表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/30

闇に葬られる侵略――誰も知らない「国宝防衛戦」

学園の地下、厳重な封印が施された『王国の心臓』とも呼ばれる国宝庫。

そこには、五十年の儀式に不可欠な聖遺物が安置されている。

特訓の合間に、ライカの指示で「古い魔導書の整理」を命じられたエルは、そこで信じられない光景を目撃した。

「……あら、エル様。お疲れ様です。今、少し手が離せませんので、そこの結界の外で待機していてください」

雷鳴家付のナギが、いつもの涼しい顔で、空間を切り裂くような漆黒の腕――魔族の「隠密暗殺兵」の首を素手で掴んでいた。

「……え? ナギ様……それ、何……?」

エルの目の前で、魔族が断末魔の叫びを上げようとする。だが、瞬時に隣に現れた冷氷家付のシズクが、その口元を絶対零度の氷で封じ、音も魔力も外に漏らさないまま粉砕した。

「魔族の特務隊ですよ。国宝の『聖天の涙』を狙って、影伝いに侵入してきたようです。今月で……そうですね、三回目でしょうか」

シズクは、掃除のついでに埃を払うような手つきで、魔族が残した不浄な塵を「闇」の魔力で消滅させた。

「三回……!? って、魔族って伝説の存在じゃなかったんですか!? 王都の騎士団も、国王様も、魔族なんて絶滅したって……!」

「彼らがそう信じていられるのは、お嬢様方が学園でお茶会をされているからです」

テラが背後から現れ、魔族がこじ開けようとした空間の「歪み」を、土魔法の応用で完璧に修復していく。

「お嬢様方が放つ『不仲の殺気』は、実は王都全体を覆う巨大な探知網なんです。それによって浮き彫りになった『異物』を、私たち準公爵家が、こうして目立たないうちに処理しています。……でないと、国王様がパニックを起こして、お嬢様方の自由な時間が減ってしまいますから」

エルは膝から崩れ落ちそうになった。

(……この人たち、国を守ってるんじゃない。お嬢様たちの『お茶会』の時間を守るために、魔族の軍勢を一人残らず闇に葬ってるんだ……)

「さて、エル様。お嬢様方がもうすぐ『今日のおやつ』をお求めになります。この魔族の残骸を片付けたら、すぐに新作のタルトを持ってきてくださいね」

ナギが何事もなかったかのように微笑む。

「……ちなみに、この侵入の件は報告しないんですか?」

「お嬢様方には事後報告で十分です。『ゴミが三つほど。処理完了』と。お嬢様方も、そんな些事よりも『ルル様がいかにタルトの苺を綺麗に食べたか』というお話を聞くほうが、ずっとお喜びになりますから」

エルは悟った。

この国が平和なのは、聖女の祈りのおかげでも、王家の威光のおかげでもない。

「お菓子を楽しみたい」という公爵令嬢たちのささやかな欲望と、それを完璧に叶えるために世界の脅威を雑草のごとく刈り取る側近たちがいるからなのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