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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【456.5話】 ヒロインたち ※リリア達がプロセルの街を出発した時の話し※

「ボルッタ!だ、大丈夫か!」

俺は崩れるように倒れたパートナー、ドワーフのボルッタを顧みた。

「ムグ!!」

俺は顔面に衝撃を感じた次の瞬間、天と地が逆さまになった。



「やべぇな、この辺の地方がこんなに冷え込むなんて聞いてなかったぜ」

「実際今日は珍しいぞ。雪でも降ってきそうなほどじゃい」

馬車から見上げる空は曇りがちで風が強いせいか骨身に染みる程寒い。

「防寒着などしっかりした物を用意してこなかった。寒いとはいえ大したことはないが、じっとしていると流石にこたえる」

「あぁ、この辺りがこんなに冷え込むのは久しぶりだ」

俺とボルッタは馬車上で手をすり合わせる。

雲がかかっているがもうそろそろお昼時になりそうな時刻だ。

「こう寒くてはたまらんな」

俺は苦笑いしながら荷台にある土器に手を伸ばし酒に口をつける。

「巡回兵に見つかったら飲酒運転で取り締まられるな」

俺が結構豪快に土器を煽るのを見ながら笑うボルッタだが、奴も酒に口をつける。

「こういう時は体の中から温まらんと」ボルッタが笑う。

俺達はしばらく馬車を進めながら今日の採取場やもう一人のメンバー、嫁さんの出産予定で今回は街で留守番をしているリザードマンのコッテドンの赤子か男か女か等、他愛もない会話をしていた。


