第二十一話 「それぞれの動き出し」
初投稿です。
砦の朝は、すっかり戦前の静けさを取り戻していた。
だがその空気の裏には、確かな変化があった。
村人たちは訓練に励み、砦の補修が進み、周囲には見張りの者が常駐するようになった。
そして何より──砦には、“目的”が芽生えていた。
その日、宗二は砦の外れで若者たちに素振りを教えていた。
竹刀を構えながら、少し厳しめの声を飛ばす。
「手首が甘ぇ。打ち込む時は、相手を倒す覚悟を持て」
「は、はいっ!」
若者たちは汗を流しながらも、真剣な面持ちで応えていた。
そんな様子を、庄兵衛が少し離れた場所から見守っていた。
宗二の指導に誰も文句を言わないのは、彼の言葉に“幾度もの戦場を渡り歩いてきた重み”があるからだろう。
一方、砦の裏手。
風に揺れる木々の陰で、茜は朔也に向き合っていた。
「……今日は、ちょっとだけ、自分からお願いがあって」
「ん?」
「私、もっと“式神”の力を扱えるようになりたい。だから、練習……付き合ってくれる?」
茜の声は震えていなかった。
朔也の目を真っ直ぐ見つめ、言葉に覚悟がこもっている。
「もちろん。遠慮せずたくさん支援をかけてくれ」
「……ありがとう、朔也」
茜の足元に、小さな式神──狐の影が現れ、霧のように形をなしていく。
以前よりも確実に制御が安定している。
(少しずつだけど……ちゃんと前に進んでる)
彼女自身も、自分の中の“変化”を感じていた。
怖くて仕方なかった力を、今では“仲間と繋がる術”として受け入れつつある。
その様子を、舞は砦の屋根の上から静かに見ていた。
元気そうな笑顔とは裏腹に、目元は冷静で、落ち着いている。
(……茜ちゃん、意外と芯が強いんだね)
風に揺れる髪を押さえながら、舞は胸の奥にある感情を整理していた。
雷堂の命令。それは自分にとって“絶対”のはずだった。
だが──
(どうして、こんな子供たちに雷堂さまは興味を持ったんだろう)
その問いに、まだ答えは出ない。
「舞、そこで何してるんだ?」
朔也の声に、舞は軽やかに身を翻して飛び降りる。
「ふふっ、ちょっと偵察だよー。砦の警備は私に任せてねっ!」
満面の笑顔。その裏に、本音は隠したまま。
そしてその日。
朔也は広間の机に、村の地図と周辺情報を書き写していた。
「……次は、どう動くか」
—雷堂さんはかなりの強敵だったが、今回は運良く見逃してもらっただけだ。
だが、きっと同じような実力者が再び現れる。その時はみんなを守れるように、自分たちの力をより一層強くしていかないと—
朔也、宗二、茜、庄兵衛、舞──
それぞれの想いが、同じ砦の空の下で交差し、やがて一つの道を描いていく。
その日、誰もが少しずつ動き出していた。
次なる戦いは、もう始まっているのだ。
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