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異形の領主 ~追放された俺は《決闘領域》で異形国家を築く~  作者: 葵 直虎
第六章 民とは、変革を背負う礎
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第五十八話「見つけた居場所 」

翌日。

剛は朔也に呼ばれ、城へと足を運んでいた。

案内された部屋には朔也のほか、宗二と舞の姿もある。

「そんなに緊張しなくていいよ」

朔也が笑う。

だが剛は背筋を伸ばしたままだ。

「領主様に呼ばれるなど初めてのことでして……」

その様子に舞が小さく笑った。

「朔也も少し前までは普通の村人だったんだけどね」

「舞」

「ふふ、ごめん」

少しだけ空気が和らぐ。

朔也は机の上に置いていた包みを差し出した。

「昨日の礼だよ」

「礼……ですか?」

「子どもを助けてくれただろ」

包みの中には新しい着物と少量の銀貨が入っていた。

剛は慌てて首を振る。

「そんなもの受け取れません!」

「受け取ってほしい」

朔也は真っ直ぐ言った。

「人を助けた者が正しく評価される領地にしたいんだ」

剛は言葉を失った。

やがて静かに頭を下げる。

「……ありがとうございます」

その声はどこか震えていた。


ーーー


しばらく雑談が続いた後。

朔也はふと尋ねた。

「剛」

「はい」

「東の領地では何があったんだ?」

部屋の空気が静かになる。

剛はしばらく黙り込んだ。

だがやがて観念したように語り始める。

「私の生まれた村は山の中の小さな村でした」

幼い頃の剛は今と同じように力が強かった。

薪運び。

農作業。

家の建築。

誰よりも働けた。

村人たちも最初は喜んでいた。

だが成長するにつれ周囲の目は変わった。

「怖がられるようになったんです」

ある日。

荷車がぬかるみに嵌まった。

大人たちが総出で引いても動かない。

そこへ剛が来て一人で持ち上げてしまった。

その瞬間。

歓声ではなく沈黙が広がった。

「化け物だ」

誰かがそう呟いた。

その日からだった。

村人たちは少しずつ剛を避け始めた。

異形。

災い。

人ならざる者。

そんな言葉を投げられるようになった。

それでも両親だけは違った。

「お前は人だ」

父はそう言った。

「誰より優しい子だ」

母も笑ってくれた。

だから剛は耐えられた。

だが数年前。

状況が変わる。

領内で異形狩りが始まったのだ。

「村の空気は一変しました」

昨日まで一緒に暮らしていた者たちが剛を差し出そうとした。

恐怖が人を変えた。

そして。

ある夜。

父は剛を山へ逃がした。

「生きろ」

最後に聞いた言葉だった。

剛は拳を握る。

「それ以来、父と母には会っていません」

部屋が静まり返った。


「その後は流民になりました」

剛は続ける。

どこの領地へ行っても同じだった。

異形だと分かれば追い出される。

働いても。

人を助けても。

結果は変わらなかった。

だから白金領へ来た時も期待していなかった。

「ですが」

剛は顔を上げる。

「ここは違いました」

朔也を見る。

「領主様も異形だった」

「誰も私を化け物扱いしなかった」

「だから驚いたんです」

舞が優しく微笑む。

宗二も静かに聞いていた。


しばらく沈黙が流れる。

やがて朔也が口を開いた。

「剛」

「はい」

「これから白金領で力を貸してほしい」

剛の目が大きく開く。

「まだ復興は始まったばかりだ」

「人手は足りないが、守るべき人は増えていく」

「だから一緒にやっていこう。剛の力が俺には必要だ」

真っ直ぐな言葉だった。

剛は立ち上がる。

そして深く頭を下げた。

「この命」

声が震える。

「この命、朔也様にお預けいたします」

朔也は少し照れ臭そうに笑った。

「そんな大袈裟な」

だが剛の表情は真剣そのものだった。


ーーー


その日の夕暮れ。

剛は城を後にした。

「お父さん、お母さん、ついに受け入れてもらえる場所に巡り会えたよ...」

空を見上げる。

故郷を失ってから初めてだった。

自分にも居場所があると思えたのは。

そして、白金領に新たな家臣が加わったことを。

まだ多くの領民は知らなかった。

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