やがて俺達どちらからともなく道の前方を指さした。

「ローパーだ。四匹。紫のボディだな。ポイズンローパーだ」俺が言う。

「デカいな。迂回しても良いが、ローパーの毒は薬にもなるので高価だぞ。どうする?」ボルッタ。

「毒は痺れや麻痺だ。即効性の致死ではないはずだ。それに解毒剤の準備もある。価値を考えると始末する意味はあるな」俺は自慢のランスを手に取る。

「この寒さだ。半分凍って動きも鈍いかも知れん。決まりだな」

話しは決した。

俺達は馬車を道なりに進めた。



「ボルッタ、ローパーの動きは鈍そうだが、今日は前衛がいない、慎重にいこうぜ」

「同感だ。慎重に斧で切り刻んでやるぞ。触手の取り扱いにご注意だ」

俺達は武器を手に馬車から飛び降りた。



「ボルッタ!だ、大丈夫か!」

俺は崩れるように倒れたパートナー、ドワーフのボルッタを顧みた。

「ムグ!!」

俺は一瞬の隙を突かれ顔面に衝撃を感じた次の瞬間、天と地が逆さまになった。


俺達は慎重にローパーに接近したはずだった。

四体のパープルローパーは道を塞ぐように立っていて、ほとんど動きもなかった。

試しに石を投げてもクロスボウで矢を撃ってもほとんど反応がない。

そのまま矢を打ち込んでも良かったのだが、水分がほとんで軟体のローパー相手に矢を打ち続けても長丁場になる。

俺達は素早く接近して狩ってしまうことにした。


先ずはポールウェポンを使う俺を先頭にボルッタが斧を手に後に続き慎重に接近する。

「やっぱり半分凍りついてるのか?」

背後から呟きが聞こえボルッタが俺の側面から分散するように位置取りを直す。

実際に目の前まできたが、艶やかな紫のボディをしたローパーの反応はほとんどなかった。


俺は槍で飛び込める間合いまで来た。

「ブライトン、慎重にな」

ボルッタが言ったと途端の出来事だった。

「っぐ!!」

ボルッタが呻いて台地にもんどりうった。

今までほとんど反応がなかったローパーの触手が飛んできたのだ。

俺も思わずボルッタを振り返った瞬間。

顔面と足に物凄い衝撃を感じた。

次の瞬間俺も空を見上げていた。


「ブライトン!大丈夫か!ブライトン!」

何が起きたのか理解できず道に倒れる俺にボルッタの声。

俺は一瞬気が動転したようだが、すぐに正気を取り戻せた。

「やられた!一回引こう!ボルッタ!立てるか?」

「か、肩だ。肩をやられた!たぶん外れているか折れてる」ボルッタが叫んでいる。

「お、俺も顔と… 足だ!足の付け根当たりだ。動けん!」

ローパー等何度となく倒してきているが、予想外の攻撃力だった。

「岩で殴られたみたいだ!今、そっちに…」

「気を付けろ!半分凍ったような触手が凄い威力になってるぞ」

俺も必死に動こうとしたが、顔面に攻撃を食らったせいか、意識はふわついている上に何かいつもと見える世界が違う。

足も折れているのか痛みが酷くて立ち上がることは出来そうにない。

見るとローパー共はゆっくりとだが、俺達に向かって接近し始めている。

「っく… だめだ… 肩が…おまえを移動できん」

ボルッタは俺の所まできて離脱を計ろうとするが片手ではどうにもならない様子だ。

動く腕に斧を構えなおしとりあえず応戦の準備をしている。

「ま、先ずはポーションを飲んでおけ」俺。

「腕が動かんのだ。蓋が開けられん」


その時だった。

馬車の車輪の音が接近してきた。

俺達は振り返る。

「がんばってぇ!今助けるわよ!逃げて!逃げてぇ!」

曲がりくねった森の中の道から馬車が突進してくるのが見えた。



「私とゼオドーが囮になるから!二人を救出して!」

「オフェリアは頼んだよ!ペコ、火力支援!その間に私とコトロ、ジェームスとルナで二人を救出!」

「皆、ヒールサークルを張るから、馬車裏まで引いて!」

馬車からは数名の女冒険者と亜人が飛び出して来た。

一瞬にして役割を分担しながら俺達を飛び越えていく前衛。

俺とボルッタの周りに数名に女冒険者が駆け寄って来た。

「ドワーフさん、とりあえず動けるのね?ルナ、付き添って馬車に!この人を皆で引きずるわよ。ちょっと痛いけどがまんよ、がまん!いくわよぉ!せーのぉ!」

火属性魔法が辺りを一瞬一瞬照らす中、俺は馬車裏まで救援に来てくれた女冒険者達に引きずられた。

見事な連携だ。


「ジェームス、ポーションを持って来て!それから手が空いたらオフェリア達をサポート」

緑の魔法陣が辺りに輝き、俺達を包み込む中、ポニーテールの女が俺の顔を覗き込む。

”なかなかの美人さんじゃないか”

俺は手際よく救出してくれた相手を見返しながら思っていた。

「あたし達、プロセルの街の冒険者。あたしは冒険者ギルド・ルーダの風所属のリリアよ」女が言う。

「俺はブライトン、俺達もプロセルの街の冒険者だ」俺は見上げながら告げる。

「ブライトンね。OK… どこか痛い?どこが痛い?」ポニーテール。

「右足の付け根あたりだ。痛い、動けん、立てない。それと顔か…頭か…」俺は言う。

実際に足は激痛で折れているのであろう。

顔は…

よくわからない、凄い衝撃で今も目が回るようだが、痛みよりなんか感覚がないようなボワボワする感じだ。

「… ちょっと痛いけど… がまんして… ちょっと顔を見せてもらうわよ」

女は言いながら俺を覗き込む。

「…」

俺は何だかいつもと違う視界に不安になりながら女を黙って見返す。

何だかいつもより空が小さく見えるし、女の美しさも半分に減っている気がする。

「ポイズンローパーだ。毒にやられたのかも…」俺は呟くように言う。

「あいつらの毒は大丈夫…ポーションで何とかなる…」

女が呟き返しながら俺の顔を覗き込み、顔を撫でまわしている。

何だか指先の感触の訴えはあるが、鈍く重い感じで鋭い痛みは感じない。

俺はその感覚を恐ろしく感じた。

「とりあえず、これを飲んで」

ブロンドヘアーのいかにもヒーラー風の女が俺の視界に入ってきて、ビンを俺の口に押し込んできた。

「解毒のポーション、ローパーの毒ならこれで大丈夫」ブロンドが言う。

俺は診察を受けながらポーションを飲み込む。

動転していた俺もだんだん落ち着いてくる。

「アリス… これ… どう思う?」

ポニーテールが俺の顔を覗き込みながらブロンドに話しかけている。

「ルナ!そっちは任せるわよ!ペコ、もうローパーが片付いたならルナについてあげて。そっちの方は鎖骨が折れてる。速さが必要よ、ちゃんとつなぎ合わせてから回復のポーションを飲ませて! ルナ!!慌てない!スリープをかけるか口に布を噛ませてあげて!痛みで舌を噛み切るわよ!慌てる必要ないのよ!落ち着いて骨をつなぎ合わせてあげて!」

ブロンドは一しきり指示をだすと俺を覗き込んだ。

ポニーテールもブロンドも美人さんだが、何故かべっぴん度合いも半分になっている。

「アリス、この人…どう?」ポニーテールが心配そうにしている。

俺は痛みに耐えながらブロンドの表情を伺う。

「… あなた、右目の眼球が破裂している様な状態… それに近いわ… 今すぐにでもポーションを飲ませたいけど足も折れてるのね。ゼオドー、手の空いてる人は集まって。足の状態を確認して戻したら急いでポーションを飲ますわよ。急いで治癒を開始したいわ。スリープをかけるけどあなたも念のためこれを咥えて」

