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異世界で使える、35歳営業マンのいい人戦略 ~せっかく生まれ変わったから、ハーレムくらい目指します~  作者: kammy


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第三話 第二の人生

蓮が死んでから、二年が経った。


 佐藤家では、少しずつ以前の生活が戻っていた。


 父も母も、蓮のことを忘れたわけではない。


 ただ、毎日の生活を続けていれば、人は少しずつ前を向いていく。


 そして、蓮が生前に所有していた土地には、思いもよらない変化が起きていた。


 周囲の開発が進み、土地の価値が大きく上がったのだ。


「まさか、こんなことになるとはな」


 父が窓の外を眺めながら呟く。


「本当ね。これなら老後の心配もしなくてよさそう」


 母も笑う。


「蓮がいたら、土地で儲けようとか考えるかもな」


「ふふっ。言いそう」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 そんな穏やかな時間が、佐藤家には戻っていた。


     ◇


 同じ頃。


 蓮の大学時代の友人だった高橋にも、三人目の子供が生まれていた。


「名前、どうする?」


 夫に聞かれ、高橋は赤ん坊の顔を見ながら少し考えた。


「……蓮二、かな」


「蓮二?」


「うん。なんとなく」


「いいんじゃない?」


 夫は特に気にした様子もなく頷いた。


「じゃあ、蓮二で」


 高橋は小さく笑って、眠っている赤ん坊を見つめた。


 その光景を最後に――


「……夢か」


     ◇


 ……いや。


 夢じゃない。


 そう思ったのは、目を覚ましてからしばらく経ってからだった。


 まず、おかしい。


 体が動かない。


 正確には、動かせる。


 だが、思った通りには動かない。


 手を動かそうとしても、腕が妙な方向にぷるぷるする。


 足を動かしてみても、やっぱり思うように動かない。


 そして何より。


「……あぅ」


 声が出ない。


 出たとしても、意味のある言葉にならない。


 これは……。


 俺、赤ん坊じゃね?


 いや、待て。


 落ち着け。


 俺は確か、神様と話していた。


 その前は――事故。


 そうだ。


 俺は死んだ。


 そして神様から、別の世界に生まれ変わると言われた。


 ということは……。


 本当に生まれ変わったのか?


 その時だった。


「レン、起きたの?」


 声が聞こえた。


 若い女性の声。


 俺の顔を覗き込んでいる。


 綺麗な人だった。


 長い髪。


 整った顔立ち。


 そして、まだかなり若い。


「かわいい……」


 女性が嬉しそうに笑う。


 その横から、さらに若い男が顔を出した。


「起きたか、レン」


 こちらもまた、やたらと顔がいい。


 ……なんだ、この夫婦。


 美男美女すぎないか?


 女性が赤ん坊の俺を抱き上げる。


「ほら、あなた。笑ってるわ」


「本当だな」


 男も嬉しそうに俺を見る。


「レンは俺に似てるかな?」


「どちらかというと私じゃない?」


「いや、俺だろ」


「私よ」


「俺だって」


「ふふっ」


 ……なんだこれ。


 仲良すぎだろ。


 そう思った直後。


「あなた」


「ん?」


 女性が男の頬にキスをした。


「……おい」


 男も笑いながら、女性の額に軽く口づける。


 いやいやいや。


 子供の前だぞ。


 俺、中身三十五歳なんだけど。


 赤ん坊だからって油断するな。


「レン、かわいいわね」


「もちろんだ」


 また二人で俺を見る。


 ……まあ。


 仲がいいのは悪いことじゃない。


 むしろ、いいことだ。


 それにしても――。


 若い。


 この二人、何歳なんだ?


 会話を聞いているうちに、少しずつ分かってきた。


 父親の名前は、レギオン。


 母親は、ミレーユ。


 二人とも貴族の家の人間らしい。


 そして――。


 レギオン、十九歳。


 ミレーユ、十七歳。


 ……。


 俺より若い。


 いや、それどころじゃない。


 会社の後輩の誰より若い!!


