第二十三話「その拳に宿るは」
初投稿です。
村に入ると、入り口付近にある簡素な建物の前で、二人の男が激しく言い争っていた。
一人は細身の中年、もう一人は屈強で、赤髪の若者──両者の間には、重たい空気が漂っている。
「……もういい。だったら力づくでやり合うか?」
若者がそう言い放った瞬間、目の前の地面が僅かに震えた。
「やめろ! お前、自分から喧嘩を売るな!」
朔也が間に割って入る。
「……誰だ、お前。しかも、白髪でその目の色.....。お前もこいつ同じく鬼の子か......?」
細身の中年が訝しげに睨む。
「今は見た目の話なんかどうでも良いだろ...俺たちは通りすがりの者だ。ただ、他人事ではないような話が聞こえてきてな。争う理由があるなら、まず話を聞かせてほしい」
静かだが、強い意思のこもった声。
若者は一瞬、目を見開いた。
「……チッ。好きにしろ」
そう言って中年は背を向け、別の場所へと行った。
残された若者が少し間をおくと、事情が語られた。
若者の名は晴仁。かつては村に暮らす者たちと共に生きていたが──
「ある日、スキルというものが発動した。それからだ、みんなが俺を怖がるようになったのは」
彼のスキルは《崩掌》──
触れたものに衝撃を与えて、弾いたり、粉々にできる能力だそうだ。
「最初は自分でも怖かった。制御できなかったから……。でも今は違う。なのに……」
晴仁は悔しそうに拳を握る。
先ほどの口論の相手であった村の長は彼の力を恐れ、何かあるたびに晴仁のせいにして、村から追放しようとしていたのだ。
「使い方を間違えなければ、力は誰かのためになる」
朔也が言うと、晴仁はゆっくりと顔を上げた。
「お前……どこかで、戦ってきた目をしてるな」
「俺は戦った。命のやり取りもした。だからわかる。お前はまだ、その力で誰も傷つけてない」
その言葉に、晴仁の拳が震える。
「……じゃあ、試してみるか? お前に、俺の力が通じるか」
一瞬の静寂。
朔也は頷く。
「来い、晴仁。試してやる」
——発動条件確認。対象:知性あり。
——スキル【決闘領域】、展開。
周囲の空気が変わった。
二人を包む不可視の結界──戦いの場が、成立した。
「行くぞッ!」
晴仁が地を蹴る。
素早い──拳が朔也の腹を狙って突き出される。
「——《勝機視界》、発動」
——視覚化:右肘、赤。
朔也は身を捻ってかわし、踏み込んで木刀で肩を狙う。
だが──
「……ッ!」
木刀が晴仁の掌に触れた瞬間、ガッと重たい音を立てて弾かれた。
「崩掌……!」
一撃で武器を弾くこの威力とその瞬発力は本物だ。
さらには力も調節して、武器を壊さないようにしていることに朔也は気づいた。
朔也は冷静に距離を取る。
(距離を詰めればカウンター、遠距離では攻め手がない……だが──)
「……っ」
朔也は静かに目を閉じ、集中する。
——外との通信は遮断されている。だが、心は届く。
(茜……今だ。頼む)
一瞬の沈黙ののち、朔也の身体に微かな変化が起きた。
肩口に仕込んだ式符が熱を帯び、足元に淡い銀の光が奔る。
——《領域共鳴》、式符発動。
——式神【白狐】の加護、速度強化。
(来た……狐の加護!)
次の瞬間、雷堂の崩掌が唸りを上げて迫る。
しかし朔也の身体はそれを“見切ったかのように”かわす。
強化された反応速度が、一瞬の死角をすり抜ける術を可能にした。
「そこだッ!」
朔也は一瞬だけ動きをずらし、晴仁の肘の下に滑り込む。
《勝機視界》と茜の支援で生み出すことができた、わずかな隙。
「——!」
晴仁の体が、地に倒れた。
——スキル解除。勝者:神谷朔也。
「……っは、参ったな。完全にやられた」
晴仁は大の字になって笑った。
その顔に、初めて柔らかな色が浮かんでいる。
「力だけじゃ勝てねぇってのは、わかってたつもりだったが……いや、勉強になったよ」
「お前の力が欲しい。もしよければ、俺たちと共に来てくれ」
朔也の言葉に、晴仁は目を見開いた。
「……いいのか? 俺なんかで」
「君が力をどう使うか、それだけだよ」
茜が優しく微笑む。
舞も少し驚いた表情を浮かべながら、それでも軽く頷いた。
「……ああ。じゃあ、よろしくな。神谷朔也」
──こうして、新たな仲間が加わった。
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