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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【455.5話】 勇者リリアとドラゴンケール・ブレーカー ※454.5話の続き※

外はじっとしていると寒く感じる程度の気温だが、少々の雲が浮かんでいるだけの澄み切った高い空。

プロセルの街の中央公園はイベント会場を中心に人がゴミのように右往左往して賑やか。

中央公園の中心にはステージと観覧席が設けてあり、ドラゴンを模した大きなモニュメントが設置され、大いに人目を引いていた。


お昼時頃からリアルゴールがスポンサードバイをしているバードグループが演奏や歌唱を披露し、人気モデル冒険者がファッションショーやマジックショーを行っている。


リリアもステージに上がるので控室の様な場所でペコ達とだべっている。

リリアのショーはルーダリア公認勇者リリアとしてリリアモデルの装備Ver.2を着て、今回新たに装備品として加わる大弓、ドラゴンケール・ブレーカーのデモを行うのである。

リリアの控室はステージ傍のテント、カーテンで仕切られた小部屋の様な場所に居る。

ステージでは人気バードグループが唄い、会場の熱気が伝わてくる。


リリアのステージでは伝説の武器、ドラゴン・シューターを模した弓、ドランゴンケール・ブレーカーを射て、ドラゴンを倒す的なショーを行う予定だ。

リリアはこの日のためにいちようここ数日はキャシィとイツメンを伴って野原で弓の練習もしていた。

「この弓…重い…ってか、トルクが強すぎてしならな過ぎだよぉ…」

実際にその弓を使ってドラゴンを倒したのか倒していないのか、一般の重弓の約倍近い長さを持つ弓をいっぱいに引くには相当の力が必要らしくリリアも愚痴りながら練習をしていた。

弓も重いが矢も長さも重量も一般の倍近くあるのだ、必要筋力が半端ない。

弓自体も大きすぎてリリアでは縦に構えると弓が地面についてしまうので、横構えするかカントをつけて構えるかになるのだ。

「あたし女勇者なんだけどな… こんな重い弓を撃たされるとは思いもよらなかったよね」リリアはぶーぶーと文句を言いながら練習していた。

それでも流石に弓が得意なリリアだけあって、ちょっと練習していたら、それっぽくなってきている。

そして、正直言って見栄えは良い。

流石に射る姿は様になっていて格好良い。

「いいじゃん、いいじゃん!リリア、今まで見た茶番の中では一番様になってるわよ」ペコ達が笑いながら声をかける。

「腕が千切れそうなんだけど。飛ばせるけど流石に射撃精度には限界があるよ」リリア。

「それぐらい射れれば問題はないはずです。本番の的はかなり大きい上、演出が入りますので、そんなに正確に的を射抜くような精密さは必要ないです」キャシィが言う。

「本当だよね?的の中心を射貫くような事をさせられるなら、ちょっと無理だよ」リリア。

まぁ、こんな感じで一様は必要な練習は出来ていた。

因みに藁人形をクリエイトして射てみた。

ローゼンさんの弓では矢がトストスっといった感じで刺さるが、ドラゴン・ケール・ブレーカーだとドンっという感じで刺さって一瞬藁君がよろける感があり、威力は結構凄いようだった。



コトロとルナ、アリスがリリアの控室に戻って来た。

「ちょっと会場を覗いてきましたけど、さすが人気グループのアババですね。盛り上がっていますよ」コトロが言う。

「勇者リリアさん、あと数曲で交代になります。そろそろステージ袖で待機してください」

スタッフさんがリリアの控室を覗いて声をかける。

「はい、はぁい、行きますね」

リリアは返事をするとドラゴンケール・ブレーカーとローゼンさんの弓を持って立ち上がる。

「あ、それとね、あたし言っておきたいことがあるんだけど… なんでさぁ、有名バードはちゃんと部屋が与えられて控室になってるのに、勇者のあたしが駆け出し大道芸人と同じ扱いなのかしらねぇ。ちょっとおかしくない?こんなんなら今度から出ないからってキャシィに伝えてよ」

