拳獣について
─── 【拳獣】。
北の針葉樹林地帯・・・一般的に蛮地と呼ばれるような場所から やってきた彼を旅団に紹介してきたのは他でもない、姉貴分にあたる【イカレ修道女】だった。
何でも、喧嘩明けで怪我に苦しんでいるルガーを介抱してやったら懐かれたのだという。
当時 旅団長だった【傷だらけの男】はルガーの実力を認め、当時 蛮地を出たばかりの無名だった彼を旅団に受け入れた。
スカーズの人を見る目は私も信じるところで、あの人が実力があると認めたということは間違いなく逸材なのだろう。
私もルガーの戦闘センスとでもいうべき野生の勘は認めるところだ。
・・・認めるところなのだが。
「今からでも遅くありません。
これ以上 恥を晒す前に除名処分にしてやります。」
「いや・・・別にいつもの事じゃないですか。」
「・・・いつものことだから問題なのですよ。」
小憎たらしい程に穏やかな顔で安眠するルガーの面倒を見てやりながら、シスターが愚痴る。
取り敢えず除名処分だけは止めさせることにした。
「どうせ この愚か者のことです。
『貴様らを殲滅する事など目を瞑ってでも容易い』とか何とか言って、本当に両目を瞑って亜人共を相手にしたのでしょう。」
「流石に そこまで馬鹿なワケ・・・───」
「・・・。(フイッ)」
無難に亜人共を追い払った後にルガーを回収してきたらしい【墓掘り学士】が、気まずそうに目を逸らす。
・・・どうやら一言一句 当たってるらしい。
流石 姉貴分といったところだろうか。
私は思わず両手で顔を覆った。
─── そう、ルガーは重度のバカであった。
系統的には某7つの宝玉を集める冒険を始まりとした物語に出てくる、主人公にナメプをして最終的に負けるボス系のバカさに近い。
今回の亜人の件もそうだが、ルガーの戦闘技術を考えるなら どう考えても負けないだろうというところで器用に負けてくる。
その為、ルガーの戦闘後の瀕死率は何と驚異の50パーセント超。
ゲーム的にいうなら最弱のスライム相手でも半々以上の確率で負ける。
ポテンシャル・・・ポテンシャルだけなら旅団の戦闘員でもトップクラスなんだ。
ただ、少しでも有利だと判断すると途端にナメプし始めるだけで・・・。
「取り敢えず、起きたら一発殴ります。」
「「・・・。」」
流石にフォローし切れず、私とグレイブは何も言えなかった。




