一般的な聖剣伝説
<聖都のとある教会>
─── 聞きなさい、敬虔なる者たちよ。
主の御前に集いし者たちよ。
我らが生きるこの世界は、かつて深き混沌に覆われていた。
大地は裂け、空は荒れ狂い、人はただ恐れの中にあった。
救いはなかった。
導きもまた、なかった。
─── だが、その時である。
天より、主の御使いが降り立たれた。
御使いは人の嘆きを聞き、祈りを受け取り、
そして一つの御業をこの地に遺された。
それこそが ─── 聖剣である。
覚えなさい。
聖剣は、ただの剣にあらず。
それは主の意志を宿し、
正しき者のみを選ぶ、選定の証である。
剣は語る。
声なき声をもって、こう告げる。
「正しき者よ、我を取り、世界を救え」と。
やがて、一人の者が現れた。
名もなき者。
血筋によらず、力によらず、ただ志によって立ち上がった者。
彼は試練の地へと赴いた。
炎の試練を越え、
水の試練を越え、
そして己が心を試す、最後の試練を越えた。
そのときである。
聖剣は彼を主と認め、光を放った。
見よ、これこそ選ばれし者。
後に勇者と呼ばれる者である。
勇者は剣を取り、戦った。
魔を祓い、
邪を断ち、
世界に災いをもたらすものを打ち砕いた。
その剣は、ただの鉄ではない。
主の裁き、そのものであった。
そして戦いの果て、世界は救われた。
空は静まり、
大地は癒え、
人は再び、安らぎを得たのである。
これすなわち、主の御業なり。
だが覚えておきなさい。
勇者は栄光に留まらなかった。
彼は聖剣と共に去り、
その行方を知る者はいない。
なぜならば――
主の御業は、人の誇りのためにあるのではないからだ。
そして今もなお、聖剣は存在する。
聖なる都において守られ、
その時を待ち続けている。
再び世界に災いが満ちる時、
再び人が試される時、
剣はまた、選ぶであろう。
─── ゆえに祈りなさい。
正しき心を保ちなさい。
その時が来たならば、
選ばれる者となるために。
主の御光が、常に汝らと共にあらんことを。
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「─── どうです、アスカ。
これこそが私の知る、聖剣にまつわる伝説ですよ?」
【イカレ修道女】が司祭の説教を聞いてから、得意げにこちらへと目線を投げてくる。
その目は完全に「ホラ、私の方が正しかったでしょ?」とでも言いたげだ。
「・・・私の知っているものとは別ですね。
きっと、お上品な方々向けに改変されたものなのでしょう。
『仕事』が終わったら、貧民街の教会へと一緒に赴きませんか?
きっと、私の知っている聖剣の伝説を語ってくれるはずです。」
「えぇ、いいでしょう。
貴方の顔が私への悔恨に歪むのが、今から楽しみでなりませんよ。」
・・・スラムに足を踏み入れる嫌悪感よりも、自分の正しさを証明する快感の方が優先度上なのか。
相変わらず性格悪いな、コイツ。
・司祭:
地域の教会(小教区)で日常的な礼拝と信徒の世話を担う聖職者。
・説教:
礼拝で聖書朗読の後に行われる公式な解説・教えの語りであり、聖書の意味を信徒の生活に結びつけるための説話。




