第二十話 あと四人
その後。
ミカフィーヌは、俺の専属の使用人になった。
といっても、まだ五歳だ。
掃除や料理を任せるわけではない。
身の回りの手伝いや、簡単な雑用。
それから――。
「レン様、お茶をお持ちしました」
「ありがとう、ミカ」
「はい」
こんな感じで、俺のそばにいる。
本人が望んだことだ。
俺としても、嬉しい。
そしてもう一人。
ハボリムは、俺の剣の先生兼護衛になった。
こちらは、かなり意外だった。
というのも。
「一度、手合わせしてみるか」
父さんがそう言ったのだ。
俺も見学することにした。
二人が剣を構える。
そして――。
始まった。
速い。
普通なら、三歳児の俺には見えないだろう。
でも。
俺は魔力で視力を強化している。
二人の動きは、ちゃんと見えていた。
父さんが踏み込む。
ハボリムが受ける。
父さんが剣を返す。
ハボリムは、それをわずかに身体をずらして避ける。
そして。
反撃。
父さんが受ける。
また攻める。
ハボリムが受ける。
――いや。
違う。
受けているんじゃない。
遊んでる。
ハボリムは、父さんの攻撃を余裕で捌いていた。
父さんが一歩踏み込めば、一歩下がる。
横から斬り込めば、ほんの少し身体を傾ける。
まるで、父さんの動きが最初から分かっているみたいだった。
そして時々。
ハボリムが剣を振る。
父さんが慌てて受ける。
そのたびに、父さんの身体が少しずつ後ろへ下がっていく。
明らかに。
ハボリムが押している。
しかも。
余裕で。
しばらくして、二人が剣を収めた。
「いい勝負だった」
父さんが言う。
「こちらこそ」
ハボリムは、ほとんど息を乱していない。
父さんは少し息を切らしている。
……。
どんだけ強いんだよ。
父さんも相当強いはずなんだけど。
まあ。
俺としては頼もしい限りだ。
剣も教えてもらえる。
護衛もしてくれる。
ありがたい。
そして――。
もう一つ。
俺には、確認しておきたいことがあった。
ミカフィーヌのことだ。
俺は一人になると、こっそり鑑定を使った。
今まで、本人にはもちろん、誰にも言っていない。
俺だけの秘密だ。
そして表示された情報を見て。
俺は固まった。
――猫人族の姫。
――スキル:隠密。
「…………」
姫様?!!
いやいや。
待て。
元奴隷のケモミミ。
そして元王族。
さらに専属使用人。
……。
テンプレてんこ盛りー。
なんだこれ。
ここまで来ると、逆に笑えてくる。
しかも。
ミカは自分から、
「あなたのそばにいたい」
と言ってくれた。
俺のそばにいたい。
つまり。
俺と一緒に生きたい。
そういうことだろう。
もちろん、五歳の子供だ。
恋愛感情とか、そういう話ではない。
……ないと思う。
でも。
ハーレム候補として考えるなら。
十分だ。
俺の目指すハーレムは、六人。
現在。
一人目はリカ。
二人目は――。
「……ミカ」
よし。
もう二人目ってことでいいよね。
ミカの二人目。
よっしゃー。
さて。
ここからどうするか。
まずは。
リカと魔法の練習を続ける。
俺も魔法をもっと使えるようになりたい。
リカの魔力操作も、まだまだ伸びるはずだ。
そして。
ハボリムから剣を教えてもらう。
魔法だけではなく、剣も使えるようになりたい。
自分の身を守れるくらいには、強くなっておきたい。
父さんも強い。
ハボリムは――。
……たぶん、相当強い。
この世界には、災害級魔獣みたいな化け物もいる。
いつまでも魔力チートだけに頼っているわけにもいかない。
強くなろう。
そして。
三人目のイベントが来たら――。
積極的に乗っていく。
これだ。
無理に探し回る必要はない。
自然に出会う。
何か事件に巻き込まれる。
困っている女の子を助ける。
そして――。
仲間になる。
そういうものだ。
異世界転生なんだから。
他の転生者だって、そうやって仲間を増やしている。
俺だって、きっと大丈夫だ。
まあ。
まだ二人だし。
先は長い。
でも。
焦る必要はない。
まずは目の前のことだ。
リカと魔法。
ハボリムと剣。
そして。
三人目イベントが来たら、積極的に。
これを当面の目標にしよう。
六人のハーレム。
その二人目まで来た。
なら――。
あと四人だ。
俺の第二の人生は。
まだ始まったばかりだ。
――その頃。
はるか天上。
下界を見下ろしていた神は、しばらく無言でレンを眺めていた。
「…………」
そして。
「またアホなこと言っとる……」
こんにちは、二十話まで来ました。
pv数から読んでいただいている事を実感している今日この頃です。
四十話くらいで終わる予定でしたが楽しくなってしまい、いろいろやっていたら二十話が終わってもまだまだ終わる気がしなくなってます。
これからもお付き合いいただけたらとても嬉しいです。




