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第77話 一時の別れ

「――――そうか、そこに未だ見つからない仲間がいるのか......いや、仲間()か」


「そこまで気にしなくていいよ。それよりもお前はどうするんだ?」


 帝国の復興がある程度進んだとある日、カイは次なる目的地に向かうべくツバサに得た情報を共有していた。


 それは次なる南に向かった国にカイの同級生もしくはカイの家族がいるかもしれないという可能性である。


 その言葉を聞いてツバサは少し考えるように顔を俯けながら、同じテーブルを囲んでいるソラへと尋ねた。


「守代は当然カイの方についていくんだよな?」


「うん、今は戒ちゃんのそばに少しでも居られたらいいと思うし、それに私の力が戒ちゃんの役に立つかもしれないから」


「......なんか雰囲気変わったな」


 ソラの堂々としたカイに対する主張にツバサは少し驚きつつも、しかしどこか頼もしいような自信溢れた表情に顔を和らげる。

 そんなツバサの言葉にソラはあまりピンと来てないように小首を傾げた。


「そうかな? まぁ、強いて言うなら後悔しないような言動を心がけようとしてるからかな」


「後悔しない、か。確かに、もう伝えられない言葉もあるからな......」


 ツバサはどこか影を落としたような表情を浮かべた。その表情の理由の察しがつくのかカイもソラもどこか悲しそうな顔をする。


 それは間違いなくもとの世界での家族のことだろう。突然呼ばれたことでまだまだ感じるはずだった温もりも感情も未来も全てが奪われてしまった。


 初めからこの運命を知っているのならもっと伝えられる言葉があったはず。

 どんなに押し殺そうとしてもその時の記憶が消えるわけではなく、むしろ遠く離れるほど思い返してしまう。


 ホームシックというとありきたりな表現では済まされない、それ以上の感情や想いがこの世界に来た者達には拭えぬほどにこびりついてしまっているのだ。


 それをしっかりと受け止められているか否かの具合がツバサとソラの違いに現れているのだろう。


「......決めた。俺は聖王国に行ってくる。そして、誠に会ってお前のことを伝えてくる。

 帝国に来たのは本当にまだ仲間が生きているかを確かめたかったからで、それが確かめたのならもう大丈夫だ。

 それに誠人が勇者として選ばれたのなら、きっと危険な役目に会うのは確実だ。

 だったら、支えになってくれる人がいてくれた方がいいだろ?」


「そうだな。どんなに心許せる相手が出来ようとも同郷の話が出来る奴はまた違うからな。そういうことなら任せた」


「気をつけてね」


「あぁ、真の脅威を知った今、この情報を確実に伝えなければならない。すると当然、狙ってきてもおかしくないからな」


「とはいえ、恐らく危険視されてるのは俺と空ぐらいだ」


「そういう意味でも一緒にいた方が良いな」


 そして、カイはツバサとの会話を終えるとその日はそのまま昔話に花を咲かせた。

 その時のカイの表情はカイを知る者からは正しく高校時代のカイの姿と重なったという。


 翌日、カイ達は帝国の正門の前で集まっていた。そこにはトールとその仲間達の姿もある。

 そして、とある鉄の塊の最終調整をしていたトールは作業を終えると汚れた顔をそのままにカイに告げる。


「ご注文通りに作っておきましたよ。まさかこの国で作るとは思わなかったですが」


「俺としては君がまさか自動車整備していた父親の息子であること方が驚きなんだけど」


 そう言いながらカイが視線を送る方向には天からの日差しをつやのあるボディで弾き返す漆黒の車であった。車種はバギーに近く、聞けば水陸両用とのこと。


「助かったよ。これから向かう場所は海に囲まれた場所らしいからね。

 船に乗れなかった最悪の場合は活用させてもらうよ」


「そうしてください。あくまでサブ機能なんで馬力自体は陸の何十倍も劣りますから。

 とはいえ、それを補えるほどの膨大な魔力がありそうですから、別にそこらへんも心配してないですけど」


「俺はそこまで持っちゃいないよ」


「ははは、ご謙遜を......っとそろそろ時間みたいなので、僕は先に失礼しますね。

 それじゃあ、情報を得次第すぐに遅らせてもらいます。また何かあったら呼んでください。力を貸しますよ」


「そうしてもらうと助かる。ありがとう」


 「では、失礼します」とトールは告げるとそのまま馬車に乗って走り出してしまった。

 その姿が遠くなるまで見送ると今度はツバサ達の方へと視線を向ける。


「それじゃあ、お前も気をつけてな。聖王国はもっとも神と繋がりが強い場所だ。何があるかわからないからな」


「そうだな。だが、それはお前にも言えることだ、カイ。その国にいるとされている人を助けてやってくれ」


「あぁ、任せろ」


 そして、ツバサ達は馬車に乗り込むと聖王国のある方角へと走り出した。

 その姿も同じように見送っていくとカイもようやく動き出し始める。


「そういえば、ハイギルには出発のこと言ってあるのか?」


「すでに言ってあるよ。復興に尽力するために顔を出せないだろうし」


「そっか。それじゃあ、俺達も行くとしますか」


「やったー! 戒ちゃんとドライブデート!」


「胸が高鳴る高揚感......悪くない」


「な、なんでしょうか。この巨大な物体......これが動くんですか?」


「そう言えば、キリアさんだけ唯一知らなかったですね。これは車と言って馬より速く走る鉄の塊です」


「鉄の塊が走るんですか!?」


「ま、乗ればわかるさ」


