↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で使える、35歳営業マンのいい人戦略 ~せっかく生まれ変わったから、ハーレムくらい目指します~  作者: kammy


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/41

第十九話 共に生きる

私の名前は、ミカフィーヌ・チャトラ。


 絶賛、混乱中です。


 目の前には、ついさっきまで片腕だった髭のおじさんがいる。


 そして――。


「……動く」


 おじさんが、右腕をゆっくり動かしている。


 指を握る。


 開く。


 もう一度、握る。


「見える……」


 今度は、目に手を当てる。


 何度も瞬きをしている。


 どうやら、本当に見えているらしい。


 ……え?


 ちょっと待って。


 腕って、生えるものなの?


 目って、生えてくるものなの?


 そんなわけない。


 そんなこと、あるはずがない。


 なのに。


 目の前で起きている。


 さっきまでなかった腕がある。


 さっきまでなかった目がある。


「……すごい」


 髭のおじさんが呟いた。


 私も同じことを思った。


 すごい。


 ……いや。


 すごいで済ませていいのかな、これ。


 そんなことを考えていると、さっき私の首輪を外してくれた男の子が、こちらへ歩いてきた。


 小さい。


 私よりずっと小さい。


 男の子は私の前で立ち止まると、にっこり笑った。


「大丈夫?」


「……はい」


 私は頷いた。


 それから、ずっと気になっていたことを聞く。


「あの……あなたは?」


「ああ」


 男の子が少しだけ考えるような顔をした。


「俺はレン。レン・クロイツ」


「レン……」


「うん」


「……何歳ですか?」


「三歳」


「…………」


 私は固まった。


「……三歳?」


「そうだよ」


 もう一度、レンを見る。


 小さい。


 どう見ても小さい。


 でも。


 この子が、私の首輪を外した。


 私たちを助けてくれた。


 そして――。


 あのおじさんの腕と目まで治した。


「三歳……」


 思わず呟く。


 隣にいた髭のおじさんも、驚いた顔をしていた。


「三歳……だと?」


「うん」


 レンは不思議そうに首を傾げた。


「どうかした?」


「いや……」


 髭のおじさんが言葉を失う。


 私も何を言えばいいのか分からない。


 三歳。


 私より二歳も年下。


 なのに、この人は私を助けてくれた。


 不思議な子だった。


     *


 その後、私たちは別の場所へ移された。


 そこには、私たちと同じように助けられた人たちがいた。


 みんな、首輪を外してもらっていた。


 話を聞いていると、家族が見つかった人もいた。


 帰る場所がある人もいた。


 これからどうするか決まっている人もいる。


 でも。


 私には、帰る場所がない。


 お父さんも。


 お母さんも。


 どこにいるのか分からない。


 生きているのかも分からない。


 それでも。


 あの男の子のことが、頭から離れなかった。


 私の首輪を外した。


 私たちを助けた。


 そして、何でもないことのように笑っていた。


 そんなレンが、私のところへ来た。


「ミカフィーヌ」


「はい」


「これから、どうしたい?」


「…………」


 どうしたい。


 その言葉を聞いて、私は黙ってしまった。


 奴隷になってから。


 自分が何をしたいのかなんて、考えたことがなかった。


 言われたことをする。


 怒られないようにする。


 それだけだった。


 でも。


 今は違う。


 私は自由だ。


 何をしてもいい。


 どこへ行ってもいい。


 ……でも。


 行く場所がない。


 帰る場所もない。


 家族もいない。


 私は俯いた。


「すぐに決めなくてもいいよ」


 レンの声が聞こえる。


 顔を上げる。


「できることはするよ」


 優しい顔だった。


 私は少しだけ考えた。


 そして。


「……私は」


 口から出た言葉は、自分でも思っていなかったものだった。


「あなたのそばにいたい」


「…………」


 レンが私を見る。


「……本当にいいの?」


「はい」


 私は頷いた。


「あなたのそばにいたいです」


 レンは少しだけ笑った。


「そっか」


 そして。


「とても嬉しいよ」


 そう言ってくれた。


 胸の奥が、少しだけ温かくなった。


     *


「レン殿」


 今度は、髭のおじさんが声をかけた。


「ん?」


「改めて名乗らせてもらおう」


 おじさんは背筋を伸ばした。


「拙者の名はハボリム」


 そして、少しだけ頭を下げる。


「旅の剣士だ」


「ハボリムさん」


「うむ」


 ハボリムさんは、私を見る。


 それからレンを見る。


「拙者も、あなたを支えたい」


「……俺を?」


「そうだ」


 ハボリムさんは頷いた。


「失った腕と目を取り戻していただいた」


 自分の右腕を握る。


「この恩を受けたまま、立ち去ることなどできぬ」


「……本当にいいの?」


「もちろんだ」


 レンは少し驚いたような顔をした。


 でも。


 すぐに笑った。


「なら、とても嬉しいよ」


 私は二人を見ていた。


 レン。


 そして、ハボリムさん。


 少しだけ不思議な気持ちになる。


 さっきまで、何もなかった。


 家族も。


 帰る場所も。


 未来も。


 全部なくなったと思っていた。


 やなことも、たくさんあった。


 家族とは、バラバラになった。


 もう二度と会えないかもしれない。


 それでも。


 そばにいたいと思える人に、出会えた。


 今は。


 それが、とても嬉しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。