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異形の領主〜追放された俺はユニークスキルで戦国を駆ける〜  作者: 葵 直虎
第三章 遠征とは新たなる邂逅
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第二十四話 「咆哮、森より来たりて」

初投稿です。

山あいの道を、朔也たちは進んでいた。

澄んだ空気に草の香りが混じる。空には薄雲が流れ、心地よい風が吹いている。


「……静かすぎるな」

先頭を歩く晴仁が、足を止めた。


「どうしたの、晴仁?」

舞が明るく声をかけるも、晴仁は険しい顔のまま、前方の森を睨んでいた。


「鳥とかの声がしねえ。……あまりにも静かすぎないか」


「それって、つまり……」

茜の声がかすかに震えた。


朔也は、周囲に意識を集中する。

――感じる。微かに、しかし確かに、遠くで揺れる殺気のようなもの。


「近くに、何かがいるな。行ってみよう」



程なくして、一行は荒らされた村跡に辿り着いた。


倒された柵、引き裂かれた屋根、地面には大きな爪痕。

血の跡もわずかに残っているが、死体は見当たらない。住民は逃げ延びたのだろう。


「でっかい足跡……これは、獣?」

舞がしゃがみ込み、土に残された痕をなぞる。


「四足歩行の大型獣、それも……虎、のようなものかもしれない」

朔也は跡を辿るように森へと目を向ける。


「けど、これは単なる野生の獣じゃない。ここまで継続して人の生活圏を襲うなんて……」


「どうして……」

茜がぽつりと呟いた。


その瞬間、森の奥から──低く、重い咆哮が響いた。


「来るぞ!」

朔也が叫んだのと同時に、森を割って影が飛び出してくる。


それは虎に似た、しかし尋常ならざる風貌のケモノだった。

しなやかで強靭な体躯、黄金色の瞳、そして鋭く光る牙。

体毛は深い焦げ茶に黒の縞が走り、尾は太く、まるで鞭のようにしなっていた。


「構えろ!」

朔也は即座に刀を抜き、前へ出る。


ケモノの瞳が朔也を射抜く。

その一瞬に、朔也は奇妙な感覚を覚えた。


(憎しみ、怒り、悲しみ……こんなに深い感情をただの獣が持つのか。もしかして、この理性を持つ感じ......妖獣か......!?)


それは、理性なき獣の目には見えないものだった。


「……こいつはただの野獣じゃないな」

朔也は小さく呟いた。


「戦うの?」

舞の声が揺れる。


「戦わずに済むなら、それが一番いい……でも、守るためには、戦わないといけない時もある」


朔也は剣を構えた。

ケモノも、低く咆哮を放ち、地を蹴って迫る。


鋭い爪が振るわれる瞬間、朔也も踏み込んだ。

剣と爪が交錯し、火花が散る。


「速い!」

朔也は紙一重で攻撃をかわし、反撃に出るが、ケモノは二撃目を躱して後退する。


「……動きに迷いがない。人間との戦い方を知ってる……?」


その刹那、再び咆哮。

しかしそれは怒りではなく、何かを訴えるような──


「朔也っ、来るよ!」

舞の声で、朔也は我に返る。


再び衝突する剣と牙。

その戦いは、どこか試すようでもあった。


(こいつ……ただ暴れてるんじゃない。……何か、理由があるな)


そう確信した時、森の奥から別の足音が聞こえた。


現れたのは、里の者たち数人だった。

彼らの手には、松明や武器が握られている。


「化け物め……今度こそ仕留めてやる!」

里人たちが怒声を上げると、ケモノは一瞬たじろいだ。


「待て! 下がれ!」

朔也が叫んだ。


「こいつは……敵とは限らない!」


ケモノの瞳が、朔也を見つめる。

その視線には、明らかに迷いが宿っていた。


「退く気があるなら、今ここで示せ。……俺たちは、お前の言葉を待っている」

刀を下ろした朔也に、晴仁も拳を緩め、茜と舞も続くように一歩前へ出る。


静寂の中──

ケモノは、ゆっくりとその場に伏せた。


「……信じて、くれるのか?」

声ではなく、瞳が語っていた。


そしてその瞳に、ほんの少しの――安堵が灯った。

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