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異形の領主〜追放された俺はユニークスキルで戦国を駆ける〜  作者: 葵 直虎
第六章 民とは、変革を背負う礎
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第四十七話「忍び寄る影」

城下町から少し離れた荒れ寺に、夜陰に紛れて数人の男たちが集まっていた。

その中央に座すのは、かつて犬飼忠範に仕え、白金領で領民を苦しめた悪名高き家臣のひとり——加納時貞(かのう ときさだ)であった。


「……忠範様が討たれてからというもの、俺たちは犬にすら蔑まれる始末か」

時貞の低い声に、残党の一人が苦々しくうなずく。


「だが、あの神谷朔也とかいう若造が新しい領主だと?笑わせる」

「民と一緒に鍬を振るっているだと。領主としての振る舞いが全く分かってないただの農民ではないか」


嘲笑が漏れる。

しかし時貞は笑わなかった。暗い瞳には、憎悪の炎が宿っている。


「笑うな。その小僧はどうでも良い。久遠院家の小僧、雷堂こそが俺たちの仇だ。あの男が裏切ったことで、俺たちの生活は奪われた……この恨み、必ず血で償わせる」


場の空気が凍りつく。

やがて時貞は懐から一枚の紙を取り出した。それは城下町と砦を記した地図であった。


「今は動く時ではない。あの忠範様が討死されたのだ... 相手の力を知らずに牙を剥けば、犬死にするだけだ。まずは奴らの動きを探る」

「そうですな。ではどのようにしましょうか」


男の一人が時貞に尋ねた。


「おい、出てこい」


合図とともに、奥から黒装束の男が一人、膝をついた。

その者は、時貞の飼っている忍団の一人であった。


「なっ... どこから出てきた... !?」

「この地図に奴らの拠点となる砦が書いてある。砦の中にある神谷朔也と雷堂の居所を探れ。砦の出入り、砦内の建物すべてを見てこい。もちろん、人目に触れぬように潜り込め」


驚いている男たちには触れず、時貞は淡々と指令を告げた。


「御意」

忍びは低く答え、闇へと消えていった。


———


その夜。

砦はいつものように静かに灯がともり、領民や兵たちは交代で眠りについていた。

忍は屋根伝いに素早く駆け、忍び足で砦の中へと入り込む。


倉庫の食糧、武具庫の警備の薄さ、見張りの交代の刻限……影のように動き、すべてを記憶に刻んでいく。


「……ふん。これならすぐにでも潰せる」

忍びは小さく呟き、砦の奥、広間の前へと近づいた。


だが、その時。


「誰だ」


背後から鋭い声が飛んだ。

反射的に身を翻した忍の前に、雷堂が立っていた。月光を背にした雷堂は、まるで雷神のようであった。


「……しまっ」

忍は即座に煙玉を投げ、闇に紛れようとした。だが雷堂の動きはそれを上回った。


「逃がすか!」


剛腕が一閃し、煙の中から飛び出す影をがっちりと捕らえる。忍びは必死に刃を抜こうとしたが、雷堂の速さの前では無力であった。


「この腕を噛み千切ってでも……!」

「戯けが!」


雷堂はそのまま忍を地に叩きつけ、気絶させた。そのまま、懐から紐を取り出して縛り上げた。


「ふん……闇に潜もうと、俺の目はごまかせん。さて、どこの犬の回し者か……おそらく犬飼派の残党たちだろうが、じっくり聞かせてもらおうか」


雷堂の眼光は獲物を仕留めた獣のように鋭く輝いていた。


———


その晩、雷堂が呼びかけ、朔也と宗二が集まった。


「先ほど、こいつが砦内を探っているのを見つけ、縛り上げておいた。おそらくだが、犬飼家の残党の仕業だろう。あいつらが何か仕掛けてくる前に叩くべきだな」

「やはり残党がいたか... 早めに対応しないとな」


雷堂が状況を伝え、宗二も同意するように頷いた。


「雷堂さん、残党ってどのくらいいるのか知っていたりしますか?」

「おそらく、多くはないだろう。特に気を付けておくのは一人だな。加納時貞というが、忠範への忠義も厚く、家臣の中でも特に重宝されていた。あいつは、人を仲間につけるのが上手い... すぐにでも動いた方が良いだろうな」


「...わかりました。今、白金領は豊かさを取り戻し始めてきたんだ。邪魔が入る前に潰したい。二人とも、それぞれ動いて欲しい」


「おう」「もちろんだ」

宗二と雷堂が頷いた。


「まずはこいつが目を覚ましたら、尋問にでもかけて情報を得られるか確かめてみよう」


「雷堂さん、お願いします」


白金領の再生が進みつつある一方で、その裏には確かに不穏の影が動き出していた。

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