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古代遺跡について

「まぁ、そんなことは良いんですよ。

それよりもっと建設的な話をしましょう?」


「・・・そうかもしれないね。」


ある程度納得したのか、先程まで罪を懺悔する敬虔な信徒のようだった【墓掘り学士(グレイブ・ディガー)】は、打って変わって子供のように目を輝かせて荷物の中からスケッチブックを取り出した。

そして該当のページを開くと、机の上に問題のスケッチを広げる。


「─── これが前回 私がスケッチした、件の古代遺跡の図だよ。」


その異様な熱意が伝わるような小石一つに至るまで正確に模写された精密画には、確かに壮大な古代遺跡の姿が浮かび上がっていた。

・・・色さえ付ければ写真と遜色ないのではないだろうか。


「特に注目して欲しいのはココだね。

この建築様式は私が思うに古代帝国(ヴェスティア)時代のものだ。」


「古代帝国というと700年くらい前に滅びたっていう、あの?」


「その通り。」


古代帝国は私の生まれた文明圏の前身になる巨大な帝国だ。

平原人(オルディア)の築いた国の中で最も偉大と言われたその国が何故(なぜ) 滅んでしまったのか、今や誰も知らない。


「だけどね、アスカ。

今まで古代帝国の遺産発見の報告は平原人の文明圏の西に集中していた。

私が知る限り東に古代帝国の遺跡があったなんて話は聞かない。

・・・これが何を意味するか分かるかな?」


「・・・古代帝国に関する新事実が判明する可能性がある?」


「その通りだよ!」


グレイブは机を強く叩いて立ち上がった。

その表情には明らかに興奮の色がある。


「古代帝国が滅亡した原因が良く分かっていない主な要因として、当時の版図、その東側にあたる地帯の遺産が(ことごと)く消失していることが挙げられるんだ!

地形の異常な変形や地層に刻まれた急激な環境の変化から何か大きな(いく)さが東側で起きたことは分かっていたのだけど、もしかすると今回の調査でより詳しい当時の事情が判明するかも知れない!」


・・・凄い熱量で語って貰っているが、多分 地形と地質の変化に着目して過去に大きな戦さがあったことを既成事実扱いしているのはウチの旅団くらいではないだろうか。

個人で活動をしていた頃からグレイブの中では既に分かっていた事だから、勝手に古い情報フォルダに分類されている気がする。


正直、グレイブにこの件に関して論文を書かせて、私が冒険者ギルドメンバーとして内容の正確さを保証した上で学者ギルドに提出すれば かなりの論争を巻き起こせると思う。 [1]

まぁ、どうせ今の学者ギルドにグレイブの理論を理解出来るほどの脳があるとも思えないのでやらないが。


なんたって未だに脳みそを鼻水を作る器官だと思ってる連中の巣窟だし。

[1] 学者ギルド:

 様々な学問を取り扱う、専門家達の集まり。

ギルドに金銭を支払うことで職員から教育を受けることが出来たり、役員ギルドメンバーの講義を受けることが出来たりする。

 ただ、アスカだけに留まらず冒険者の間での学者ギルドの評価は決して良いものではなく、むしろ大よそ愚者の集まりとして認識されていることが多い。

その事例の一つとして有名な逸話があり、それこそが学者ギルドの公式文書では脳を鼻水を作る器官だと紹介しているのに対し、冒険者の共通認識として脳は動物の思考を司る器官(つまり弱点)として認識されているというもの。

 このような現実に対する著しい理論の乖離がギルド内のコミュニティで認められる為、アスカも唸るようなレベルの高い学者は大体 独自のコミュニティを形成していることが多い。

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