 カイが運転席に乗るとソラとエンディはどちらが先に助手席に乗るかジャンケンを始めた。

 その結果、ソラは勝ち、エンディは渋々後部座席に乗っていく――――膝の上にシルビアを乗せながら。

 最後にキリアが乗るとカイは慣れた手つきでエンジンを入れていく。


 そして、カイがゆっくりとアクセルを踏み込んだ瞬間、その車は車内がにいた全員が後ろに引っ張られるほどの爆速で発進した。


「え、は、速っ!?」


「か、戒ちゃん!? いくら久しぶりだからって飛ばし過ぎじゃない!?」


「いや、違くて。俺はあの頃と変わらないように踏み込んだだけであって」


「カイ、速度メーター見てみて」


「速度メーター......? って、最高速度上限が時速500キロって頭おかしいだろ!?」


「まぁ、パパの魔力をフルバーストそれば500キロは普通に超えると思いますよ。ただし、それは車体がもたないということですが」


「それよりも! 戒ちゃん、前見て! 前! 前方から木が向かって来てる!」


 そう言ってソラが指さしたフロントガラスの先には確かに立派な木が生えていて、その木と車の距離はおおよそ30メートル。

 されど、車の速度はすでに200キロは超えていた。つまりは回避不可能。


「ぶ、ぶつかるー!」


『前方に障害物を検知。自動物理フィルターを展開』


 その瞬間、車から自動音声が流れ始め、すぐに車の周りに自動で結界が張られた。

 そして、その車は木にぶつかるとその木を平然とへし折りながらそのまま通過していく。


 衝突して大破しないことに安堵するカイ、ソラ、エンディの三人。

 それから次第にカイが魔力調整で速度感覚を覚え始めて来たのか、安定した走行がなされ始めた。


「ふぅ、生きた心地がしなかったぜ」


「パパがこれまでのこの世界の戦闘を含めても一番の死に対する恐怖を感じていましたね」


「戒ちゃん、明らかにヤバい奴と戦ってたのにそれ以上にこっちでの方が恐怖してたってこと?」


「ある意味、カイらしい」


「それって絶対褒めてないよね? って、そういえば、さっきから社内に妙に風が吹き込んでくるんだが?」


「あぁ、それなら――――」


 カイの質問に対し、シルビアが横を見ながら答えた。


「先ほどからキリアさんがウキャキャキャキャと言う感じで窓の外に顔を出して喜んでいます。

 なんだったら、先ほどの爆走の際もメチャクチャ楽しんでいましたよ」


「そういえば、エルフは風の申し子と呼ばれていた気がする。なるほど、さすがエルフ」


「エンディ、そこ納得する場面じゃないから。ほら、キリア。窓開けててもいいけど、顔出すのはやめなさい。危ないから」


「ふふっ、カイって本当にパパなんだね。ハッ! そう考えると今の私のポジションはさながらママ。ということは、これはさながら家族旅行!?」


「いや、違うから。想像力豊か過ぎるだろ」


 しかし、そんなカイの言葉は届かずに、さらにその言葉はエンディという新たな火種を生んで車内はガヤガヤとし始めた。

 そんな光景にカイはため息を吐きつつ、されど笑みを浮かべながら進んでいった。


*****


――――場所「???」


 そこは厳かで神聖なる空間であった。常人が足を踏み入れれればすぐさま人の持つ邪な心で汚れてしまうかのような白き大地が無限に続いている。


 そこには木もなく、生き物も存在せず、空すらも存在しない。ただ汚れを知らない無限の白がその空間の全てであった。


 そして、その空間にいるは椅子に座る一人の女性とそこから二列に並ぶようにしていた白き修道服を着た男女達。

 それから、女性に近い場所に位置する赤、青、黄、緑、茶とそれぞれの色の刺青が顔に描かれている五人の男女がいた。


 その中の青き刺青を持つ男が最初に口火を切る。


「ついに神影隊の奴から犠牲者が出たぜ。しかも、やられたのは一人の人間らしい」


「それは知っていますよ。問題はどうするかってことでしょう?」


「ガハハハッ、ラザールがやられたってことは強ぇってことだろ? 俺にやらせろよ」


 黄色の男と赤の男がそれぞれ言葉を重ねていく。

 それに対し、茶色の男は沈黙を貫き、緑の女はただ思うようなことがあるように目を俯かせていた。

 その姿に何かを感じた聞いた黄色の男が緑の女に尋ねていく。


「どうしましたか?」


「いえ、なんでもないわ。単に誰がその人を倒しに行くかってことを考えてただけ」


「それなら、俺が――――」


「いいや、俺だね。どうやら目的位置が俺の管轄らしいし。それでいいでしょ? フォルティナ様」


「.......」


 椅子に座る女性――――フォルティナは沈黙を貫くように無言であった。それに対し、「沈黙は了承と得るぜ」と答えると青の男は列を出て歩き出した。


「待て、まだ話は終わってないぞ!」


「いいや、終わりだ。俺がその邪魔者を殺す。それで“終わり”だ」


 黄色の男の制止を聞かずに青の男はそのままその空間から消えた。


****


 ―――――行方不明者リスト―――――


 男友人:相川アイカワ ツバサ

 男友人:椎名シイナ 誠人マコト

 男友人:陸井リクイ 哲也テツヤ

 女友人:新倉ニイクラ 美鈴ミスズ

 女友人:志渡院シドウイン ケイ×

 幼馴染:守代カミシロ ソラ


 妹 :新神ニイガミ 白夢シロム


 妻 :新神ニイガミ 万理マリ

 娘 :新神ニイガミ 頼奈ライナ

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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