第二十七話 リカと食事会
王都に来て、しばらく経った。
そして今日は――。
リカが王都の小学部へ入学する日だった。
「そろそろ来る頃ね」
母さんが言った。
「うん」
俺たちは王都の入口近くで、リカを待っていた。
父さん、母さん、ミカ、ハボリム、そして俺。
しばらくすると、遠くから馬車が見えてきた。
「あっ」
リカが乗っている馬車だ。
馬車がこちらへ近づき、ゆっくりと止まる。
扉が開いた。
「レン!」
「リカ」
リカが馬車から降りてきた。
「久しぶりね」
「うん」
最後に会ったのは一か月ほど前。
それほど久しぶりというわけでもない。
「元気そうだな」
「当然よ」
リカはそう言って、馬車の中を振り返った。
そこには、たくさんの荷物が積まれている。
「……多いな」
「学校で使うものよ」
「そんなに?」
「本もあるし、魔法の教材もあるから」
「ああ、なるほど」
いかにもリカらしい。
「じゃあ、運ぶの手伝うよ」
「ありがとう」
俺たちは荷物を降ろし、寮へ向かった。
*
小学部の寮は、学校から少し離れた場所にあった。
商人や貴族の子供など、王都の外から通う生徒も多いため、寮もそれなりに大きい。
リカはそこで、商人の家族と一緒に暮らすことになっている。
「ここがリカの部屋?」
「そうよ」
荷物を運び込み、一つずつ整理していく。
「これは本棚に入れて」
「了解」
「こっちは机の上」
「はいはい」
魔法の教材が多い。
学校に行く前から、すでに勉強する気満々らしい。
「忘れ物はない?」
母さんが確認する。
「たぶん大丈夫」
「困ったことがあったら、いつでも言うのよ」
「うん」
父さんも頷いた。
「学校で何かあれば、遠慮なく頼りなさい」
「分かってるわ」
最後に荷物を片付ける。
「じゃあ、今日はうちで夕食を食べていく?」
母さんが聞いた。
「いいの?」
「もちろん」
「じゃあ、そうする」
こうして、リカも一緒にクロイツ家へ向かった。
*
夕食。
いつものように、みんなで食卓を囲む。
父さん。
母さん。
俺。
ミカ。
ハボリム。
そしてリカ。
リカが少し周りを見渡した。
「ミカとハボリムも一緒なの?」
「ああ」
俺が答える。
「うちはみんな一緒に食べるんだ」
「そうなんだ」
リカは特に気にした様子もなく、席についた。
しばらく食事をしていると、ミカが思い出したように口を開いた。
「そういえば、レン様」
「ん?」
「この前、王女様とお友達になったんですよね」
「うん」
リカの手が止まった。
「……王女様?」
「第三王女殿下のユカちゃん」
「……ユカちゃん?」
リカが俺を見る。
「またお人好ししたの?」
「いや、今回は俺からじゃないよ」
「そうなの?」
「うん。ユカちゃんのほうから、友達になってくださいって言われたんだ」
「……ふーん」
リカが少しだけ視線を落とす。
俺はそれを見ていた。
(……なるほど)
(これは、ちょっと気にしてるな)
なんとなく分かる。
でも。
(ここで俺が気づいたことを悟られるのは、よくない)
俺は何でもない顔で食事を続けた。
「そういえば、四日後に王女様に呼ばれてるんだ」
「……そう」
「うん。ユカちゃんに」
「……ユカちゃん?」
まただ。
リカがこちらを見る。
「何か、魔法について聞きたいことがあるみたいで」
「魔法?」
「そう。ユカちゃんは魔法に興味があるみたい」
「ユカちゃんが?」
その瞬間。
リカの表情が少し変わった。
「うん」
「……私も行っていい?」
「もちろん」
俺は頷いた。
「一緒に行こう」
「うん」
リカが頷く。
そして、さっきまで少し曇っていた表情が、いつものものに戻った。
(……あぶねー)
(今の、ちょっと嫉妬入ってたよな)
(でも、ここで気づいた顔をしたらダメだ)
(鈍感、鈍感)
……よし。
戻った。
(危ないところだったー)
俺は何事もなかったように、夕食を続けた。




