【454話】 墓地の何か
リリア達は四台の馬車でリーヤ村に向かっている。
車列の先頭はトールさんとロンドさんの馬車が先頭、その間にリアルゴールドから出してもらった商人馬車が二台挟まり、殿をリリア達の馬車が務める。
リーヤからプロセルに戻った後、リリアを中心に二回目の遠征の準備を急いで進めてきた。
まぁ、途中でキャシィの用意した企画に付き合わされたり色々あったが、中十二日で出発。
本来なら数日で戻りたかったがすぐには準備が整わなかった。
リリアはトールさんのために中古馬車と初回に必要な商品を購入。
リアルゴールド・プロセル店の店長、アラネコさんがリリアの相談に乗り、かなり尽力してくれたおかげで、多少時間はかかったものの、準備できた内容自体はとても良い内容になったようだ。
また、リリアからのリーヤ村の現状を聞いて、物品が不足しているなら今回は確実に儲けがでそうだと踏んで、商人と馬車を一緒に派遣してくれることになった。
これにより、食料も木材等の建材も物品不足が一気に解消されることになるだろう。
リリア達の今回のメンバー
いつもの勇者リリアとその取り巻きのリリア、オフェリア、コトロ、ペコ、アリスに見習いのルナ。
それに大量に葬られたゾンビ達を確実に鎮魂したり教会まわりのことをしっかりケアできるようにアンを参加させている。
また、賊の襲撃を根絶しなければいけないのだが、ゴブリンとオーガに襲われた実績を見て、交渉役にゴブリンのジェームズとオーガのゼオドーを雇ってきた。
教会周りの事はアリスもプリーストの資格を持っているのだが、アリスの得意としているのは回復やプロテクション方面であり、儀式を行ったり結界を作ったりはする方面ではアンの方が達者であることから、ディルに頼んでアンに同行してもらっている。
対賊の戦闘、密偵対策としてバジルを連れてきたいとこであったが、バジル自身はアーマー&ローブ・プロセルの街支部を大きくしていくことに熱心で、断続的かつ継続的に拠点を空けて活動することに賛成ではなく、今回は帯同してもらうことを諦めた。
ディルとリリア達で活動内容を協議、確認した結果、今回はリーヤ村の物資支援とゾンビ襲撃騒ぎのその後を観察、リーヤ村の南北に接続する街道を賊からの治安回復と賊のアジトを可能な限り突き止める。廃聖堂の様子を可能な限り探って対策を立てるステップとする等になった。
ディルは教会の正式化の必要性は理解しながらも今の村の規模では予算獲得には難しいとして、今後プロセルの街の役人を派遣して視察することを検討するという。
「ディル、あなたどうせ午前中から夕方までデスクに座っているだけでしょ?あなたも見にきなさいよ」
リリアが言ってみたが、ディル曰く自分が動くとなると専属の護衛をつけたり馬車を準備するなりで時間がかかる上、おそらくこの様な理由では許可が下りないのだと。
「はぁ?許可がおりない?勇者管理室の係が勇者の活動内容の視察に許可がおりないってことないでしょ?…はあぁ?…もういいわよ!ちょっと皆ロープ持って来て!こいつをこの椅子に縛り付けておこう!どうせそっから動かないなら、もう好きなだけ座ってられるように縛り付けよう」
リリアが言うと意外とあっさりコトロもペコも「確かにその通り」と実際にロープを持って来た。
「抑えつけるからしっかり縛って」とか言いながらプロテクション魔法を応用して椅子から立てなくするとアリスもノリノリだった。
「これは問題になります」と淡々としながらもちょっと焦り顔しながら余裕そうに座るディルを完全に無視してリリア達全員でしっかりとディルを椅子に縛り付けて帰った。
周りの貴族役人たちはドン引きしながら見ていた。
まぁとにかくリリア達はリーヤ村の支援を準備し、リリアはトールさん達の商売が再開できるようにセットアップを行い街を出発してきた。
リリアは中古馬車代と引馬代、最初の仕入れ代等を立て替えた。
ウィンウィンの関係であり、トールさん達も不義理をするような人間では無い事は雰囲気的に伝わってくるのだが、金額が金額なだけにリリアが立て替えるには大きな金額となっているが、リリア本人は「貯金はあるし大丈夫」と言っている。
善行とは言え、リリアが負担することではないのだが、さりとてリリア以外が「じゃぁ、私も少し立て替えるよ」ってな内容でも無いので、勇者と仲間達グループはとにかく、リリアをサポートするという形で見守っている。
あ、因みにゴブリンのジェームス。
「ジェームス?人間みたいな名前だよね。もしかして早くから人間の里親でもいたの?」
募集を見てきてジェームスにリリアが尋ねた。
「よく言われるよ。俺のゴブリン語の名前は正式にはゲとゼとジの中間の発音をした後に舌を巻くようにしてエイと発音するんだけど、人間には難しいんだ。それで最初に雇ってもらった大工の親方が、発音できないからおまえはジェームスだって言うんでジェームスになった」と本人が説明していた。
人間語がかなり達者なようだ。
現在、リリア達は四台の馬車でプロセルの街から南下してリーヤ村に向かっている。
