公爵令嬢視点1
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王城の窓から夜空を見上げる。一日降り続いた雨は数刻前に上がり、澄んだ漆黒の空に満天の星が瞬いている。前世ではプラネタリウムでしか見られなかった密度の星々。
私が前世の記憶を思い出したのは5歳の時だ。今みたいに部屋の窓から夜空を見上げ、思わずかの有名なキラキラな星の歌を口ずさんだ瞬間、あっさりと此処が異世界だと理解した。
ついでに転生前にこの世界の女神様と会ったことも思い出した。
女神様。いよいよ約束を果たせます。
「それでは、行きましょうか」
独り言のように呟くと、音も立てず背後に2人が現れた。
公爵家から付いてきている護衛のリツとメイドのオト。彼らは男女の双子で、子供の頃に悪質な奴隷商から救い出してからずっと側にいる。癖のない銀髪の整った容姿で並ぶと美しい対の人形のようだ。
リツの支える扉から部屋を出る。薄暗い回廊に人影はない。息を潜めるように歩を進め、城の裏手にある『王家の森』に辿り着いた。森の暗がりに迷いなく踏み入る。
「深夜に付き合わせてごめんね」
森に入り城から離れた所で言葉を発した。僅かな星明かりの中、オトが首を横に振った。
「いえ、私達は何時でもお嬢様と共に参ります」
「ありがとう」
「そろそろ灯りを点しますね」
オトがレイから受け取ったランタンの魔導具をつけた。暗い森がほんのりと照らされる。
レイはランタンをもうひとつ腰に付けたマジックバッグから取り出し、少し前を歩き出した。
足元に湿った草の音がする。オトは私を挟むよう斜め後ろについている。
「まだ地面が濡れてます。今日で無くてもよろしいのではないですか?」
「だめよ。こんな時間に王城に居られるのは今日までだもの。言ったでしょう?明日には王太子殿下に婚約破棄を言い渡されるのよ。そうなったら即退去よ」
何でもないように言うとふたりが揃って息を吐いた。
公爵家に生まれた私は幼少の頃に王太子の婚約者となった。こんな夜中に城内を自由に歩けるのも妃教育の為に王城に部屋を与えられていているからだ。
けど婚約者との関係は良好とは言えない。出会った瞬間から嫌われてたと思う。王太子のお好みではなかったのだろう。……正直もうどうでもいい。
木々がガサガサと揺れた。王家の森は貴族の狩場となる為動物が結構いるのだ。前を歩くリツが周囲を警戒しながらものんびりと話してきた。
「……本当に王立学園の卒業パーティーでそんな暴挙がおきるんすか?国中の貴族が集まる場で王太子が浮気相手を小脇に抱えて婚約破棄を叫ぶとか常軌を逸してるとしか思えないんすけど」
「色々ピンクな男爵令嬢」
オトが小声で言い捨てたのが耳に入り思わず苦笑した。
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