公爵令嬢視点2
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「色々ピンクな男爵令嬢」
後を歩くメイドのオトの呟きに思わず苦笑する。
三年前、婚約者である王太子は王立学園で出会った男爵令嬢との恋に脇目も振らずダイブした。
相手はピンクでふわふわで瞳うるるんな小動物系女子だ。
ピンクな男爵令嬢は初対面で無礼にも公爵令嬢である私を指差し、「あ、悪役令嬢はっけーん」と宣った。
さらに困惑する私の顔を覗き込んで、「ふんふん、転生者ではなさそうね。キレイだけどざんねーん。幸せになるのはあたし。あなたは断罪おつよ」とうら若き女の子が見せてはいけない下卑た顔で笑った。
結局王太子はああいうのに騙される程度の男なのだ。そう思えば不思議と優しい気持ちになる。
「ふふ。凄いわね。恋ってステキね」
「……本当にそう思ってます?」
「どうかしら?うーん……。目立ちたくはないからできれば色恋劇に巻き込まないで欲しいとは思うわね」
「ですよね。阿呆過ぎますよね。何なんですか?あの男爵令嬢。ピンクの髪にでっかいピンクのリボン着けて、偶に近づいてきたかと思えば床に転がって『ひどいひどい』って喚いて帰ってく。砂遊び好きな犬かなんかですか?背中に蚤でも飼ってるんですか?」
オトがふんふんと鼻息を荒くする。ピンクちゃんより断然かわいい。
「私は『悪役令嬢』らしいわよ?」
「は?!悪役はむしろ嬉々として不貞するあちらの方では?!」
オトが思わず声を荒らげるとまた木々の揺れる音がする。動物を驚かせてしまったかしら。
前を見たままやり取りを聞いていたリツが首を傾げる。銀の髪が僅かな明かりにきらめいた。
「それにしても、自分の不貞を大々的にアピールするなんて、王太子辞めるつもりなんすかね」
バサバサと大きな鳥の飛び立つ音がした。内心びっくりしたけどリツは気にする様子もなく続ける。
「あの男爵令嬢にそれほどの魅力があるとは思えないんすが……」
「あるのよ。『真実の愛』のお相手だもの」
「なんの冗談すか。側近候補達にもベタベタ引っ付いて愛を囁いているのをよく見るっすけど」
リツも学園で絡まれたことあったものね。平民だとわかると興味なくなったみたいだけど。ピンクちゃんは高位のイケメンが大好物なのだ。
王太子の気が変わるといけないから放っておいたけど。
「真実の愛と、……『友愛』?」
「そんな訳ないっすよ。先週、我慢しきれないのか空き教室の扉が閉じきる前に宰相子息と絡み合ってましたよ」
「あら、情熱的ね」
「色々緩すぎ」
オトの不機嫌そうな呟きが背後からする。思わず吹き出しそうになっているとリツがまた首を傾げた。
「気づいて無さそうな王太子は兎も角、令嬢を共有してるの気分いいんすかね?」
「理解はできないけど、きっといいのよ。『真実の愛』は偉大なのよ」
「お嬢、興味ないでしょ」
「ふふふ」
だって出会った時から一度も名前も呼ぶこともなく罵ってくる男になんて興味を持てるわけない。寧ろ頑張ってくれた自称ヒロインのピンクちゃんに感謝だわ。
私が普通の子供だったら王太子からの暴言で少なからず心に傷を負っていたと思う。偶々私に前世の記憶があったから子供の戯言と流すことができたけど、それでも加減を知らない子供のパワハラは正直言ってきついこともあった。もう過去だけど。
私にはそれよりも重要なことがあるのだ。
「そんなことより、やっと女神様との約束が果たせるわ」
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