カス爆発
私は手近な店で茶菓子を購入すると、それを片手に都市の郊外にある高級宿屋に向かった。
隣を歩く【イカレ修道女】が不満そうな顔で文句を垂れる。
「あんな者に手土産など必要ないと思いますが?」
「カスはカスでも面倒臭いカスと機嫌の良いカスなら、後者の方が良いでしょう?」
そんなことを言いながら歩いていると、やがて例のカスが泊っている宿屋が見えてきた。
「お、見えてきましたね。
今のところ無事そうですが・・・そういえば貴方も あそこに泊ってるんでしたっけ?」
「えぇ、まぁ・・・そうですが。」
─── その時、宿屋の宿泊室あたりが爆発した。
「・・・。」
「わぁ、良かった。
これで貴方の部屋も同時に訪ねることが出来そうです。」
記憶が確かなら、確かシスターは何かあったとき用に隣の部屋を取っていたはずだ。
そして、今の爆発で部屋を仕切っていた壁が壊れた。
・・・あ~、先んじて宿屋に弁償代を支払っておいて良かった。
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<宿屋の中 宿泊室の前>
「お~い、愛しのアスカちゃんが来ましたよ。
さっさと開けやがれ下さい。」
どういうワケか奇跡的に残っていた黒焦げの扉をノックする。
正直、直ぐ横の壁の穴を通って入ってやってもいいが、この中の住人はマナーに煩いのである。
『─── 入りたまえ。』
中からくぐもった声が聞こえてくる。
私とシスターは隣に空いた壁の大穴を見てから顔を見合わせた。
・・・こんな穴が開いているのに部屋の中で音が反響するか?
疑問に思いつつも、私は既に蝶番の壊れた扉を蹴破って部屋の中に招かれるまま入った。
すると、足元に見覚えのある尖り帽子が落ちていた。
拾い上げて、軽く煤を払う。
『よく来たね、親愛なる我が友よ。
・・・それはそれとして、私をここから引っ張り出してくれないかい?』
声のする方を見れば、そこには頭から瓦礫に埋もれている人間が倒れていた。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
<数分後>
「いや~、助かったよ。
少々不安定な物質を使った調合を試していたのだが、手順を横着して爆発させてしまってね。」
瓦礫の下から助け出した後、目の前の少女はそう言って悪びれる様子もなく笑った。
魔女帽を被った、いかにも悪の魔術師といった風体の彼女こそ、私が力を借りようとしているカス・・・【歩く災害】である。
・魔女帽:
鍔の広い尖り帽子の俗称。
・魔術師:
理屈で魔法紛いの現象を起こす、或いは その研究を行っている人。
凡そ『博士』や『教授』と同じようなニュアンスで使われることが多い。




