閑話:ゴブリンについて
【※猥談注意】
ゴブリンについて語られる最も古い伝承は、丁度 中世ヨーロッパのものとされる。
当時はまだ悪戯好きの悪意ある妖精といった感じで、怪物というよりも妖怪寄りの存在であった。
しかし そこから18~19世紀になると、某指輪物語などの文学作品に再び登場するようになり、現代に近い邪悪で小柄な怪物というイメージが定着した。
更に日本に その概念が渡ってきたことで、1990代後半頃からエロ同人誌やゲームにゴブリンの姿が登場するようになる。
これこそが、今日の日本のゴブリンのイメージの原型であると思われる。
そもそもの「ゴブリン」の語源がギリシャ語の「コバロス」─── ならず者から来ている可能性が高いことから考えると、物凄い発想の飛躍と言えるだろう。
つまり何が言いたいのかというと ───
「─── つまり、ゴブリンっていうのはエロの妖精なんですよ。」
「ほほぅ・・・?」
「・・・何を言っているのですか、貴方は。」
件の古代遺跡に対する神学的見地からの討論会を早々に終えてしまった私と【イカレ修道女】は、どこからともなくやってきた【歩く災害】を交えて3人でゴブリン談義を おっぱじめていた。
「いや、シスター。
これは興味深い話だよ?
創作上の生物とはいえ、人類の母体を使って繁殖するという生態は一種の合理性を孕んでいるからね。」
「そうですよ、シスター。
可愛い女の子が醜悪な怪物に良いようにされる様を想像して興奮したりしないんですか?」
「・・・本当に何の話をしているのですか。 あなた方ともあろうものが。」
シスターが頭痛を堪えるように こめかみを押さえる。
育ちの良いシスターには ちょっと刺激が強すぎる話だったか。
冷めた目をしたシスターのことを放置して、ルインと二人でゴブリンの話で盛り上がる。
概ね思いつく限りの下ネタを口にした後、私は(酔ったことは無いが)酔いが覚めるようにして溜息をついた。
「まぁ・・・猿と人の交配実験の例もあるように、亜人と人間の交配には染色体構造の問題があるので現実的ではないのは分かっているのですがね・・・。」
「そうかい?
割と どうとでもなる問題だと思うが。」
「・・・マジで?」
つい言葉使いが荒くなる。
それくらい興味深い話だった。
「混ぜるだけなら合成獣という前例もあるし、アスカの話を聞く限り別に母体を人類に依存しているというだけで『混ざる』必要はないんだろう? [1]
それならば君の言う染色体というものに構造上の違いがあっても問題は無いんじゃないかい?」
流石ファンタジーな異世界。
私が元いた科学文明で出来ないことを平然とやってのける。
・・・まぁ、そういうとこに憧れてたから天使に頼み込んで この世界に転生してきたワケだが。
「う~ん・・・ゴブリンの生殖形態を細胞に自己を複製させるウイルスのようなものと捉えれば その理論は通るかもしれませんが ───」
「・・・その話、もっと詳しく頼めるかな?」
「いい加減 中座しても良いですか?」
心底 聞きたくなさそうにしているシスターを置いて、私とルインのゴブリンを介した知識交流は続いた。
[1] 合成獣:
邪悪な錬金術によって生み出すことが出来る怪物。
既存生物のパーツをツギハギしたかのような特徴を有し、また通常の生物と比較して兵器として有用であることが多い。
ただ人によって造られた歪な生命であるが故か、自然界に放たれて種として定着したキメラの例は極めて少なく、概ね人の手による飼育環境でしか生き残ることは出来ないとされている。
自然界に放たれて種として定着した数少ないキメラとしてカモノハシが冒険者ギルドに記録されているが、いつ頃から自然界に放たれたか不明な為、元から自然界にいた そういう不思議生物なのではないかという意見もある。




