第七十一話「守る者の覚悟 」
そろそろ夏が来ますね。。。今年も暑そうで乗り切れるか心配です。
ちなみにこの世界で、今は春頃です。四季もあります。
翌朝。
評定の間には朔也、宗二、雷堂、陣内、晴仁、悠真、剛、舞、茜と全員が集まっていた。
机の上には北街道周辺の地図が広げられている。
陣内が地図の一点を指差した。
「場所が分かったぞ。」
部屋の空気が一気に引き締まる。
「昨日の夕方から斥候を出していた。」
「街道から北西へ入った山林の奥とのこと。」
「廃村跡を根城にしていると報告を受けた。」
悠真も頷く。
「俺が見つけた足跡の先と一致するな。」
宗二が腕を組んだ。
「人数は?」
陣内は静かに答える。
「五十人前後。」
雷堂が笑う。
「思ったより多いな。」
陣内は続けた。
「ですが全員が砦にいるわけではなさそうだ。」
「数人ずつ街道へ見張りを出している。」
宗二は地図を見つめた。
「見張りを無力化できれば、一気に本隊へ近付けるな。」
悠真も口を開く。
「砦といっても柵を並べた程度だ。」
「正面から攻めても落とせる。」
少し間を置いて続けた。
「だが、それでは何人か逃げる。」
「頭領を取り逃がせば、また同じことを繰り返すだろう。」
部屋は静まり返った。
ーーー
宗二はゆっくりと作戦を説明し始める。
「今回の目的は盗賊団の壊滅。」
「何人か倒して終わりでは意味がないな。」
地図へ指を走らせる。
「雷堂は正面から突入。」
「悠真は左手の林を回り込み、退路を塞ぐ。」
悠真は静かに頷いた。
「承知した。」
「剛は兵を率いて包囲を完成させてくれ。」
「逃げた者は一人も通さないようにしてほしい。」
剛も力強く答える。
「お任せください。」
宗二は最後に朔也へ視線を向けた。
「朔也は俺と一緒に、本隊後方より指揮をしてくれ。」
部屋が静かになる。
朔也は少しだけ考え込み、静かに首を振った。
「いや。」
全員が朔也を見る。
「俺も前へ出る。」
雷堂が眉をひそめる。
「危険だ。」
宗二もすぐに口を開いた。
「領主が倒れれば部隊は混乱するんだ。これまでとは違うぞ」
しかし朔也は真っ直ぐ皆を見つめた。
「昨日、商人のみんなと約束した。」
「この街道は俺が守るって。」
「その約束を、皆だけに任せたくない。」
「俺も自分の手で守りたいんだ。」
静かな決意だった。
ーーー
しばらく沈黙が流れる。
やがて悠真が口を開いた。
「俺は反対しない。」
雷堂が驚いたように振り返る。
悠真は続ける。
「戦場を知らぬ領主は判断を誤ることがある。」
「ただし。」
朔也を見る。
「俺が必ず傍につく。」
「あなたには指一本触れさせない。」
その言葉に雷堂も豪快に笑った。
「ははは!」
「なら俺も安心だ。」
「敵は俺が蹴散らしてやる。」
宗二は苦笑しながら息を吐く。
「仕方ないな、朔也。」
「これだけは忘れるな。絶対に無茶はするな。おまえはもう一人じゃないんだ」
朔也は笑って頷いた。
「ありがとう。」
ーーー
その日の昼。
城門前では兵たちが出陣の準備を進めていた。
鎧を身に着ける者。
槍を整える者。
弓の弦を張り直す者。
皆、静かに持ち場を確認している。
宗二は兵の装備を一人ずつ確認して回った。
「紐が緩んでいる。」
「締め直せ。」
「水袋は持ったな。」
「「はっ」」
兵たちは力強く返事をする。
舞と茜は荷車へ薬や包帯を積み込んでいた。
「怪我人が出てもすぐ治療できるように。」
「忘れ物はない?」
「大丈夫。」
「この子もいるしね」
「こん!」
「ふふ、頼りにしてるね」
二人と妖狐は顔を見合わせて頷いた。
その様子を城下町の領民たちも見守っている。
「領主様も出陣されるらしい。」
「どうか皆、無事で帰ってきてくれ。」
子どもたちも不安そうに兵たちを見送っていた。
ーーー
城門前。
朔也は兵たちの前へ立った。
まだ兵の数は決して多くない。
それでも全員が真っ直ぐ朔也を見つめていた。
朔也はゆっくりと口を開く。
「皆。」
静かな声だった。
「今回戦う理由は一つ。」
兵たちは耳を傾ける。
「白金領へ来てくれる人たちを守るためだ。」
「商人も。」
「移住してくる人も。」
「新しい人生を始めようとしている人も。」
「安心して、この道を歩けるようにしたい。」
少しだけ間を置く。
「危険な戦いになる。」
「だけど。」
「俺は皆と一緒に戦う。」
兵たちの表情が引き締まる。
雷堂が槍を高く掲げた。
「白金領のために!」
兵たちも一斉に武器を掲げる。
「おおっ!」
その声は城下町中へ響き渡った。
領民たちは深く頭を下げ、兵たちの背中を見送った。
ーーー
その頃。
山奥の廃村。
盗賊たちは奪った穀物を倉へ運び込んでいた。
「これだけあれば当分困らねえな。」
男たちが笑う。
その奥で頭領は地図を広げていた。
「次は三日後だ。」
部下が尋ねる。
「また白金領の商隊ですか。」
頭領は不敵に笑う。
「あそこは今、一番稼げる。」
「人も物も勝手に集まってくる。」
「こんな楽な獲物はない。」
盗賊たちは下卑た笑い声を上げた。
しかし。
その盗賊団へ迫る影があることを。
彼らはまだ知らなかった。
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