第二十六話 新たなるフラグ
王女様と友達になっちゃった。
……いや。
なっちゃったというか、なってくださいって言われたんだけど。
第三王女殿下。
ユーカリティー・フォン・アルヴェリア。
ユカちゃん。
五歳。
可愛い顔して、王女様。
そして――。
交渉スキル持ち。
……交渉スキルかぁ。
王族で交渉スキルって。
なんか、いろいろ交渉されるのかな。
まあ、いいか。
俺も法人営業だったし。
交渉なら、負けないぞ。
*
「そういえば、レン殿」
夕食の席で、ハボリムが口を開いた。
「レン殿は、身体強化を習得されているようだな」
「…………」
俺の手が止まった。
「身体強化?」
レギオンが聞き返す。
「はい。王女殿下をお助けした際の動きです」
「高速で移動していたことか?」
「正確には、身体強化で身体を強くした上で、風魔法で自らを飛ばしたのでしょう」
「……ああ」
レギオンが頷く。
「なるほど」
「身体強化なしでは、あの加速には耐えられぬでしょう」
「…………」
バレてる。
「見よう見まねで覚えました」
俺が答えると、ハボリムは頷いた。
「そうでしたか」
そして、少し考える。
「レギオン殿」
「なんだ?」
「そろそろ、レン殿の能力を隠しておくのは難しくなってきたのではないでしょうか」
「……!」
レギオンの表情が変わった。
「そこまでか?」
「はい」
ハボリムはレンを見る。
「剣だけであれば、まだ私が勝てるでしょう」
「…………」
「ですが、魔法を使われれば……」
ハボリムが少し間を置く。
「私には、手に負えぬと思います」
「……ハボリム殿にも、手に負えませんか?」
レギオンが思わず聞き返した。
「はい」
即答だった。
「レン殿の魔力、魔法の精度。そして先ほどのような身体強化と風魔法の組み合わせ」
ハボリムは淡々と続ける。
「まともに相手をすれば、私では対応できぬでしょう」
「…………」
レギオンが俺を見る。
俺もレギオンを見る。
「レン……」
「はい」
「お前、いつの間にそんなことになったんだ……?」
「……俺にも分からない」
いや。
たぶん、神様のせいです。
*
「とはいえ」
レギオンが腕を組む。
「今さら何かすることもないか」
「そうですね」
ハボリムも頷く。
「今まで通り、なるべく能力は隠しておくのがよいでしょう」
「事件が起きたら、その時に考える」
「それがよいかと」
俺も頷いた。
「うん。それでいいと思う」
今さら急に生活を変える必要もない。
魔法も剣も、普段通りに練習する。
人前では、できるだけ普通に。
何か問題が起きたら、その時に対応すればいい。
そんなにポンポン事件なんて起きないだろ。
「じゃあ、今まで通りで」
「そうだな」
「はい」
方針は決まった。
俺は安心して夕食を再開した。
……あ。
(フラグ立てられた)