カーテン越しに顔を覗かせたスタッフにリリアが言っている。

「俺に言われてもなぁ…キャシィって誰ですか?そういったことは偉い人に相談してください」

スタッフはちょっと迷惑そうな顔をして去っていった。

「あたし四年くらい勇者やってるのに、こんな扱い納得いかないよね」リリアが文句を言いながら控室を出ていく。

「あいつ何言ってるんだろうね。リリアがアババやビットルズ、芸人のヒーキ・ダテンコ何かと同じ扱いされるわけないよね」ペコが呟く。

「比較するのも恥ずかしいです。その辺の地下アイドルの方がよっぽど人気ありますよ」コトロも頷く。

「リリアの晴れ舞台を見にいきましょう」

アリスが声をかけると全員控室を後にした。



「素晴らしいアンコールをありがとうございましたぁ!皆さん、バードグループ・アババに今一度盛大な拍手を!アババの関連グッズはお近くのリアルゴールド店でご購入できます!… さぁ、プロセルの街の皆さん!テンションMAX、元気いっぱいの盛り上がり、ありがとうございました。ここでちょっと休憩を挟んでルーダリア国王がルーダリア王国唯一と認める公認勇者、勇者リリアによる伝説級の弓、リアルゴールとハンズマンが技術と英知を総結集して作り上げた、あの!伝説の弓、ドラゴン・シューターに肩を並べる弓を開発いたしました!伝説級の弓、ドラゴンケール・ブレーカーの実演を行います!大迫力の実演となっておりますので、ご家族連れのお客様は是非ステージの前の方へ…」

