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王城地下の「墓標」と、重なり続ける守護

王城の最深部、国王すらその存在を忘れた旧い地下回廊。

そこは今や、三公爵家とその側近たちだけが立ち入る「禁域」と化していた。

「……よし。これで、四つ目の『零式・絶対障壁ユニット』の埋設完了ね」

レイカが、魔界の果実から精製した極光の結晶を、地面の魔法陣へと流し込む。

結晶は脈動し、王城全体を包み込むような不可視の波動を放った後、音もなく土の中に沈んでいった。

「お疲れ様です、レイカ様。……これで王城の物理防御力は、隕石が直撃しても『ヒビ一つ入らない』水準を維持できますわ」

シズクが手元の魔導タブレット(特注品)で、城全体の構造強度をチェックする。画面には、すでに埋設済みの「最強アイテム」たちが、網目のように城を支えている様子が映し出されていた。

「……それにしても、これで何個目かしら。ライカが三年前に入れた『雷神の杭』、メルカの『地脈の楔』……。この城、もう地下が宝石箱みたいになっていない?」

メルカが少し呆れたように、地下の深層を透視する。

「仕方ないわ。五十年の儀式に向けて、結界の強度は高ければ高いほどいいもの。……それに、ここの地盤、私たちが魔法を使いすぎるせいか、たまに歪むのよね。補強しておかないと、王城が浮いてしまうわ」

「そうそう。昨日もちょっとナギと演習してたら、城の塔が三ミリくらい傾いちゃって。慌てて『重力定数』をいじって直しておいたけど」

ライカがテヘッ、と可愛らしく笑う。

その「三ミリの傾き」を直すために、彼女たちがどれほどの神級魔法を無造作に発動したか。

傍らに控えるエルは、もはやその事実を脳が処理するのを拒否していた。

(……この王城、もう地面に立ってるんじゃなくて、彼女たちの埋めたアイテムの魔力で浮いてるようなもんじゃない。もはや城そのものが、一つの巨大なアーティファクトになってる……)

「エル様、ぼんやりしないで。次の埋設ポイントの土壌改良をお願いします。……あ、カイル様たちの部隊が巡回に来るまであと十分です。それまでに、この『神の息吹』の余波を、ただの『カビ臭い地下の空気』に偽装してください」

テラが淡々と指示を出す。

「……わかりました。カビの匂いですね、得意分野です……」

エルは、世界を救うような輝かしい魔力を、必死に「地下の湿気とカビ」の匂いに変換する魔法を練り上げる。

ほどなくして、カイル率いる騎士団の巡回部隊が通りかかった。

「……うわっ、ここは相変わらずカビ臭いな。魔力も全く感じられない、ただの古臭い地下道だ」

「ああ。こんな場所、ネズミ一匹出やしないよ。さっさと戻ろうぜ」

カイルたちは、自分たちの足元数メートルに、世界を滅ぼせるほどの魔力が、これでもかと凝縮されて埋まっていることなど露ほども思わず、鼻をつまんで去っていく。

「……ふふ。あの子たち、本当に幸せね」

レイカが、去りゆく騎士たちの背中を見送る。

その瞳には、彼らへの蔑みなど微塵もない。ただ、自分たちが作り上げた「平穏な日常」を、何も知らずに享受してくれていることへの、深い満足感が宿っていた。

「さあ、仕事は終わり! 秘密会議(お茶会)に戻りましょう。今日の夕食は、アルト王子が『僕が自ら仕留めてきた(ことになっている)』幻の白鹿のステーキよ」

「楽しみね。……ナギ、あの鹿、ちゃんと『矢が刺さった跡』を魔法で作っておいた?」

「もちろんです。王子の自尊心のため、一撃で仕留めたように見せておきました」

地下の静寂に、少女たちの笑い声が溶けていく。

王城は今日も、無数の「墓標(最強アイテム)」に支えられ、何事もなかったかのようにそびえ立っていた。


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