第二十九話 交渉スキル
リカが魔法を消した。
「リカ、あなた魔法を消せるの?」
「出せるので、消せますわよ」
「…………」
俺は頭を抱えた。
「どうしたの?」
「いや……」
俺は少し考える。
「魔法を消せるのって、かなり珍しいみたいなんだ」
「そうなの?」
「うん。母さんが言ってた」
「魔法そのものを消せる人は、かなり珍しいらしい」
「ふーん」
リカは、あまり気にしていない様子だった。
「できる人は、変態って呼ばれることもあるらしい」
「へ、変態?!」
リカの顔が引きつった。
「なんで魔法を消せるだけで変態なのよ!」
「俺に言われても……」
「そんなのおかしいわ!」
リカはしばらく考えた。
「……でも」
「うん?」
「学校では使わないほうがいいのね?」
「うん。そのほうがいいと思う」
「……分かったわ」
リカは渋々頷いた。
「それと、ユカちゃんにも秘密にしてもらおう」
「え?」
リカがユカちゃんを見る。
「さっき見られてたからね」
「そうですね」
ユカちゃんが頷く。
「私も秘密にします」
「ありがとう」
俺は三人を見る。
「じゃあ、このことは四人だけの秘密ってことで」
「分かったわ」
「はい」
ミカも小さく頷いた。
「私も秘密にします」
「うん」
これで一件落着。
……と思った。
「……でも」
ユカちゃんが口を開いた。
「はい?」
俺が見ると、ユカちゃんは少しだけ考えてから言った。
「そもそも、リカの秘密も守る約束ですよね?」
「……そうね」
リカが答える。
「そして、レンとの秘密も、今はみなさんに分かってしまいました」
「…………」
リカとミカが黙った。
「そう考えると」
ユカちゃんは、俺たち三人を順番に見た。
「みなさんには、秘密を守るというメリットがあります」
「…………」
「でも」
ユカちゃんが首を傾げる。
「私には、メリットがないと思いませんか?」
「…………」
誰も答えられなかった。
確かに。
言われてみれば、その通りだ。
俺とユカちゃんだけの秘密だったものが、今は四人の秘密になった。
ユカちゃんからすれば、自分だけの特別なものが一つ減ったことになる。
「そこで」
ユカちゃんが続けた。
「お願いがあります」
「お願い?」
「はい」
ユカちゃんは、俺を見る。
「レンと二人で、お出かけしたいです」
「……え?」
「デートがしたいです」
「なんでそうなるのよ!!」
リカが叫んだ。
「どうして秘密の話からデートになるの!?」
ユカちゃんは落ち着いて答える。
「私とレンだけの秘密がなくなったからです」
「…………」
リカが黙る。
「別の、私とレンだけのものが欲しいです」
「…………」
ミカも黙っている。
俺は思わず聞いた。
「俺と出かけるのは……メリットなの?」
「もちろんです❤️」
「…………」
即答だった。
(……交渉スキル、すげえ)