 前世では三十五歳。


 こいつらは十代。


 なのに俺の親。


 人生って、何が起こるか分からんな。


 もっとも、この世界では十六歳から成人として扱われるらしい。


 貴族なら家を継ぐことも、結婚することも、子供を持つことも珍しくない。


 むしろ家を繋いでいくことは、貴族として大切な役割の一つらしい。


 そう考えると、この二人が若いこと自体は、それほど珍しいことではないのだろう。


 ……まあ。


 それにしても若いけどな。


 俺がそんなことを考えていると、ミレーユが俺の頬を指でつついた。


「レンはどんな子になるのかしら」


「元気に育ってくれれば、それでいいさ」


「そうね」


 二人とも、本当に嬉しそうだった。


 そして、俺は改めて思う。


 この二人が俺の両親なのか。


 名前はレン。


 前世の俺は、佐藤蓮。


 そして今は――レン。


 偶然なのか、それとも神様が何かしたのか。


 そこまでは分からない。


 だが。


 本当に、生まれ変わったんだ。


 その実感が、少しずつ湧いてきた。


     ◇


 それから、俺は少しずつこの世界のことを知っていった。


 もちろん、赤ん坊なので何もできない。


 歩けない。


 喋れない。


 自分から情報を集めに行くこともできない。


 ただ、見て、聞いて、考える。


 それだけだ。


 でも、それだけでも十分だった。


 まず分かったのは――。


 この世界は、俺が神様から聞いていた通りだった。


 剣がある。


 魔法がある。


 貴族がいる。


 馬車もある。


 城や街を囲む壁もある。


 見た目だけなら、かなり中世ヨーロッパっぽい。


 ……ただし。


 どうも、俺が知っている中世ヨーロッパとは違う。


「ミレーユ、今日は少し暑いな」


「じゃあ魔道具を弱める?」


「いや、このくらいでいい」


 そんな会話が聞こえる。


 魔法で温度を調整しているらしい。


 夜になると、部屋には魔法による明かりが灯る。


 風呂もある。


 水回りもかなり便利らしい。


 料理にも魔道具を使っている。


 ……なんだこれ。


 見た目は中世。


 生活は妙に現代的。


 どうやら、この世界では魔法が科学の代わりになっているらしい。


 だったら、俺が神様に頼んだ魔法チートも――。


 ……いや。


 そこはまだ分からない。


 そもそも、神様との話。


 最後はどうなったんだ?


 俺は赤ん坊のまま、必死に記憶を辿った。


 前世の記憶。


 言語理解。


 読み書き。


 アイテムボックス。


 鑑定。


 魔力。


 全属性魔法。


 身体能力。


 剣術。


 魔法の才能。


 病気になりにくい身体。


 長生き。


 容姿。


 金。


 それから――。


 女性にモテるように。


 ……。


 我ながら欲張ったな。


 営業マンとして交渉しているうちに、だんだん楽しくなってきたんだよな。


 神様も途中から明らかに疲れていた。


『おぬし、本当に営業マンか?』


『法人営業です』


『聞いておらん』


 ……あれは面白かった。


 しかし。


 あの神様、結局どこまで認めてくれたんだ?


 全部通ったとは思えない。


 いや、思いたくない。


 もし全部通っていたら、俺は――。


 赤ん坊の身体では確認できない。


 だが、確認する方法ならある。


 神様が最後に何か言っていた気がする。


 そうだ。


 あれだ。


 異世界ものの定番。


 俺は両親が部屋から出ていくのを待った。


 しばらくして、二人の気配が遠ざかる。


 ……よし。


 今なら誰もいない。


 俺は心の中で、ゆっくりと言った。


「ステータスオープン」


その瞬間見慣れない文字が浮かび上がった。


そして

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