【454.5話】 変態勇者リリア ※リーヤ村に出発するちょっと前の話し※
プロセルの街の中央公園広場。
天気は晴朗。
季節は冬とあり少々肌寒いのだが、動き回っていればあまり寒さは感じない程度。
キャノピーが立ち並び出店がひしめいている。
フェスティバルを楽しむ親子やカップル、王国民が和気藹々と公園内を行き交う。
本日と明日は商人ギルド・リアルゴールドと工芸ギルド・ハンズマン主催によるフェスティバル。
公園には様々な店舗が軒を並べて、B級グルメやら商品やら、何かの宣伝などを行っている。
「あれ?リリアは?リリアがいないじゃん」
武器・防具を取り扱ったリアルゴールドの出店まできてペコ、オフェリア、コトロ、アリス達がリリアの姿を探す。
「あいつの娼婦アーマー姿を見に来たのに、店の奥か?」ペコが言う。
「お!あそこで握手会しているのは、アリー・グランド、あっちにはフィンガー・ロックのサイン会、すごい行列ですね」コトロが指を差す。
「へぇ、アリー・グランドもリアルゴールドと契約しているバードだったのね」ペコが応える。
「あそこ、冒険者モデルのシャーミィとバルサンドのサイン会ね」アリスも指さす。
「シャーミィは王国魔法学校の頃からモデルをしてましたからね、今は野外活動等危険な事をしなくても、冒険者モデル一本で食べていける勢いですね」コトロ。
「ちょっと胸が大きくてスタイルが良いと露出の高い魔法衣かアーマーを着ただけで有名になれるんだからねぇ」ペコ。
「冒険者活動をしてない冒険者モデルってどうなのよ…」オフェリア。
「冒険者登録していれば冒険者モデルは名乗れますからね。本人が危険を犯して冒険者活動しなくても更新時期までには周りが点数稼ぎをお膳立てしてくれて、ちゃんと冒険者活動を続けさせてくれますよ… 人気が落ちるまでは…」コトロ。
「彼女の破壊魔法を見たことあるけど…あれだけの才能があって… 残念ね」アリス。
リアルゴールド主催のフェスティバルだけあって、お抱え冒険者モデルや吟遊詩人グループが軒先でサイン会や握手会をしたり、お客とふれあいをしながら商品を宣伝したりしている。
有名人の周りには人だかりが出来ている。
皆でおしゃべりをしながら武器・防具の販売と展示をしているリアルゴールドのテント先までやってきた。
リリアモデルVer.2を先頭に、色々な武器や防具が並んでいて、『勇者リリア・握手会』と楯看板が立っている。
が、軒先にリリアの姿はない。
コトロ達がキャノピーを覗くと、リリアは奥で椅子に座ってスープを飲んでいる。
「働いていないなんて余裕じゃない」
スープを飲んでいたリリアは声をかけられて顔を上げた。
勇者と仲間達メンバーが立っている。
「えっへっへ、皆来てくれたのね。ありがとう。じぃっとしてると寒くってね。スープを飲みながら待機中だよ。裏にいくとスープとティー、サンドイッチがいっぱいあるよ。食べてよい物で作られてるから皆も食べなよ」リリアがニコニコ言う。
リリアはローブのような上着を羽織ってスープで温まっているようだ。
「せっかくだからいただくわ」
ペコ達はせっかくなので遠慮なくご馳走になる。
「あなた店頭に立ってなくて良いの?」
サンドイッチを食べながらペコがリリアに尋ねる。
「いいの、いいの。さっきまで頑張ってたけど、この恰好が寒くってね。寒くなったら休憩して良いってキャシィが言っていたし、それに大して握手を求めてくる人もいないしね」リリアは応える。
「あぁ、そうですよね。それを心配していましたよ。ほとんど肩と胸の一部とお尻の一部しか覆われていないようなアーマーですから寒いでしょう」コトロ。
「寒いから嫌だって駄々をこねたらストッキングだけ許されたよ、ほら」
リリアがちょっとローブの裾を開けるとニーハイブーツとストッキングがチラ見できた。
「そんなの全然寒さを防げないじゃん」コトロが笑う。
「そうなんだよ、適当すぎてまったくやんなっちゃうよね」リリアが苦笑い。
「リリアモデルのアーマーは売れてるの?」オフェリアが尋ねる。
「売れないわよ。あの値段よ!一般王国民相手のフェスティバルでそう簡単に売れるねだんじゃないよね」リリア。
「こう言うのは本人を絡めた宣伝効果よね」アリス。
「もう、契約金も払っていますし、宣伝ってより、金もらっている以上はちょっと何かしておけって話しでしょうね」コトロ。
「何か貴族層とかにはちょこちょこ売れているみたいだよ、知らんけど」リリアが言う。
「買う人がいる事実の方が摩訶不思議よね」ペコが笑う。
「… ちょっと握手会を兼て店頭で宣伝するよ…」
リリアが重い腰を上げる。
見ると店先の雑踏からキャシィがリリアを睨んでいるのが分かった。
