調査会議
─── 魔境。
それは人間(主に平原人)が足を踏み入れるのことすら叶わないような過酷な環境の地を指す。
しかし その反面、未知の生物や物質などが豊富にあり、人々を惹き付けて止まない魔性の地でもある。
その中でも最も危険な、未だ人が足を踏み入れたという記録すらない未踏破の魔境に、私は冒険者として初めて挑もうとしていた。 [1]
「─── と、いうわけで。
前任の【傷だらけの男】から引き継いだ このプロジェクトを進めるにあたり、旅団会議を開催しようと思います。
さ、拍手して下さい。」
「別に構わないが・・・ここには3人しかいないが大丈夫かい?」
やる気のない拍手をしながら【歩く災害】が尋ねてくる。
普段は倫理観の欠片もないクセに、こういう時だけマトモになるんだから・・・。
「いいんですよ、他の議員は外回りか休憩中ですし。 [2]
それに あなた方がGOサインを出した調査計画にケチつけられる勇気がある奴なんて、私くらいなものです。」
「会議とは そういったものだったかな・・・。」
「うるさいですね。
そういうことを言うと民主主義に則って貴方の研究費を削ってやっても良いんですよ?
私が擁護しているだけで、貴方にペナルティを求める声は思いの外 多いのですから。」 [3]
「・・・うむ、人類史上 最も効率的な支配形態は独裁だよ。
いや~、有能なる暴君アスカには私も頭が上がらないね。」
貶しているのか世辞を言っているのか良く分からない(恐らく後者だと思われる)ルインの言葉を聞き流しつつ、私は会議(議長合わせて議員3人)を進めることにした。
「─── では、早速いいかな?」
そう言って、私達より少し上くらいの年に見える女性が手を挙げた。
ルインの格好を典型的な悪の魔術師とするなら、こちらは頼れる正義の学者といった様相で大人びた雰囲気をしている。
片方の眼窩に嵌め込まれたモノクルがキラリと光った。
「何ですか、【墓掘り学士】?」
ただ通り名に関しては少々難があり、地下墓や遺跡に好き好んで足を踏み入れる事から そんな蔑称染みた名前で呼ばれている。
しかし知識は本物なので、知る人からすれば一周回って敬称でもあった。
そして私もまた、敬意を込めて この通り名を使う一人だ。
「私欲だが・・・私は前回 発見された この古代遺跡の調査を行いたい。
・・・どうだろうか?」
グレイブは古ぼけた調査地図の一点を指差しながら、玩具をねだる子供のような上目遣いで私達を見回した。
[1] 冒険者として初めて未踏破魔境調査:
見習い時代に団員として同行していないとは言ってない。
あくまで冒険者ギルドに登録された冒険者としての初めてということ。
[2] 他の議員:
【動く要塞】や【イカレ修道女】などの事務員 or 学者を兼ねているメンバーのこと。
参加してもしょうがないような脳筋なメンバーは最初から数に入れていない。
[3] 【歩く災害】にペナルティを求める声:
主に直接的な被害に遭っているシスターが声高に主張している。




