? 君が そう言うなら・・・。」
ルインの知性に それなりの信頼を置いているグレイブは、取り敢えず深く追求する事は止めた。
再び手術刃を動かし、駿猿の死骸の腑分けを進めていく。 [1]
「・・・。」
グレイブが そうして亜人に対する解剖学的な知見を深める中、ルインは 心ここにあらずといった様子で何か深く考え込んでいた。
[1] 腑分け:
死体を切り開いて内臓を取り出し、観察・調査すること。




