第二十六話「交錯する蒼刃」
初投稿です。
朝霧の残る山道。
朔也たちは森を抜け、山間の街道を進んでいた。新たに加わった虎のようなケモノ——シン——は、人の姿で静かに列の後ろを歩いている。
「……本当に、大人しいよね」
茜がぽつりと呟くと、舞が微笑んだ。
「もともと人を襲ってたって聞いてたけど、今の彼を見ると信じられないよね」
「きっと、居場所がなかっただけなんだろうな」
「でも、妖獣が懐くなんて聞いたことないよ。それこそ、昔話の”龍姫”みたいだね。大和ができるよりずっと昔、妖獣の王であった龍に育てられ、今まで人間と敵対していた龍との架け橋になったっていう話の。そこで、王と結婚ししたことで、龍姫と呼ばれるようになったっていう......」
「龍姫は幼い頃に龍と共に暮らしたことで、おれはシンと同じようにすみかをほかのものによって失ったという境遇が心を結びつけたのかもな」
朔也がつぶやいたそのときだった。
──金属がぶつかる音。叫び声。
一行は顔を見合わせると、すぐさま駆け出した。
木々を抜けた先には、山賊に囲まれている旅人たちがいた。
逃げる隙もなく、追い詰められている。
「茜、援護を」
「うん、式神展開。狐よ、加護を!」
白狐の力が朔也たちを駆け抜け、動きが一気に鋭さを増す。
舞と晴仁が前線に出て山賊を牽制し、朔也が一気に切り込む。
素早さを得たシンは一閃し、二人の山賊を一瞬で昏倒させた。
これまでの修羅場をくぐりこえ、新たな仲間を加えた朔也たちは大きく成長していた。
戦いが決着を迎えたその直後——
木の陰から、新たな気配が現れた。
「……やれやれ、また先を越されたか」
森の奥から姿を見せたのは、六人の男女の一団。
いずれも旅人とは思えぬ鋭い眼光と武装をまとっていた。
中央に立つ、切れ長の目をした男が前に出る。
「俺たちは蒼牙団。山賊の掃討でこのあたりに来ていた。まさか、先に片付けられるとはな」
「蒼牙団……?」
朔也は聞いたことのある名に目を細めた。
実力者だけで構成された、傭兵とも義勇兵ともつかない精鋭の集団。噂はあちこちで聞かれていた。
「お前たちも、何かの任務で動いてるのか?」
「……いや、旅の途中だ。ただ、困っている人を見過ごせなかっただけだ」
朔也の言葉に、蒼牙団の一人が小さく笑った。
「このあたりじゃ、ちょっとした噂になってるんだぜ? 領主の兵を蹴散らして、砦を守り抜いた者たちがいるって。特にリーダーは若い男で、噂ではあの雷堂にも一目置かれているって話だが……もしかして、お前たちか?」
「……どうだろうな」
はっきりとは答えない朔也に、蒼牙団の面々は目を細めたが、敵意はない。
「今の発言に気を悪くしたならすまない。噂が本当か、確かめるのは正直どうでも良いんだ。」
と言って、蒼牙団の団長らしき者が頭を下げた。
「俺たちも6人でこれまでやっていたのだが、正直、この白金領でやっていくためには限界があると感じてきてな......村は貧しく、報酬などもその日食べるくらいの野菜などを無理してくれたりするんだ。俺たちはこの領を変えないと、結局のところ意味がないんだと考えている。そこで、少しお前たちと一緒に行動させてもらえないか。」
朔也は一瞬だけ考え、頷いた。
「わかった。共に行こう。俺たちも新しい仲間を見つける旅に出ていたんだ。ここにいる晴仁も旅の道中で出会ったんだ」
「かたじけない。しばらく、一緒にいさせてくれ。俺たちは旅などには慣れてるから迷惑はかけないつもりだ。」
こうして、蒼牙団と朔也たちは、同じ旅路を歩み始めた。
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