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異世界で使える、35歳営業マンのいい人戦略 ~せっかく生まれ変わったから、ハーレムくらい目指します~  作者: kammy


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第十七話 名探偵〇〇〇

「この三つなら、他より可能性が高そうです」


 俺が地図を指差す。


 ギルス様が頷いた。


「よし。では、この三か所を重点的に調べる」


「俺も行きます」


「いや」


 即答だった。


「レンは帰りなさい」


「え?」


「子供を危険な場所へ連れていくわけにはいかん」


「でも――」


「レン」


 父さんが俺を見る。


「今回の相手は、普通の犯罪者とは限らない。危険だ」


「……うん」


 確かに、その通りだ。


 俺が強いからといって、三歳児を捜査に連れていく理由にはならない。


「じゃあ、父さんが行くの?」


「ああ。ギルス様からも指示を受けている」


「そっか」


 俺は渋々頷いた。


「レンを家まで送ったら、そのまま俺は現場へ向かう」


「分かった」


 こうして俺は、父さんと一緒に屋敷へ戻ることになった。


     *


 馬車の中。


 俺は窓の外を眺めていた。


「父さん」


「なんだ?」


「候補の一つって、あのあたりだよね」


「ああ」


 俺は少し身を乗り出す。


 遠くに、古びた建物が見えた。


「ちょっと前を通ってみてもいい?」


「見るだけならな」


 父さんが御者に声をかける。


 馬車が少しだけ進路を変えた。


 建物の近くを通り過ぎる。


 そのときだった。


「……」


 何か聞こえた。


 俺は顔を上げた。


「父さん」


「どうした?」


「今、何か聞こえなかった?」


「……いや」


 父さんが耳を澄ます。


 俺も集中する。


「女の子の声……だと思う」


「悲鳴か?」


「たぶん」


 小さい。


 普通なら聞き逃す程度の声。


 けれど俺には聞こえた。


「戻って」


「レン?」


「あそこ」


 俺は建物を指差した。


「もう一回、近くを通りたい」


 父さんは少し考えた。


「……分かった」


 馬車が止まる。


「俺が確認する」


「うん」


 父さんが立ち上がる。


 俺も降りようとした。


「レンはここにいろ」


「えー」


「危険かもしれん」


「……はい」


 仕方ない。


 俺は馬車の中で待つ。


 父さんが建物へ近づいていく。


 すると――。


 裏口が開いた。


 一人の男が出てきた。


     *


「何か?」


 男が父さんを見る。


「この建物は、現在使われていないはずだが?」


「ええ。そうですよ」


 男は笑った。


「ちょっと荷物を取りに来ただけでして」


 ……怪しい。


 俺は馬車の中から男を見る。


 父さんも同じことを思ったのか、警戒している。


 そのとき。


 俺は少し汗をかいていることに気づいた。


 六月とはいえ、歩いた後だから暑い。


「ふぅ……」


 俺はポケットからハンカチを取り出した。


 汗を拭く。


 そして――。


 わざと男の近くに落とした。


「あ」


 俺はハンカチを見る。


 それから男を見る。


「おじさん」


「なんだ?」


「これ、落としましたよ」


 俺はハンカチを指差した。


 男が足元を見る。


「ああ、それは俺の――」


 男が反射的に答えかける。


 そして、口を閉じた。


「……」


 男の顔が引きつる。


「いや……」


 少し間を置いて。


「俺の母親の持ち物だった」


「…………」


 俺は男を見る。


 それからハンカチを見る。


 もう一度、男を見る。


「あれれー?」


 男の顔が強張る。


「おかしいぞー?」


「……何がだ」


「これ、おじさんが落としたんじゃないの?」


 俺は首を傾げる。


「なのに、なんでおじさんの物だと思ったの?」


「それは……」


 男が黙る。


 父さんが剣に手をかけた。


「レン」


「うん」


 俺は男を見たまま言う。


「お母さんの持ち物なんだよね?」


「あ、ああ……」


「じゃあ、なんで最初に『俺の』って言ったの?」


「…………」


 男の顔から血の気が引いていく。


(見た目は子供)


(頭脳は大人!!)


 ……これ、一回やってみたかったんだよな。


 前世で何度も見た展開。


 まさか自分でやる日が来るとは。


 父さんが一歩前へ出る。


「中を確認する」


「待て!」


 男が叫んだ。


 その声に反応して、建物の中から男たちが飛び出してきた。


「侵入者だ!」


「囲め!」


 狭い廊下。


 男たちが前後から押し寄せる。


「レン、下がれ!」


 父さんが叫ぶ。


 でも。


 俺は逆に走り出した。


「お、おい!」


 父さんの脇をすり抜ける。


 男たちの間を、一気に駆け抜けた。


「なんだ、こいつ!」


「速っ!」


 手を伸ばされる。


 でも、届かない。


 俺は狭い廊下を縫うように走った。


(早く見つけないと)


 捕まっている人たちがいる。


 そう考えると、止まっている暇はなかった。


 後ろから剣の音が響く。


「ぐっ!」


「な、なんだこの強さ……!」


 父さんだ。


 俺は振り返らない。


 大丈夫。


 父さんなら。


     *


「ワルーノさんを呼べ!」


「ワルーノさんがいる!」


「ワルーノさんなら大丈夫だ!」


 廊下の奥から、一人の男が現れた。


 身体が大きい。


 他の連中とは明らかに違う。


 構えにも隙がない。


「俺がワルーノだ」


(ワルーノ……)


(これもテンプレだねぇ)


「ガキ。ここから先には行かせねえ」


 ワルーノが剣を抜く。


 確かに強い。


 他の連中とは格が違う。


 俺が三歳児だったら、普通なら絶対に勝てない。


 でも。


 俺には魔力がある。


「ごめん」


「……あ?」


「時間ないから」


 俺は手を前に出した。


 風が渦巻く。


 次の瞬間。


 ワルーノの身体が吹き飛んだ。


 壁に叩きつけられる。


「…………」


 そのまま動かなくなった。


 後ろの男たちが固まる。


「ワルーノ……さん?」


「嘘だろ……」


「ワルーノさんが……」


(……テンプレだったな)


     *


 さらに奥。


 そこには鉄格子が並んでいた。


 中には、何人もの人がいる。


 怯えた顔。


 疲れ切った顔。


 そして――。


 一人の少女がいた。


 頭の上には、二つの耳。


 後ろには、細い尻尾。


(……猫耳だ)


 前世で読んでいた異世界もの。


 何度も見た光景。


 でも、実際に見るとやっぱり驚く。


 父さんが追いついてくる。


「全員、助け出す」


 俺は少女の前まで歩いていく。


 少女は怯えた目で俺を見る。


 首には、魔力の込められた金属製の首輪。


「これ……外れないの?」


 少女が小さく首を振る。


「……外れない」


「そっか」


 俺は首輪に手を触れた。


 魔力が流れている。


 俺も魔力を流す。


 構造を探る。


 絡みついた魔力を、一つずつほどいていく。


 少しずつ。


 少しずつ。


 そして――。


 最後の一箇所に魔力を流した。


 首輪が淡く光る。


 少女が目を見開く。


 そして。


 ――パキンッ。


 首輪が音を立てて外れた。

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