先頭はトールさんとロンドさん。
中二台はリアルゴールドが雇った馬車で護衛もついている。
最後尾にリリア達の馬車。
プロセルの街ではやることが多かったうえにキャシィが放り込んできたイベントまでこなして忙しかったが、思った以上に事が運んでリリアは上機嫌で馬車の手綱を手に、コトロのBGMに合わせながら鼻歌を歌っている。
雲量は限りなく1に近い快晴の冬空。
出会う魔物も驚異的ではなく、休憩をとりながら順調にリーヤ村を目指すリリア達。
「ゲートよ開け!オープン・セサミ!!」リリアがおどけてリーヤ村のゲートの前で声を張り上げる。
木製のゲートがゆっくりと開かれ、村人が顔を覗かせた。
リリア達の馬車はリーヤ村の人達の笑顔と共に迎え入れられる。
「村長さん、予定より遅くなったけど戻ってきました。いちよう必要そうな物は持ってきました」
リリア達の到着を聞きつけて出て来た村長にリリアが挨拶をする。
「いやぁ、本当に助かるよ。未だに全然立ち寄る商人がいなくてね。ここのところプロセルの街からでてきた旅人が二組ほど立ち寄っただけだったよ」村長が応える。
「食料品から器具、柵の補強材や建築材も持って来たよ。村で必要な物を買い取ってもらって、お店をだすから村の人達も買い物できるようにする。村か街に売りたいものがあったら商人さんに買い取ってもらったら良いよ。それで…あんまり割引はできないんだよね、ちょっと色々大変でね。相応の相場で買ってもらえると嬉しいんだけどねぇ」リリアが言う。
「あぁ、大丈夫だ。物品が届かず大変だったから村人もきっと喜ぶよ」村長。
「よし、皆到着早々大変だけど、お店を出す馬車はマーケットをオープンしよう。それから早速取引を開始だね」
リリアが声をかけると皆準備を始める。
トールさん達を始めとする雑貨や日用品を売り場には村人が集まってきて買い物をしている。
商人達も積み荷を捌いて、帰りの便に乗せる野菜類などの商談をしている。
なかなか順調なようだ。
リリア達も活動開始に当たり、宿を借りてテント等の準備をしていると村長が声をかけてきた。
「村人も喜んでるし、これで村で不具合があった場所も修繕が進むよ、ありがとう勇者リリアさん。それで、早速村で問題が出ているんだが、対応してもらえるとありがたいんだ」
「勇者として当然のことをしてるだけよ。勇者リリアは国民の安全と資産を守る存在なの。で、問題ってなんですか?」リリア。
「うーん…実はな… どうやら、先日ゾンビや村人を葬った村外れの墓地と無縁墓地なんだが… どうやら夜中になると、何者かが墓地に出現しているらしいんだ」村長が言う。
村長の言葉を聞いて、コトロ達もテント設営の手を休めて村長の周りに集まって来た。
「それってゾンビが復活して出てきているとか?墓荒らしが来るとか?」リリアが不安そうに聞き返す。
「残念だがそこまではっきりとは分からん。実は村人が夜、墓地周辺から何者かが墓地内に居るのを見かけたのだが怖くて逃げてきてしまった。その後私も村人と確かめに行ったのだが、確かに闇の中で何かが動いているようだった。私達も怖くて近寄ることはできなかったが…」村長が言う。
「あぁ…そうなんですね。えーっと…勇者は本来は幽霊とかオカルト的なものは専門外なんですよ。でも、まぁ…勇者だから何とかする努力は前向きに検討させていただきます。幸いあたしにはプリーストと教会で働く聖職者の仲間がいます。多方面にわたって何とか対応しますよ」リリアが応じる。
アリスは微笑んで聞いているが、ちょっと思うところがあるような表情だ。
「無理して確認に行かなかったことは賢明だったと思います」コトロが言う。
「いちよう出来る限りゾンビとして復活しないように鎮魂はしたけど、もし土の中から出て来たなら、自ら土の中に戻ることはないです。日中に確認に墓地まで行きました?ゾンビが復活したなら穴が残っているはずです」ぺこ。
「あぁ、昼間は私と村の男数名で行ってみた。我々も同じことを思って確認したが穴があったり何か掘り返した様な跡はなかった」村長が言う。
「それならゾンビの復活ではなさそうですね…確かに何か動いていたんですか?見間違いの可能性はないですか?」コトロが問う。
「私らも怖くってあまり近づけなかったが、何かがいるのは確かだった。見間違いならそれはそれで良いのだが…一度確かめて欲しいんだ」村長。
「毎晩出現してるの?確かめていないですよね」ペコ。
「毎晩はわからないが恐らくほぼ毎晩だろう。私も村人から聞いてから三回ほど確かめに行ったがその内二回は確認した。恐らく時間帯の問題だろうが毎晩いるようだ」村長。
「足音がするとか声がするとか、動物の泣き声のようなものが聞こえるとかありますか?」アリス。
「近くまでは寄れなかったが足音や声なんかはしてなかったね。目の錯覚かとも思えたが、確認に行った我々全員、あの場に何かがいて動いているのは分かったんだ」村長が言う。
リリア達は顔を見合わせた。
「わかったわ。設営が終わって落ち着いたら夕方までに見に行ってみます」
リリア達は村長に告げると作業に戻った。