リリアはキャシィの目が光っているのを目ざとく見つけたらしい。
「寒いからローブ羽織ったまま立ってよ」
リリアは言うとローブの前だけひも解いて店頭に歩いて行く。
「あ!そうそう、あたしのステージは午後からだから皆見に来てよね」リリアが振り返る。
「ステージってあの、例のドラゴン・シューターを射るデモ?」ペコ。
「そうそう、これね」
リリアは傍に置いてあった弓、ドラゴン・シューターを手にすると店頭に立つ。
「勇者リリアです!こちらでは勇者リリアモデルのビキニアーマー、新商品の勇者リリアセット、勇者リリアの伝説級の弓、ドラゴンケール・ブレーカーを展示中です!あと握手会も行っています!」
リリアはローブの前をはだけながら弓を手に宣伝文句を繰り返す。
「ドラゴンケール・ブレーカー?…ドラゴン・シューターじゃないの?」オフェリアが少し不思議そうにしている。
「恐らくその名前は版権か何かにひっかかるのでしょう。まぁ、その名に近くて直感的にインパクトの有る名前を付けてるのでしょう」コトロが言う。
「たしか”伝説”もフリート帝国が版権か何かを抑えていてアイテム関係は伝説とは直接名付けられないので伝説級って表現なのね」アリス。
「ねぇ、そこどうでも良く無い?それより、あれ、なんかやばくない?」ペコが指を差す。
「確かに…あれはまずい…」一同頷く。
肌寒いせいかリリアは膝くらいまであるローブを羽織っているのだが、契約によりビキニアーマーをお披露目しなければならない。
リリアは何を思ったのか弓を手にしながらも、往来する人々に向かって両手でローブの前を開けて歩き回っている。
「勇者リリアのビキニアーマーでーす!!」と言いながら人前でパッとローブを開けるのである。
本人は宣伝で一生懸命なのであろうが、人前でローブの前を開けてみせて中の紐ひもなビキニアーマーを見せて歩いている姿は変態そのもの。
「やべぇ、完全に変態女が歩き回ってるようになってる」ペコ。
「痴女…ですねぇ」コトロ。
「痴漢はあったけど… 痴女って実際に見たことないけど… あんな感じ…」アリスが呟く。
「あれはまずわよね…誰か教えてあげたら?」フォエリア。
「オフェリアいきなよ、私は恥ずかしくって傍に寄れないわよ」ペコ。
「私だってなんか、見ているこっちが恥ずかしい」オフェリア。
「もう別にあれで良いでしょう…ってか知らんし…」ペコが笑う。
「勇者リリアです!ビキニアーマーです」
リリアが通行人にビキニアーマーを見せる…ってか晒す。
「うわ!なにこの人!見ちゃダメよ!」
家族連れの母は子供の教育に悪いとばかりに手を引いて離れていく。
男性の通行人はニヤニヤと粘っこい視線を残しながら足遅に通りすがる。
女性同士は哀れみとも軽蔑ともつかない複雑な表情で通り過ぎる。
カップルなどはちょっと気の毒だ。
男の方がリリアの存在に気が付いてうっかり凝視してしまおうものなら、彼女にビンタされて挙句、痴話げんかに発展している。
勇者リリアはすっかり迷惑千万な存在と化して出店の軒先をウロウロしている。
「うわぁ、リリアが迷惑なってますよ」コトロ。
「あれで勇者を語るのまずくない?」オフェリア。
「変態勇者ね…」アリス。
「このスープ美味しいわね、おかわり貰って来るけど誰か欲しい?」ペコ。
「私もおかわりしますよ」コトロ。
「皆で行きましょう」アリスも賛同する。
コトロ達はテントの奥で、スープを飲みながら破廉恥勇者リリアを生暖かく見守る。
「おい!おこのおまえ!迷惑条例違反で逮捕する!」
コトロ達がおしゃべりをしていたら声がするので店頭を振り返った。
リリアが数人の衛兵に囲まれている。
「通報があったぞ!おまえだな、真昼間から変態女が下着を見せびらかしていて迷惑だと通報があった」
「変態女め!猥褻物陳列罪の現行犯だ!」
衛兵達が叫んでいる。
「はぁ、ちょっとぉ!こっちは仕事でやってるのよ!下着?これは鎧!アーマーなの!!ちょ!!やめてよ!これは仕事でやってるの!キャシィ!…あれ?いない… スタッフさん!!… 休憩中? ちょっとやめてって!変態女じゃないわよ!勇者リリアよ!あ!コトロ!ペコ!」
「何か面倒な事になってない?」フォエリア。
「逃げますよ、巻き込まれたら大変です」
「他人の振りよ。お腹もいっぱい、潮時よ、ほらぁ、オフェリアもアホに迷惑かけられたくなかったらさっさと逃げるわよ」
コトロ達は変態勇者のとばっちりを受ける前に脱兎のごとく逃げ出す。
「ちょ!誰か!ペコ!アリス!! あれ?誰もいない!! だからぁ、変態じゃないって!!誰か助けてぇ!!」
リリアは衛兵ともめている。




