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異形の領主 ~追放された俺は《決闘領域》で異形国家を築く~  作者: 葵 直虎
第七章 志とは、人を繋ぐ道標
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第六十二話「集う人々」

ある日の朝。

城門の見張りをしていた兵が慌ただしく城へ駆け込んできた。


「朔也様!」

「どうした?」

「移住希望者です!」

朔也は思わず顔を上げた。

「もう来たの?」

「はい!」

「十数名ほどおります!」

隣にいた宗二が小さく息を吐く。

「噂が広まるのは思った以上に早いな」

「とりあえず会ってみよう」

朔也は席を立った。


ーーー


城門前。

そこには十数人ほどの集団がいた。

農民らしき男たち。

幼い子どもを連れた母親。

老人。

職人らしき男。

様々だった。

全員が不安そうな顔をしている。

朔也が近づくと、一人の中年男性が前へ出た。

「神谷朔也様でしょうか」

「そうだけど」

男は深く頭を下げた。

「お願いです」

「どうか我々を受け入れてください」

その声は切実だった。


事情を聞くため、一行は広間へ案内された。

話によれば、彼らは北方の村から来たらしい。

数年続いた不作。

重い税。

そして忠範による圧政。

生活は限界だったという。

「畑を耕しても食えない」

「働いても税で持っていかれる」

「このままでは冬を越せない」

誰もが疲れた顔をしていた。

朔也は黙って聞いていた。

そしてその話はどこか聞き覚えがあった。

かつての白金領だ。

忠範の時代。

自分たちが苦しめられていた村と同じだった。


「それでも他の領地へ行く選択肢もあったはずだ」


宗二が尋ねる。

中年の男は苦笑した。

「何度も考えました」

「ですが、どこの領地も似たようなものです」

「余所者は受け入れない」

「働き口もない」

「食料も足りない」

男は拳を握った。

「そんな時に聞いたんです」

「異形の領主が治める領地の話を」

「流民を受け入れた領地があると」

部屋が静かになる。

男は朔也を見た。

「だから賭けてみようと思ったんです」

「ここなら生きられるかもしれないと」

朔也は言葉を失った。


ーーー


話し合いの後。

朔也たちは評定の間に集まっていた。

「どう思う?」

朔也が尋ねる。


最初に口を開いたのは宗二だった。

「受け入れ自体は可能だ」

「人数も多くない」

「農民や職人もいる」

陣内も頷く。

「職人はありがたいな」

「復興にも役立つ」

雷堂は腕を組んだ。

「だが全員が善人とは限らん」

「しばらく様子を見る必要はあるな」

当然の意見だった。


朔也も頷く。

「うん」

「受け入れるなら責任を持たないといけない」

その言葉に宗二たちも頷いた。


ーーー


その日の夕方。

移住希望者たちは正式に受け入れを告げられた。

涙を流す者。

何度も頭を下げる者。

子どもを抱きしめる母親。

様々だった。

その中の一人。

職人らしき男がぽつりと呟く。

「本当に受け入れてくれるんだな……」

朔也は笑った。

「もちろん」

「ただし働いてもらうよ」

その言葉に周囲から笑いが起こった。

少しだけ緊張が和らぐ。


難民たちが休憩所へ案内される。

その手伝いをしていたのは剛だった。

重い荷物を運び、子どもを抱き上げ。

慣れない土地に戸惑う者たちへ声を掛ける。

流民たちの表情が少しずつ和らいでいく。

その姿を見た朔也は小さく笑った。

「すっかり頼れる家臣だな」

「まだまだです」

剛は照れ臭そうに頭を掻いた。


「また流民か」

城下ではそんな声も上がっていた。

「今度は北の村だそうだ」

「人が増えるのは良いが、食料は大丈夫なのか?」

不安を口にする領民もいる。


「皆さん、私もかつては流民でした」

剛が静かに言った。

「受け入れてもらえたから今の私があります」

「どうか彼らにも機会を与えてください

「そ、そうだな」

剛の一声もあり、その場はおさめられたが、白金領もまだ余裕があるわけではないのだ。

以前ほど強い反発ではない。

だが歓迎一色でもなかった。


その夜。

城壁の上。

朔也は領地を見渡していた。


朔也はふと晴仁の言葉を思い出した。

――白金領へ行けば生きられるかもしれない。

あの時は少し大げさだと思った。

だが違った。

実際に人々は希望を求めてここへ来ている。

その重みを改めて感じていた。


数日前までは噂だった。

だが今は違う。

実際に人が集まり始めている。

志に惹かれて。

希望を求めて。

白金領は少しずつ変わっていく。

そしてその変化は。

まだ始まったばかりだった。

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