第四十四話「新たなる主」
戦場の喧噪が収まり、夜風が吹き抜けていった。
忠範を討ち果たしたその瞬間から、白金の地に流れていた長い恐怖の鎖は断ち切られた。
雷堂、宗二、茜、舞、晴仁、シン……仲間たちは皆、満身創痍でありながらも、その瞳に確かな誇りを宿している。
「一度、休んでから領民たちに顔を出し、領内に知らせていくとするか。幸いここには浴場などもある。ここはもう俺たちの城だ、自由に使えば良い」
雷堂がそう告げると、皆はゆっくり頷き、各々休み始めた。
夜が明け、白金城から出てきた一行を、民たちは傍目から見ていた。
犬飼家の圧政に苦しみ続けた人々の目には、驚きと戸惑い、そして僅かな希望が混じっていた。
「あの雷堂様がついに謀反を起こし、忠範を討ち取ったそうじゃ...」
「これが……犬飼を討った若き将か」
ささやきが群衆を駆け抜ける。
一方で、
「あの目と髪は... 異形の者ばかりだ...!」
「領主が代わったとしても平和な日々は来ないのかもな...」
異形の者に対して、引け目を感じる民も多くいた。
広場に立った朔也は、傷ついた鎧を纏ったまま、民衆を見渡した。
その小柄な姿は華奢で、可憐ですらある。だが、その声には揺るがぬ理知と気迫が宿っていた。
「白金の民よ――! 俺たちは犬飼の暴を討ち、この地を取り戻した!」
声が響く。ざわめきが止まり、すべての視線が朔也に注がれる。
「皆は、俺の髪や目の色を見て、異形の者と呼び、遠ざけてきた... しかし、これも忠範が領民が力を持つのを恐れたが故のことだ。俺たちのことを不安に思わず、全員で力を合わせてこの白金領を生まれ変わらせよう!」
「だからこそ、戦いはまだ終わっていない。
剣で血を流す戦ではなく、飢えと荒れ地に立ち向かう、新たな戦だ。
俺たちは犬飼家のように皆を苦しめたりはしない。皆と共にこの地を築き直していきたい!」
その言葉に、民の間から嗚咽が漏れ、やがて「朔也様……!」と声が上がった。
誰かが膝をつき、次々と人々が頭を垂れる。
宗二は「これで俺たちを受け入れてもらえたな」と深く頷く。
茜と舞は目を潤ませ、互いに手を取り合っていた。
雷堂は腕を組み、「なかなかやるな...。あとはあいつらか」と少し思案を巡らせた。
民の多くは朔也を受け入れた一方で、雷堂が懸念とするような旧忠範派がいた。
「犬飼様の血を引く者はいまだ生きているはずだ」「若造に領地を任せられるか」と、小さな囁きが陰に潜む。
その視線は冷たく、やがて反乱の火種となることを誰もが予感していた。
こうして朔也は、白金領の新たな主として迎えられた。
だがその道は、まだ決して平坦ではない。
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