第二十話 「砦再建、始動」
初投稿です。
夜明けとともに、砦は静けさを取り戻していた。
昨夜の勝利の宴でにぎわった広間も、今はすっかり静寂に包まれている。
朔也たちは、砦の一角にある小さな集会所へと集まっていた。
広間では人が多すぎて落ち着いて話せないため、必要最小限のメンバーだけを呼び寄せたのだ。
朔也、宗二、茜、庄兵衛、そして舞。
新たに力を貸してくれる者たちが、顔を揃える。
「昨日はみんな、本当にありがとう」
朔也が深く頭を下げると、集まった仲間たちはそれぞれ表情を引き締めた。
「……ただ、勝ったからって安心はできない。これからもっと、力をつけないといけない」
その言葉に、宗二が静かに頷く。
「防衛体制の整備が急ぎで必要だな。防壁の強化、監視体制の見直し、あとは──」
「仲間集めも必要だよね。」
茜が声を重ねると、朔也は微笑んだ。
「うん、そうだね。
砦と村を守るために、三つの柱を立てようと思う。
一つ、防衛力の強化。
二つ、仲間の獲得。
三つ、戦闘訓練の底上げかな。」
宗二が軽く手を挙げる。
「村人たちの適性を調べ、役割分担を進めるか。【適正開花】を使えば、力を無駄なく引き出せる」
「さすが宗二さん、頼もしい。これからやり戦いは激しくなるから戦えるものを増やし、一人一人が今以上に強くなっていかないとね」
朔也が素直に感謝を伝えると、宗二は淡々と頷いた。
その時、庄兵衛が口を開いた。
「なあ、朔也様。砦の守りをまとめる役をやらせてもらう話だけど、一度おらに全部任せてもらっても良いか?」
体格の良い若者は、真剣な眼差しでまっすぐに朔也を見つめていた。
戦いの中でも怯まず、仲間を引っ張った庄兵衛なら、十分に任せられるだろう。
「……ああ、庄兵衛。頼んだよ。この砦は俺たちの要だ。もし、何か手伝って欲しいことなどあれば遠慮なく言って欲しい。」
「へへっ、任せといてくれ!」
嬉しそうに笑う庄兵衛に、集まった仲間たちも自然と微笑みを交わした。
その流れの中で、舞がそっと手を上げる。
「私も、何かお手伝いできないかな?」
「どうした? 舞」
「私は、外の様子を探ったり、人を探したりするのが得意だから、砦の見張りなどやらせてもらいたいな、なんてね。」
初めての会合の中でも、明るいながらもしっかりとした口調で話す舞。
その姿に、朔也は頼もしさを感じた。
「助かるよ。ありがとう、舞」
「はいっ!」
舞は少し頬を赤らめながら、力強く頷いた。
砦を守るために。
未来を切り開くために。
今、彼らは新たな一歩を踏み出したのだった。
***
一方その頃──
犬養家・領主居城。
涼しい間に腰を下ろした犬養忠範は、黄金色の茶器を弄びながら苛立ちを隠せずにいた。
そんな中、雷堂が戻ってきたと知らせを聞く。
「雷堂か! 当然、砦の小僧どもなど蹴散らしてきたのであろうな?」
忠範は茶器を転がしながら、当然のように問いかけた。
雷堂は静かに頭を垂れたまま、無表情で答える。
「……小僧が大将を務める戦。
俺は、子供を斬る趣味はない」
一瞬、空気が凍りついた。
忠範の顔が引きつる。
「な、なに……?」
「奴らには、まだ力も覚悟も足りぬ。
見逃しても、大勢に影響はないと判断した」
雷堂の声音は淡々としている。
それがかえって、忠範に言い返す隙を与えなかった。
忠範は内心煮えくり返る思いだったが、雷堂の実力と威圧感に逆らうことができず、ただうわべだけの言葉を絞り出す。
「……そ、そうか。ならばよい」
雷堂は一礼すると、音もなく部屋を後にした。
障子が閉じられた瞬間──
「クソがああああああッ!」
忠範は叫び、手元の茶器を思い切り叩き割った。
畳に金色の破片が飛び散る。
「な、舐めおって……! 小僧どもなど一掃して当然であろうが!」
怒りに震える忠範は、すぐ側に控えていた別の武士に怒鳴りつけた。
「玄馬! 貴様、雷堂を潰してこい!」
玄馬──忠範の手勢で、雷堂に次ぐ実力者とされる男が、無言でひざまずいた。
彼はこれまで剛腕と忠誠心で長く忠範に仕えてきた。
「御意」
玄馬は短く答え、鋭い眼光を光らせる。
忠範は荒れた息を整えながら、ギリギリと奥歯を噛み締めた。
(久遠院雷堂……貴様、いつまでも好き勝手にできると思うなよ)
──さらなる火種が密かに撒かれた瞬間だった。
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