三十七話「広がりゆく狼煙」
初投稿です。
雷堂邸を拠点とした朔也たちの動きは、徐々に広がりを見せていた。茜と舞が各地の村を巡り、宗二が綿密に計画を練っていた。
さらに、蒼牙団は茜や舞の話を聞いて砦に来た若者たちの相手をしていた。
「おい!お前たち構えが甘いぞ。槍は安定感が大切だから、まずは構えがしっかりできるようになるんだ」
陣内は大きな声を出し、若者たちに槍の扱い方を指南していた。
「あなたは、もう少し握る力を緩めるのよ。振る時に力を込めて!」
「おっ!お前、良い振りだな。その調子だ」
他の蒼牙団の面々も、陣内と共に教えていた。
「よしっ!一旦休憩だ」
「ようやく休憩か... いやぁ、きついっす... 元々、畑で使っていた鍬とは全然ちがうなぁ」
指南を受けていた一人が息を切らしながら、言葉を漏らす。
「はは、そりゃそうだ。野菜と違って、相手は人だぞ。待ってくれないからこそ、正確に、速く武器を振れるようにならないとな!だからこその訓練だ」
陣内は若者の言葉を笑い飛ばしながらも、若者の肩を叩いて激励した。
———
だが、動きがあるのは彼らだけではなかった。
雷堂邸の門番が息を切らして走り込んでくる。
「報告! 北の峠道から、忠範軍の斥候と見られる部隊が接近中!」
「数は?」宗二がすぐに問う。
「二十名ほどの小規模部隊です。ただし、完全武装。こちらの動きを探っている様子!」
雷堂はすぐに立ち上がった。
「こちらの兵を割くわけにはいかん。だが、放置すれば屋敷の場所も、民の動きも晒される……」
「――俺が行く」
名乗りを上げたのは、晴仁だった。
その横には、黙って佇むシンの姿もある。
「この間、助けられただけじゃ、格好がつかねぇ。今度は、俺が守る番だ」
意気込む晴仁の隣に、同じくやる気に満ち溢れ、目を細めるシン。
宗二は二人の判断を承認。加えて蒼牙団と特に優秀な若者数名も加勢し、小規模な迎撃隊を組んだ。
⸻
日が傾き始めた頃、山道に小さな戦火が上がる。
草をかき分け、動きを潜めながら近づく敵。
それを逆に利用し、晴仁たちは先制を仕掛けた。
「悪いな、こっちは先に気づいてたんだ!崩掌っ!」
晴仁の拳が風を裂き、敵の前衛を薙ぎ払う。
「ガオッ!」
シンの爪が一閃、忠範兵の盾ごと敵を叩き潰す。
「す、すげぇ... 俺たちもあの人たちと一緒に戦えるのか!」
若者の一人が、晴仁とシンの強さに感銘を受けるかのように、称えた。
「おい!お前たち、よそ見するな!くるぞ!」
蒼牙団の援護も冴え、二十人ほどの斥候部隊は短時間で壊滅した。
だが、その中の一人が発した言葉が、気になるものだった。
「……雷堂の屋敷、砦跡、もうすぐ本隊が向かう……」
本隊。つまり、忠範は動き始めている。
———
帰還した晴仁たちの報告を受け、雷堂たちはすぐに戦評を交わした。
「おそらく、忠範はまだこちらの兵力を見誤っている」
宗二が地図の上を指差す。
「だからこそ、今は動かず”溜め”の時だ。雷堂が上げてくれた狼煙を全ての街に行き届かせるんだ。
「狼煙を..? そんな時間ある?」
朔也がつぶやく。
「あぁ、忠範はまだ余裕があると思い、偵察程度に済ませているからな。そして、溜め切ったら動き始める必要があるな。そこではこちらの赤色の狼煙を使おうと思う」
宗二は用意していた狼煙を見せながら続けた。
「こちらの旗を立てる時がこの赤色の狼煙だ。狼煙を上がる場所はできる限りこの地の真ん中が良いな」
「それでは、久保ノ町はどうだ?まだ忠範の支配が甘く、民もこちら側につきやすいだろう。久保ノ町と手を組めないか、話に行くのが良いな」
雷堂は静かにうなずく。
町の名は――久保ノ町。
山のふもとに位置する小さな町。忠範の目が届きにくく、雷堂の名を今なお信じている者が多い場所だった。
「かつて、俺が守った町だ。……あそこなら、希望の火種になりうる」
「では、狼煙はそこで上げよう」朔也が言った。
雷堂は、かつての剣を手に取り、重々しく頷く。
「久保ノ町にて、我らが”真の旗”を掲げる。その時こそ、白金に新たな風が吹かせようぞ」
———
次の日、久保ノ町へ向かう出発に向けて、蒼牙団のメンバーが馬を連れて、砦の入り口に並んだ。
「お前たち、頼むぞ!久保ノ町は俺の名を出せば、きっと話を聞いてくれるはずだ」
雷堂が陣内に向けて言った。
「おう!俺たちはずっと待ってた。こういう瞬間を」
町の名も、声も、風も――すべてが、変革の兆し。
誰もが、その時が近づいていることを感じていた。
――次なる狼煙が、白金の空を染め上げる日は近い。
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