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異形の領主〜追放された俺はユニークスキルで戦国を駆ける〜  作者: 葵 直虎
第三章 遠征とは新たなる邂逅
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第二十一話 「それぞれの動き出し」

初投稿です。

砦の朝は、すっかり戦前の静けさを取り戻していた。

だがその空気の裏には、確かな変化があった。

村人たちは訓練に励み、砦の補修が進み、周囲には見張りの者が常駐するようになった。

そして何より──砦には、“目的”が芽生えていた。


その日、宗二は砦の外れで若者たちに素振りを教えていた。

竹刀を構えながら、少し厳しめの声を飛ばす。


「手首が甘ぇ。打ち込む時は、相手を倒す覚悟を持て」


「は、はいっ!」

若者たちは汗を流しながらも、真剣な面持ちで応えていた。


そんな様子を、庄兵衛が少し離れた場所から見守っていた。

宗二の指導に誰も文句を言わないのは、彼の言葉に“幾度もの戦場を渡り歩いてきた重み”があるからだろう。


一方、砦の裏手。

風に揺れる木々の陰で、茜は朔也に向き合っていた。


「……今日は、ちょっとだけ、自分からお願いがあって」


「ん?」


「私、もっと“式神”の力を扱えるようになりたい。だから、練習……付き合ってくれる?」


茜の声は震えていなかった。

朔也の目を真っ直ぐ見つめ、言葉に覚悟がこもっている。


「もちろん。遠慮せずたくさん支援をかけてくれ」


「……ありがとう、朔也」


茜の足元に、小さな式神──狐の影が現れ、霧のように形をなしていく。

以前よりも確実に制御が安定している。


(少しずつだけど……ちゃんと前に進んでる)


彼女自身も、自分の中の“変化”を感じていた。

怖くて仕方なかった力を、今では“仲間と繋がる術”として受け入れつつある。


その様子を、舞は砦の屋根の上から静かに見ていた。

元気そうな笑顔とは裏腹に、目元は冷静で、落ち着いている。


(……茜ちゃん、意外と芯が強いんだね)


風に揺れる髪を押さえながら、舞は胸の奥にある感情を整理していた。

雷堂の命令。それは自分にとって“絶対”のはずだった。


だが──

(どうして、こんな子供たちに雷堂さまは興味を持ったんだろう)


その問いに、まだ答えは出ない。


「舞、そこで何してるんだ?」


朔也の声に、舞は軽やかに身を翻して飛び降りる。


「ふふっ、ちょっと偵察だよー。砦の警備は私に任せてねっ!」


満面の笑顔。その裏に、本音は隠したまま。


そしてその日。

朔也は広間の机に、村の地図と周辺情報を書き写していた。


「……次は、どう動くか」


—雷堂さんはかなりの強敵だったが、今回は運良く見逃してもらっただけだ。

だが、きっと同じような実力者が再び現れる。その時はみんなを守れるように、自分たちの力をより一層強くしていかないと—


朔也、宗二、茜、庄兵衛、舞──

それぞれの想いが、同じ砦の空の下で交差し、やがて一つの道を描いていく。


その日、誰もが少しずつ動き出していた。

次なる戦いは、もう始まっているのだ。

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