俺の口に布切れが押し込まれる。

ブロンドは言うと俺の額に手を翳して呪文を唱え始めた。

「ゼオドー、折れてるの分かる?何とかなる?」ポニーテールが言う。

「あぁ、ここだな。あんまりやっことねぇけどよぉ、何とかなると思うぜ」

「アリス、それで良いの?それで大丈夫?」

ポニーテールがブロンドに話しかけているが、ブロンドは素早く手をふったっきりで問いかけには答えず一心に呪文を唱えている。

「… アリス、やるわよ!始めるわよ」

ポニーテールはブロンドの顔を伺うようにしている。

「…やろう!ゼオドー、私達で腰を押させているから骨を入れて」

「寝るまで待たなくていいのかよ!アリスいいのかよ?… やるぞ、あんた痛いけど我慢だぜ!」

俺は言われて思わず目の前の手を鷲掴みするようにすがった。

ブロンドは俺の手を凄い力で振り払い、手を翳しながら呪文を口ずさんでいる。

代わりに誰かの腕が伸びてきて俺の手をしっかりと握り返してくれた。

「おまえらしっかり押さえとけよ! いくぜぇ! よっ!!」


「ッ!!!!…」

俺は脳みそに直接鉄の棒でも突き立てられるような激痛で声にならない声を発した…



俺は目をさました。

天井の木目、清潔な壁、柔らかい布団。

俺はベッドの上で目を覚ました。

「お!やっと目が覚めたのか。誰か呼んでくるぞ」

ボルッタだ。

ボルッタは言うと部屋を出て行った。

ボルッタの動きはまったく問題を抱えていそうになかった。

俺は顔の前で両手を翳してみた。

右手が見えていない。

俺は恐る恐る自分の顔を触ってみる。

顔半分にある包帯の感触。

俺は少しほっとした。


ドアが開き、ボルッタとシスターが入って来た。

「ブライトンさん、お目覚めですね。ちょっとまだ安静にしていてください」

シスターは俺を覗き込み布団を剝ぎながら言う。

「ここはどこだ?どうなった?」

俺の問いかけにボルッタが口を開いた。

「ここはプロセルの街の教会だ。おまえはあれから一日以上は寝ていたことになるな。冒険者達に助けられて俺達はここに連れて来られた。あの娘達も用事がある途中だったらしく、ここに引き返し始めたが、途中で他の冒険者仲間の馬車に出会って、俺達は馬車ごとここに預けられた。おまえさんは今まで寝ていたけどな。テッコドンの奴、昨日見舞いに来てたぜ」

俺はボルッタの言葉を、救出してくれたヒーロー、ヒロインたちの顔を思い出しながら聞いていた。

「ボルッタ、おまえ、怪我は?」俺は聞いた。

「肩か?この通りだ。とりあえずは問題無い。ただ、やっぱりちょっと痛むし、完全に斧を振るえるようになるには一ヶ月程度かかるかも知れないな」肩を回しながら言う。


シスターが会話に割って入ってきた。

「足は痛くないですか?引継ぎでは足は骨折していたと…」

俺は足を動かしてみた。

「っい!!」

流石に痛くないとは言えないが、痛みは動かした一瞬だけで大したことはなかった。

俺はボルッタに支えられながら恐る恐る立ち上がって歩いてみた。

「おぉ…歩けるな… ちと痛いが、問題無いレベルだ」俺は呟くように言う。

「しばらく辛抱だ。しかたない、だいぶ助かった方だぜ」ボルッタが笑う。

「あぁ、確かにな…だいぶ助かってるな」俺も笑った。


「お顔の包帯を取りますね。感染しないようにポーションをかけるようにと…」

シスターはそう言うと俺をベッドに座らせた。

包帯をゆっくりと取り去っていく。

ボルッタも俺の顔を凝視している。

「さぁ、どうでしょうか?痛みますか?異常はありますか?」

包帯を取り除いてシスターが俺に笑いかける。

俺は天井の木目を見たり、壁の絵を見たり、掌を眺めてみたりする。

左目を瞑ってみたり、右目を瞑ってみたり…

「あぁ…右目はさすがに… 少し視界がぼやけるが問題はなさそうだ。怪我を考えるとこれくらいは仕方ないのだろうな…」

俺は掌を裏返し見ながらボルッタに言った。

「アリス…あのヒーラーの話しでは、視力の回復は保証できないって言っていたぞ。それでも少しでも回復したら、一ヶ月程度かけて少しは良くなっていくだろうとさ。見えているならよかったじゃないか」ボルッタが笑う。

「いやぁ…思ったよりも状態は良いぜ… あぁ…失明も覚悟していたけどな…」

「なら良かったぜ!だいぶ良いみたいだ。どうだ?まだ冒険者は続けられそうか?」ボルッタが笑っている。

「これなら続けられるな…まぁでも俺達も早く良い人でも探してテッコドンを見習って家庭でも持つべきと木かもな」俺が笑う。

「それなら結婚もして冒険者も続けたらいいよ」

俺達は笑いあった。


「ポーションを目にかけて包帯をしておきますね。横になられて」

シスターが俺をベッドに寝かす。


「結婚するなら、あのブロンドの女神様にしたな。この街の冒険者だって言っていたよな。あの時は半分しか美人顔が見れなかった。今度お礼に行くときはしっかり両目で美人ぶりを見てやろう」

俺が笑うとボルッタのやつも声を上げて笑った。

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