アナウンスがステージに流れアババが去ったステージではスタッフがリリアの演舞の準備をしている。

バックがとり除かれ、ドラゴンのモニュメントの見通しが良くなり、ステージ周りはどことなく岩場を思わせる雰囲気となり、岩のハリボテや魔石等が並べられる。

お客さんは休憩がてらトイレやB級グルメを買いに席を立つ者も多い。


「なんか…アナウンス内容は立派だけど、完全に休憩時間の余興的扱いよね」ペコが苦笑いしている。

「ステージ周辺の機材移動があるから仕方ない感じ?」アリス。

「どうでしょうか…この国に公認勇者がいることも知らない王国民は多いですし、こんなもんじゃないでしょうか」コトロ。

「ちょっとリリアに気の毒」ルナが心配する。

「こんなものよ、ルナだって一緒に仕事するまで勇者リリアとか知らなかったでしょ」オフェリア。

ルナは黙って頷いている。



「それでは!公認勇者、勇者リリアの登場です!」

リリアの紹介が流れていよいよリリアがステージに上がった。

結構まとまった拍手をもって出迎えられている。

弓を二つ手に、例の紅色のビキニアーマー姿。

ヘルメットはポニーテールを流せるようにと、ヴァルキリー神の装備を似たウィングが装飾されている。

格好良いのだが、冬には場違いで寒そうなのと、やはり子供の目には毒である。

「あの変態露出エロアーマー、意外に受け入れられているみたいね」ペコ。

「最近は駆け出しの吟遊詩人なんかは過激な衣装で人目を引いたりすることも多いですから、国民も慣れてきましたか」コトロが呟く。

「そう?喜んで見ているのは男性客中心よ。ステージ近くにいる家族連れは明らかに目のやり場に困ってる」

アリスに指摘されてみると、子連れの母は男の子の目を覆ったり、子供連れて一時退散している家族もいる。

「ヒュー!ヒュー!」「いいぞぉ、ねえちゃん!」「待ってましたぁ!」

ちょっと会場の雰囲気も変わりつつある。

ステージ傍から見上げていると紐パンアーマーから丸出しのリリアのプリ尻が見える。

程よく飯を食い、運動量豊富な冒険者リリアの尻は丸くて大きくて見事で、妙にエロい。

リリアは、と言うと今回は弓と言うことで、集中しているらしく、胸と尻を露出しながらステージでは堂々としている。


「ルーダリア王国の公認勇者リリアが…」

アナウンスでリリアの紹介とリアルゴールドで手がける勇者リリアモデルの装備セットの紹介が行われ、リリアはニコニコと手を振りながらポーズを決めている。

「あのビキニアーマー… 見ているこっちが恥ずかしい」オフェリア。

「とりあえず… 見ているだけで寒そう…」ペコ。

「会場の妙な熱気が伝わっているのですよ…きっと」コトロが言う。


「それでは、リアルゴールドとハンズマンが手がけた伝説級の弓、ドラゴンケール・ブレーカーの実力を…」

リリアの演舞が始まった。


ドラゴンのハリボテから雄たけびが聞こえ、よく見ると微妙だが羽の部分が若干動いて羽ばたているような感じで痙攣してなくもない様にも見える。

因みにハリボテの大きさはなかなか立派だ。

二階建ての建物以上の高さがあるように見える。

ダークグリーンに塗られていてそれっぽく、公園に置かれていて人目を引いていてモニュメントとしては十分な役割を果たしているのだが、近寄ってマジマジと観察してしまうとチープがある。

まぁ、イベントに置いておくだけの物と考えれば仕方がない事ではある。

「おほ!声をだしたよ。ボイスプレースかコーリングを応用した魔法かな?」

「羽が少し動いていますよ、誰か中に入っているのでしょうか」

「結構気合が入ったショーみたいね」

これにはペコ達も少し関心している。

「あぁ!ドラゴンが!ドラゴンが襲って来ました! 勇者リリアー!助けてぇ!」

アナウンスが場を煽りたてる。

「ルーダリアの公認勇者リリア登場!このリアルゴールドとハンズマンが…」

リリアが何か紋切り型のセリフを発しながらそれっぽくステージを転がっている。

ドラゴンのハリボテ自体はちょっと羽を痙攣させて基本的には直立不動、最初の一回こっきりで鳴き声も上げなくなったので、違和感がある間をリリアがステージを転げ回ってつないでいるが、まぁこれは仕方がない。

ステージ脇から準備されていた火柱がリリアの移動と共にちょこちょこ上る。

火柱と言うと聞こえは良いが、ちょっと発火して消火するような代物。

「リリアの動きに合わせて点火されるのね。誰かがタイミング合わせてるのかな?それともリリアが何か呪物を身に着けて設置してある魔法陣か何かに反応させてる?」ペコ。

「いずれにせよ、リリア関連にしては今までで一番凝っていますね」コトロ。


「えい!やぁ!」

リリアはローゼンさんの弓で数本矢を放つがドラゴンは一向に怯まない… 感じ…

「勇者の弓が全く効いていない!勇者リリア、ピンチ!大ピンチ!!」アナウンス。

”ボボーーーーーーーーーーーーー!!!”

ドラゴンのハリボテが炎を吐く!

