三十六話「声を届ける者たち」
初投稿です。
雷堂が反旗を翻すと各地に伝達した翌日。
まだ薄曇りの空の下、雷堂邸では動きが活発になり始めていた。宗二の提案により、各地に散っていた部下や志ある民を集め、次なる戦いの基盤を築く準備が始まっていた。
「宗二よ、各地には俺と旧知の中であるものや、忠範に対して不満や不信感を募らせているものなど様々だが、全員が全員、言伝だけで動いてくれるとは思えぬな...」
「それもそうだな... まずは、俺たちの声や想いを届け、仲間となるものを確実に増やしていこう」
宗二が地図を広げながら言った。
「そもそも、白金領の貧しさを引き起こしている忠範の圧政に不満を抱えている民は多い。だからこそ、俺たちが圧政から解き放つ『希望』になった瞬間、人はついてくる……それを、俺たちが直接話していく必要があるだろう」
「私たちが?」
茜が首をかしげると、宗二はうなずいた。
「特に、茜や朔也のような弱きものの気持ちをわかってあげられる者が話していくことに意味がある。白金領では異形の者は声をあげられず、差別の対象にされやすい存在だった。だが今は違う。そういった弱さに向き合ってきた二人だからこそできることだ...」
宗二は茜への期待を込めて話した。
「...朔也はともかく、私は人前で話したことなんかありませんし、本当にできるんでしょうか...」
茜は自信がなさそうに答えた。
「茜...!お前はもう立派な俺たちの仲間だし、貴重な支援ができるんだ。村にいた頃のお前とはもう違うんだ... もちろん、見知らぬ人からは見た目だけで何か言われるかもしれないが、これまでやってきたことや想いをしっかり伝えてやれば、話を聞いてもらえるはずさ」
「...わかりました。そうですね、もうあの時の私とは違いますもんね。私や、朔也の想いがどれほど伝えられるか自信はないのですが、精一杯やります!」
茜は覚悟を決め、こぶしを強く握り、返事をした。
「話はついたようだな... 朔也が直接話に行くことは難しいだろうから、舞も同行させよう... 舞、頼めるか?」
「わかりました。茜ちゃん、よろしくね」
――そして、二人は村々をまわることとなった。
⸻
最初の村では、茜たちは警戒された。
村人たちは「雷堂が裏切った」との忠範の布告を信じていたからだ。
「本当に、雷堂さん含めて私たちは、みなさん、民のために戦おうとしているのです。……信じていただけないですか?」
「私は、みなさんも気にされている通り、この橙色の髪が他の人と異なることから元々いた村から追放されました... その当時は、村の人たちが悪いと思い込んでいたのですが、今はわかります... 忠範の圧政で、村が貧しく、子供全員を養えることができなかったと...」
「雷堂さん、そして、朔也や私たちはそんな忠範の圧政をなくし、弱きものたちが平和に暮らせるようにしたいと思っているんです!」
「お前さん...」
茜が必死に語りかけると、最初は冷ややかだった目が、徐々に和らいでいった。
「……あんた、独りは寂しかったんじゃないかね...」
ひとりの老婆が訊ねた。
「はい。でも、いまは……志をともにする仲間がいます。だから、もう何も怖くはありません」
その言葉に、老婆は深くうなずいた。
「なら、村の若いもんに声かけてみよう。……雷堂様は、あたしの娘を守ってくれたことがある」
村人たちが少しずつ協力を申し出始める。
舞と茜は、仲良くなった子どもたちと笑い合う。
その姿が、風に乗って噂になっていった。
⸻
茜と舞が村を回っている一方で、宗二は屋敷で忠範軍の戦力分析を進めていた。
「兵の多くは徴兵された者だ。家族の生活のために仕方なく従っている……という話も多い。寝返りの余地はある」
彼はそう言って、朔也に地図を指し示す。
「いくつかの集落では、忠範の支配がほぼ形骸化している。ここを取り込めば……戦う前から勝機は作れる」
「勝つだけではない。……勝って、変えたい。だからこそ、できるだけ戦いでの被害は少ないようにしよう」
朔也は静かに語った。
「この地に生まれた誰もが、自分の顔や生まれで否定されない場所を。……俺は、そんな国を作りたい」
宗二は微笑を浮かべ、肩を叩いた。
「なら、戦略は任せてくれ。お前の想いが届くよう、俺が道を切り拓こう」
———
日が落ちる頃、茜と舞が村から戻ってくる。
「……話、聞いてくれました。少しずつ、協力してくれる人も増えてます」
「子どもたちが、“また来てほしい”って……言ってくれてたよ」
朔也はその報告に深くうなずいた。
民の声が、少しずつ風を変えはじめている。
雷堂の名前とともに、並び始めた名が、「神谷朔也」だった。
朔也は小さくつぶやく。
「……ついにこの白金領、そして俺のような者を救えることができるもしれない」
その言葉に、誰もがうなずいた。
心に灯った声は、やがて大きな叫びとなって白金を揺るがす。
――静かに、確かに、戦の鼓動が響き始めていた。
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