第三十五話「久遠院家の新たな始まり」
初投稿です。
雷堂の屋敷に静寂が戻り、各々が休みを取ろうとしていた。
朔也は、まだ寝床に着く気が起きず、縁側に向かった。
そこに一人の影があった。
月夜に照らされながら雷堂は縁側に座り、遠くを見つめていた。
「…久遠院家の名も、今日で終わりかもしれん」
その隣に朔也が座り、ゆっくりと問いかけた。
「雷堂さん、盗み聞きするつもりてはないけど、もう少し話しでもどう...? 今の言葉を聞くと、もしかして今回の行いに後悔してる...?」
「朔也いたのか... まあ、後悔なんて悔やんでも悔やみきれないほどこれまでしてきた... 今回もその一つなだけだ。さっきの言葉は忘れてくれ... なに、今のは先代に対するちょっとしたすまなさがあるだけだ。」
雷堂は笑った。だがその笑みは、どこか清々しく、決意に満ちていた。
「そうなんですね... 雷堂さんの父親ってどんな方だったんですか...?」
朔也は、ふと気になって雷堂に尋ねた。
「そうだな... 少し長くなるが良いか?」
「もちろん、いくらでも聞かせて...!」
「...そうか、なら話そう」
それから、雷堂は、先代の父親のこと、自身の幼少期に見た目が原因で周りから避けられていたこと、その幼少期の自分を守ってくれた父親の姿に憧れていること...様々なことを朔也に話した。
「—— そして、俺が当主になってしばらくしてから、舞を出会ったんだ。あいつの家はな...」
「雷堂さま、朔也と楽しそうに話してますね。私にも聞かせてください」
舞がそこにやって来て、雷堂の横に腰を下ろす。
「なに、今からちょうどお前と出会った時のことを話そうとしていたんだ。ほら、俺と出会ってすぐの頃なんか、ずっと俺の後ろをついてきてた...」
「雷堂さま、そんなことまで話す必要ないんじゃないですか..!? はい、もう夜遅いのでそろそろ寝床に行きましょうか」
舞は自分の話をされているとは思っておらず、驚いて話を止めるように雷堂の肩を叩いた。
「そうか.... ここからが良いところだったのだが.. 仕方ない。ただな、朔也、最後にこれだけ言わせてくれ」
雷堂が朔也に顔を向けて話した。
「俺は、信じてる。お前が新しい何かを作るなら、それに賭けてもいいと。あの時、砦で俺に一打ち浴びせた時から俺はお前の可能性に白金領の未来を賭けたいと思うようになった。だからこそ、あの時忠範には正直に報告したし、今回謀反という扱いになったことにも一切の後悔はない」
雷堂の澱みなく、そして朔也への想いを込めた言葉に朔也は心を震わせた。
「そうですよ。私も朔也さんと、雷堂さまと一緒にこの白金領を変えてみせます。これからも末永くよろしくお願いします」
舞も続けて、朔也に向けて言った。
「なっ、舞...!? お前を朔也のところにいかせたのはあくまで見張りのはずだ。嫁がせるつもりはないぞっ..!」
舞の突然の宣言に雷堂は驚いたが、舞が雷堂の方に顔を向けて伝えた。
「雷堂さま……あたしは、今でも、久遠院家の一員でいられて、誇りです。今回も私の勝手で、雷堂さまの命が奪われるところだったのに... 何もなかったかのように助けてもらって... 本当に...」
舞は涙を堪えながらも、今回の件についての想いを吐露し、雷堂は何も言わず、ただ舞の頭を軽く撫でた。
「お前は俺の妹だからな...。家族にいくら迷惑かけても良いに決まってるだろ...」
———
夜が明け、朔也たちは次の動きに向けて話し合う。
屋敷周辺の修復、物資の確保、領民との連携――やるべきことは山積みだった。
宗二はすでに、手持ちの地図と情報を広げながら忠範領主軍の戦力を分析し始めていた。
蒼牙団は偵察と伝令に分かれ、周辺の動きを探るべく出発する準備を整えていた。
そして翌朝。
一羽の鳥が、遠くの空へと羽ばたいていく。
それは、雷堂の旧部下がいる各地への伝令だった。
「久遠院雷堂、忠範に反旗を翻す」
それは白金領を揺るがす、狼煙の始まりだった。
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