表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異形の領主 ~追放された俺は《決闘領域》で異形国家を築く~  作者: 葵 直虎
第七章 志とは、人を繋ぐ道標
PR
67/73

第六十七話「託された志」

翌朝。

白金城の鍛錬場。

雷堂は朝早くから木刀を振っていた。

力強い一撃。

鋭い踏み込み。


兵士たちは少し離れた場所で、その姿を見守っている。

その時だった。

「朝から精が出るな」

聞き覚えのある声に、雷堂が振り返る。


そこには悠真が立っていた。

「旅人か」

「眠れたか?」

「ああ」

悠真は静かに頷く。

「せっかくなら、お前の剣を見てみたい」

雷堂は木刀を一本放り投げた。

「一本どうだ」

悠真は木刀を受け取り、その重さを確かめる。

「……望むところだ」

兵士たちがざわついた。


噂の旅の武人。

そして白金領最強の武人。

二人が向かい合う。

「始め!」

兵士の合図と同時に雷堂が踏み込んだ。


鋭い一撃。

だが悠真は最小限の動きで受け流す。


「ほう」

雷堂の口元が緩む。


今度は悠真が動く。

速い。

無駄のない一太刀。

雷堂は笑いながら受け止めた。

木刀同士が激しくぶつかる。

乾いた音が鍛錬場へ響いた。

兵士たちは思わず息を呑む。

互角。


いや、それ以上かもしれない。

雷堂は豪快な剣。

悠真は無駄を削ぎ落とした剣。

まるで正反対だった。

数十合。

互いに一歩も譲らない。

やがて。

二人は同時に木刀を引いた。

静寂が訪れる。


雷堂は豪快に笑った。

「強いな」

悠真も小さく笑う。

「あなたも」


勝負はつかなかった。

だが互いに十分だった。


ーーー


その様子を見ていた朔也たちも鍛錬場へやって来る。

「すごかったね」

朔也が笑う。

「二人とも怪我はない?」

「問題ない」

雷堂は肩を回しながら答えた。

「久しぶりに楽しい相手だった」

宗二も悠真を見る。

「噂以上の腕前だな」

「お手合わせ、感謝する。白金領最強は伊達じゃないな」

悠真は短く頭を下げた。

しばらく沈黙が流れる。

やがて悠真は朔也へ向き直った。


「神谷朔也」

「はい」

「この数日、お前を見てきた」

「城下も」

「領民も」

「家臣も」

「そして、お前自身も」

朔也は黙って耳を傾ける。


「正直に言えば、最初は疑っていた」

「異形を受け入れる領地」

「流民と共に暮らす町」

「そんなものは理想論だと思っていた」


悠真は静かに続ける。

「旅を続ける中で、似たようなことを口にする領主は何人も見てきた」

「だが皆、現実の前で志を曲げた」

「民を守ると言いながら切り捨て」

「正義を語りながら私腹を肥やした」

「そんな者ばかりだった」

少しだけ笑う。

「だから、お前も同じだと思っていた」


朔也は苦笑する。

「そう思われても仕方ないね」

「俺もまだまだ未熟だから」

「だが違った」


悠真は真っ直ぐ朔也を見る。

「お前は理想を語るだけじゃない」

「自分で動く」

「失敗しても逃げない」

「民も家臣も、それを知っている」

「だから皆、お前を信じている」

部屋が静まり返る。


ーーー


悠真はゆっくりと膝をついた。

「お願いがある」

「俺を」

「白金領で使ってほしい」

兵士たちがどよめく。

舞は嬉しそうに笑った。

剛も目を輝かせる。

朔也は驚いた表情のまま固まっていた。

「本当にいいの?」

悠真は頷く。

「俺は志ある者へ剣を預けると決めて旅を続けてきた」

「ようやく、この剣を託したいと思える領主に出会えた」


朔也は少し照れくさそうに笑う。

「ありがとう」

「でも俺は完璧な領主じゃない」

「これからも失敗すると思う」

「それでも、一緒に歩いてくれる?」

悠真は力強く頷いた。

「もちろんだ」

朔也は右手を差し出した。

「よろしく」

悠真はその手をしっかり握る。

「こちらこそ」

「よろしく頼む」

雷堂が豪快に笑った。

「はっはっは!」

「また頼もしい仲間が増えたな!」

宗二も穏やかに微笑む。

「白金領もますます忙しくなるな」

舞も剛も嬉しそうに頷いた。

こうして白金領に、新たな家臣が加わった。

志に惹かれ。

自らの意思で集った武人。

その存在は、やがて白金領を大きく支える力となっていく。


ーーー


その頃。

遥か都。

副将軍・九条景親のもとへ、新たな報告書が届けられていた。

「白金領」

「旅の武人が一人、仕官したようです」

景親は書状へ目を落とす。

「人が集まり始めたか」

静かな笑みが浮かぶ。

「面白い」

「ならば、こちらも少し動くとしよう」

窓の外では冷たい風が吹いていた。

白金領へ集う志。

それを試す運命もまた、静かに動き始めていた。

面白かった!続きを読んでみたい人はぜひリアクション、コメントよろしくお願いします!

定期的に更新しますので、ぜひブックマークよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