表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

天空を染める「言い訳」と、光速の隠蔽工作

その夜、王都の夜空に異変が起きた。

本来、地上に埋設されたはずの『絶対障壁ユニット』たちが、五十年の儀式が近づく月光に反応し、地下から凄まじい「聖なる光」を天に向かって放出し始めたのだ。

王城から立ち上る、天を突くような黄金の光柱。

深夜にもかかわらず、王都は昼間のような明るさに包まれ、人々は驚愕して窓を開けた。

「……ちょっと、ナギ! シズク! 地下のユニットが共鳴し始めてるじゃない! 予定より一週間早いわよ!」

サロンでくつろいでいたレイカが、窓の外の光を見て跳ね起きた。

「申し訳ございません! 月の引力による地脈の活性化が、想定を〇・〇八パーセント上回りました! すぐに抑制フィールドを展開します!」

ナギが風のように動き、テラと共に地下へ転送魔術で直行する。

だが、すでに光は王都中の人々が目撃してしまっている。このままでは「王城の地下に何かがある」とバレるのは時間の問題だ。

「メルカ、ライカ! 物理的な隠蔽は任せたわよ! エル、あなたは学園の魔導掲示板と騎士団の通信網をジャックして!」

「えっ、ジャック!? 私がですか!?」

「いいから早く! 理由は何でもいい、『ありえない自然現象』をデッチ上げるのよ!」

エルは震える手で魔導端末を操作し、三令嬢から送られてくる「もっともらしいデマ」を次々と公式記録として上書きしていく。

一方、ライカはバルコニーに飛び出し、指先から空に向かって漆黒の雷を放った。

「……はぁぁぁっ! 黄金の光を、無理やり七色に分散させるわよ! メルカ、熱量調整をお願い!」

「了解。……氷と炎、雷を混ぜて、空に『屈折現象』を引き起こすわ。……エル、準備はいい?」

「はい! ……えーっと、『本日は百年の一度の特殊な気象条件により、成層圏の魔力塵が発火した”極光オーロラ”が観測されました。なお、この光を浴びると健康に良いという迷信がありますが、実際はただの光です”』……送信しました!」

数秒後。

黄金の一筋だった光柱は、三令嬢の強引な魔力操作によって空中でバラバラに砕け散り、王都の空を美しく、しかし禍々しいほどの色鮮やかな「オーロラ」へと変貌させた。

「……わぁ、綺麗……」

「本当だ。不吉な光かと思ったけど、あんなにカラフルなら、きっと吉兆に違いないな」

街の人々が感嘆の声を漏らし、恐怖が「観光気分」へと塗り替えられていく。

カイルたち騎士団も、「なんだ、ただのレアな気象現象か」と、エルの流した公式通知を鵜呑みにして警備を解いた。

数分後。地下の共鳴を力技でねじ伏せた側近たちが、汗一つかかずに戻ってきた。

「……鎮圧完了です。念のため、地下の全ユニットに『消音・消光・存在遮断』の術式を三重に追加しておきました」

「お疲れ様。……ふぅ、危なかったわね。あんなの見られたら、明日から調査団が地下に押し寄せてくるところだったわ」

レイカがソファに沈み込み、冷めたお茶を飲み干す。

エルは、オーロラが消えていく夜空を見上げながら、深い、深いため息をついた。

(……国家存亡の危機みたいな光を、力技で『ただのオーロラ』に書き換えるなんて……。しかも”健康に良い”っていう噂を先回りして否定して、余計な騒ぎを防ぐ徹底ぶり。……この人たちに、隠せない秘密なんてこの世にないんじゃないかな……)

「エルちゃん、お疲れ様。はい、これ、頑張ったご褒美の『オーロラ色のキャンディ』。さっきの光の残滓を固めて作ったから、魔力回復に効くよ」

「……ありがとうございます。……これ、一粒で街の魔導灯が一ヶ月分くらい灯りそうな密度なんですけど、黙って食べておきますね……」

王都の「平和な夜」は、少女たちの冷汗と超常的な隠蔽工作によって、今夜も守られたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