結構凄い炎がステージまで届いてきた。

「あぁ!勇者リリア!大丈夫かぁ!!… 本当に、本当に大丈夫ですかぁー?」

結構ってか、予想を上回る炎がハリボテからステージまで飛んできた。

鳴き声と言い、羽と言い、ステージ周りのギミックと言い、っというのかショー自体がなんちゃって茶番のど真ん中を行くレベルだっただけに、この炎の勢いにはびっくり。

ステージ付近にいたお客も突然の出来事に驚いてのけ反る物や立ち上がる者も多い。

予想外の事にアナウンス嬢も結構声を上ずらせている。

「うわ!何今の?結構凄かったわよ!!」

「リリアが炎に包まれていましたけど」

「あれ、演出なの?やばくない」

流石にコトロ達も会場もざわざわしている。

リリアも驚いたらしく、結構あたふたしているっぽい。

「ちょっと驚きましたが、大丈夫!大丈夫です!そろそろやっつけちゃいましょう!フィニッシュしちゃいましょう!」アナウンスが場をたきつける。


リリアもちょっとポニーテールの部分とかチリってしまい、わちゃわちゃしていたが、ドラゴンケール・ブレーカーを取り出した。

「勇者リリアが伝説級の弓を手にする!!」アナウンス。

「ふ、普通の弓じゃぁ埒が明かないわ!こうなったらリアルゴールドとハンズマンの技術と英知を結集させて完成させた…」

リリアは弓を翳し、矢を握り観客背に向かってポーズを取りながら長いセリフを履いている。

実際の戦闘に置いては非現実過ぎ、致命的な間の使い方だがショーなので仕方がない。

キャシィの事前説明では、ここでリリアがドラゴンの足元付近にある大きな板に矢を射したら、事前に板に書き込まれた魔法陣と矢にエンチャントされた魔法陣の文言がトリガーとなり、ドラゴンの周りに火柱が上がり、ドラゴンを倒した事になりショーは終了。

魔法陣のギミックが凝っていて、可燃物も設置しなおしが大変なので、本番一発勝負の演出だと言っていた。


とにかく、リリアも炎に驚かされたが矢を弓にかけ、弦を引き絞る。

”ギュギュ”

弓がしなる心地よい音。


「我がドラゴンケール・ブレーカーの矢を受けよ!!」

凛と言い放つとリリアは的に向けて矢を放った。


”ッボ!!”

リリアの放った矢がハリボテの足元に飛び込んだと同時にハリボテの周りにいくつもの火柱が上がった。

「勇者リリア、ドラゴンを討ち取ったり!!」

火柱の上るバックを背景にリリアがポーズを決めている。

「わーー!!」

ちょっと不測の事態もあったが、なかなか見栄えの良いフィナーレに観客も拍手を送る。

「勇者リリアがドラゴンを見事退治しましたぁ!!」アナウンスが流れている。

「おー、なんか…今回はなかなか良かったじゃん」ペコ達も拍手を送っている。

ポーズを決めるリリアの背景では火柱は収まり、ドラゴンが燃え始めている。


「良くできていましたが… あのハリボテってイベント終了後に解体って聞いていましたが、今燃えていて良いのでしょうか?」コトロが言う。

「演出でしょ?少しくらい何かないと見栄えが悪いじゃん」ペコ。

「… なんかスタッフは慌てているっぽいけど…」アリスが指さす。

見るとスタッフたちが小火っているハリボテの下でウロウロしている。

その内、燻っていた小火はみるみるハリボテを焦がし始めた。

羽を痙攣させていたスタッフだろうか?

何か叫びながらゴブリンが二人ほどハリボテから飛び降りて来た。


「えー… 勇者リリアのショーは終了いたしました。ドラゴンは見事退治されいます… えー… あ、はいはい、一旦中止… ステージは中止?中止ですね… 今ですか?…あぁ、えー…ハリボテがやばいことに…はい、私もあれはやばいことが分かります… 中止とは伝えず上手い事言えと… はいはい…」

何だかアナウンス嬢と誰かの内内の会話が駄々洩れしている間にみるみるハリボテは延焼を拡大し始めた。

スタッフたちがバケツやら何やらで水をかけたり大騒ぎになっている。


「皆!ショーは終わった!逃げるわよ!」

みるみる紅蓮の炎に包まれていくハリボテに釘付けになっていたコトロ達の所にリリアが戻ってきた。

結構血相を変えている。

「リリア?あれ大丈夫?」

「大丈夫!あれはあんな感じなはず!とりあえず逃げよう!怒られないうちに逃げよう!」

リリアがコトロとオフェリアの手を引いてずらかり出すとペコ達も慌てて撤収していく。


「勇者リリアのショーはこれで終了です。この後少し休憩を挟んで次は大道芸人、ワンマンステージによるトークをショーは休憩後に行います。とりあえず会場の皆さんは一旦散歩でもしてきて、なんならご飯でも食べて戻って来てください。提供は… ご休憩の際には是非お近くの… 勇者リリアグッズをお土産に…」

慌てて会場を後にし始める観客達にアナウンス嬢が告げている。


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