第四十五話「荒れ果てた領地」
白金城に新たな旗が掲げられて数日。
朔也たちは城ではなく、未だ砦を拠点とし、今後の白金領について思案していた。
「今、白金領には問題が山積みだ...何から手をつけていけば良いんだ」
「朔也、もう少し冷静になってみるんだ。経験ないこととはいえ、これからの白金領はお前が統治していくんだからな」
「雷堂さん、分かってるよ..」
朔也、雷堂、宗二を中心に議論は続くが、終わりが見えない状況が続いていた。
「少し休憩したらどうですか? 戦が終わってすぐにこんな考え続けても体に悪いですよ」
お茶を持ってきた舞が言った。
「舞、ありがとう。それもそうだな。一度、休もうか」
と雷堂が言い、宗二もうなずいた。
休憩した後に、朔也が再開しようとしたが、宗二が制止して話し始めた。
「朔也、お前はもっと白金領を自分の目で見て、領民のことを知ってくると良い。茜と舞も付いてってくれ」
「え、どうしてですか?白金領はこんなにも貧しいのに、そんなかとしていて何の意味があるのか分からないよ」
「お前は、村で生まれ、村で育った。この領地全体のことについては全くわかっていない。だからこそ、少しずつで良いから、白金領を歩き回り、見聞を深めることが大切なんだ」
宗二はまっすぐ朔也の目を見て、伝えた。
「.... 確かに、俺はこの白金領のことがあまり分かっていない。ここ数日何をしたら良いのか考えたけど、結局は村であったことしか考えられていなかった。
宗二さんの言うとおりだ。」
納得した表情で朔也は言った。
「よし、! 茜、舞、一緒に城下町へついて来てもらえる?」
「もちろん、行こう朔也」
「城下町、久々に行くな〜」
—————————
朔也は茜、舞を伴い、城下町に向かった。
城下町はかつての賑わいを失い、通りには空き家や壊れた屋台が目立つ。
市場には店どころか商品もあまり並ばず、人々は痩せた顔でわずかな食料を売り買いしていた。
「えっ、なんか昔と大違いなんだけど...」
舞が目を丸くして、つぶやいた。
「これが……忠範が残したものか」
朔也は胸の奥に重く沈むものを感じた。
茜が、道端で藁を編む老婆に声をかける。
「おばあさん、食べるものは足りていますか?」
老婆はかすかに笑った。
「戦が終わっただけでもありがたいことだよ。あなたたちのおかげよ。お腹は空いたままだけど、そんなのこれまでに比べたら訳ないさね」
その言葉に、舞が唇を噛みしめる。
「おばあさん、俺たちはみんなが豊かに暮らせるようにするから...それまで待っていて欲しい」
朔也が覚悟を持った目で、
「...ふふ。ありがとね。待ってるわ」
おばあさんは少し涙を流しながらも、笑いながら返してくれた。
さらに郊外の村へ足を伸ばすと、荒れ果てた田畑が広がっていた。
雑草が生い茂り、水路は枯れ、耕す人の姿はほとんどない。
重税と徴兵に苦しんだ結果、人々は畑を捨てざるを得なかったのだ。
「通りで、お店や商品が少ない訳だよ... 誰も畑を維持できていないじゃん」
舞があまりの惨状に絶句した。
「……土地は痩せているな。だが、よく見てみて。まだ生き返らせられる」
朔也が土を手に取り、分析するように呟いた。
村の片隅では、骨ばった腕の子どもが干からびた麦の穂を抱えていた。
その姿に、朔也の心は強く締めつけられる。
「俺たちは戦に勝った。だが、それだけじゃ終わらない」
朔也は子どもに近づき、膝をついて目線を合わせた。
「必ず、この土地を豊かにしてみせる。だから、一緒に生きていこう」
子どもは驚いたように瞬きをし、やがて小さく頷いた。
「茜、舞... 一旦砦に帰ろう。実際に目で見て、何をしたら良いのか分かってきた気がする」
子供に手を振り、3人は砦に戻った。
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砦から戻った翌日、朔也は雷堂と宗二に向かって伝えた。
「俺は、豊かな領地にしたいと言っていたけど、具体的には何が問題なのかあまり分かっていなかった。
今回、城下町に行って俺は皆が笑顔になるためにはまず食料不足を何とかしないといけないなと強く感じたよ。だから、まずは畑などを昔のように豊かにしていこう!」
「...良かろう!やはり目で見て感じたことが一番だ。領内への連絡や他領とのやり取りは一旦俺に任しておけ」
雷堂は満足した笑みで、朔也に向かって大きくうなずいた。
「ありがとう!よし、みんなやるぞ!」
「「おぅ!」」




