王太子視点1
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王太子は微妙にポエマーです。
「明日は不安だけど、みんなが一緒だからモモ、がんばります。おやすみなさい。……殿下」
「ああ、君のことは私が守るから安心して休め。おやすみ。……モモ」
ピンク色の大きな瞳が不安気に揺れている。柔らかな頬に触れると、その瞳は僅かに潤み花のように微笑んだ。
私は抱きしめたい衝動を抑えながら、彼女の為に用意した王太子宮の客間の扉を閉めた。
「皆、明日はモモの為にもよろしく頼む」
背後に控えている者達に声を掛けると皆神妙な面持ちで頷いた。
宰相子息オスヴィン、騎士団長子息コラド、神官長子息ソル、公爵子息であり婚約者の弟のトルキル。
彼らは王立学園の学友であり側近候補であり、私とモモの真実の愛の理解者であり協力者だ。
明日の卒業式の後、将来の王国を担う貴族の子女達の前で私とモモの真実の愛を知らしめ、婚約者の非道な行いを詳らかにし婚約破棄を叩きつけてやるつもりだ。
今夜はそれに備えて皆を王太子宮に招いている。学生最後の夜を祝い、明日への英気を養う為だ。
モモ……。男爵令嬢である彼女との出会いは運命であった。学園にいる有象無象の中で彼女だけは特別だった。
軽やかに跳ねる綿菓子の様なピンク色の髪、表情豊かな輝く宝石の様なピンク色の瞳。春を告げる花の妖精の様な触れれば易く手折れてしまえそうな華奢な体。
穢れを知らない彼女を守り抜くことが王太子たる私の使命だと確信した。私の力は彼女を幸せにする為にあるのだ。
私の寵愛を受ける彼女のことを身の程知らずと誹る者もいる。彼女もそれを理解していて他者の目があるときは私を『殿下』と呼ぶのだ。ふたりの時だけは恥じらいながら私の名を呼ぶ。……先程、モモは私の名を呼びたかったのだろう。彼女のそんな慎ましさが愛しい。叶うなら今日の最後に彼女の声で私の名を呼んでほしかった……。
王太子宮の回廊から夜空を見上げる。夜空に煌めく星々。明日の私達を祝福しているかのようだ。
「殿下、彼処にいるのは……」
背後を歩くコラドが警戒を含んだ声を出した。騎士らしい鋭い眼差しを本宮に向けている。
視線を辿り目を凝らすと薄暗い城内を歩く人影が見えた。遠くからでもわかる自己主張の強い金色の髪。間違いなく婚約者である公爵令嬢だ。
「あいつはこんな夜更けに何処に行くつもりだ?」
独り言ちると側近たちも気になるようだ。次々と言葉を続けてくる。
「怪しいですね。確かめますか?」
「上手くすれば明日あの者を跪かせる新たな情報がつかめるかも知れません」
「……庭園に出るようです。後を追いましょう」
私達は急いで階段を駆け下り、灯りの落とされた庭園に出た。暗がりに噴水の音が聞こえる。
「殿下。彼処です」
コラドが声を潜めて言った。騎士を目指す者は目が良いようだ。見れば庭園の端を歩く婚約者の姿があった。後には銀髪の双子のメイドと護衛。3人は真っ直ぐに『王家の森』に向かっていく。
「まさか王家の森に行くつもりか?」
「何の為に?真っ暗ですよ」
「ますます怪しい。行きましょう。見失ってしまいます」
「ああ」
側近達を伴い、私は恐れることなく森に入っていった。
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