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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【451.5話】 ※※450.5話の続き※※

「まぁ、流れはそんな感じだけど、きっかけはね…」

幼い頃の話をしているルナはカップを床に置くと話しを続けた。



『義足のビリィ』は今夜も冒険者達が食事とお酒を嗜んでいた。

決して大きくは無いお店だが、数あるテーブルの上、店内では和やかで楽し気な雰囲気が漂っている。

オープンキッチン造りのギャレーでは義足の男が忙し気に料理を作り、男の妻が料理を手伝いながら注文をテーブルに届ける。

ブリギットはお店の隅に置かれた揺りかごで眠る弟の面倒をみながら、パパとママが忙しい時はお酒や料理を運ぶのを手伝っていた。

弟は騒々しい店内の笑い声を意にも介さずスヤスヤと眠っている。

ブリギットはこのお店の雰囲気が好きだった。

”冒険者”

ブリギットには冒険者達が何者か、まだ良く理解できなかったが、剣と杖を手に遠くに出かけては稼ぎを手にして帰ってくる人達と言う程度の事は理解しているつもりだった。


「おーい!こっちに酒を」

お客さんの一人が空になったカップを宙に翳している。

ブリギットが振り返ってギャレーの様子をみると、パパとママは忙しそうにしている。

ブリギットはすぐに椅子を立ち、樽からカップにお酒を注ぐとカウンターに置かれた紙に印を書き、お酒をお客に持って行った。

「ガルシアさん、どうぞ」

「おう!ブリギット」

顎髭を蓄えた丸太のような腕のガルシアがニコニコしている。

「ブリギット、こっちにも酒とキノコのチーズ焼きをくれよ」

椅子に戻りかけるブリギットに声がかかる。

「酒とキノコチーズね、グランさん」ブリギットは愛想良く応える。



「ブリギット、お客さんだよ、席に案内しくれ」

ギャレーの隅で弟をあやしながら野菜スープとパンを食べていると母が呼びに来た。

母を見るとなんだか意味ありげな顔をしている。

ブリギットは食事の手を止めると訝しがりながら店のドアに目をやる。

ブリギットは来客を見て一瞬にして顔をほころばせた。


「リオネール!リオネールお兄ちゃん!いらっしゃい!戻って来ていたのね!」

入店してきた冒険者。

四人組のメンバー。

剣を腰に履き盾を背負う剣盾士のゴラール、弓と矢筒を背負ったアラン、ローブを纏いワンドを手にする治癒士のカーリィ…

そして、大剣を背負い碧海を帯びたアーマーに身を包んだリオネール…

店内の淡いランプの光に鈍く光る鋼のシルエットが開放されたドアの闇を背景に立っている。


「ゴラール、アラン、カーリィ、リオネール!お帰り!テーブルはこっちよ!」

「よう!ブリギット、元気にしてたか?」

喜々としてテーブルに案内するブリギットに四人が笑顔で挨拶をする。

ブリギットは自分で注文をとるとパパに料理を頼み、お酒を四つ注いで席に持っていく。

「月明かりのリオ、今度はどうだった?トロール十匹狩って来たか?」

周りから尊敬を込めた冗談を投げかけられ、リオ達は適当に愛想を振りまいている。

ブリギットは早足にテーブルまでお酒を運ぶとリオに膝に手をつき、見上げながら話しかける。

「ねぇ!リオ兄ちゃん達、今回はどこいってたの?何を狩ったの?お話を聞かせてよ!」

「小さな彼女さんが来たぞリオ、ちゃんと相手してやれよ」

テーブルはブリギットのはしゃぐ姿をみて和んでいる。

「今回はエルフズイヤーの渓谷に行って、アルトゥの街を回って来たよ」

ブリギットはリオの言葉に胸をときめかせる。

「ねぇ!ねぇ!今度はどんな冒険だったの?どんな街だった?リザードマンは見かけた?」

ブリギットは目を輝かせながらリオに話しをせがんでいる。


「あの子わかりやすいわねぇ」

ブリギットがリオの傍らで腕に抱き着かんばかりの勢いでお土産話に夢中になる姿を父と母はギャレーから眺めて微笑んでいた。



「恰好良かったのよ、こんな大きな剣を背中に背負って、右肩から大きなグリップが見え隠れしてるの。ゴラールもアランもカーリィ姉もみんな恰好良かったぁ。ギルド・エターナルの月明かりのリオ、ムーンライト・リオ、リオ・ザ・ルナと言ったら有名な剣士だったのよ。私はリオが店に来るのがとってもとっても楽しみだった。皆すごい腕前だったのよ、難しいクエストをいっぱいこなしていたって…お店でも皆から一目置かれていたわよ。 お店の手伝いをしながらリオ達の帰りを楽しみにして、戻ってきたら毎日お店に来させて何度も冒険談を聞かせてもらって。私が何度も同じ冒険談をせがむからリオは時々ちょと呆れていたみたいだったけどね。でも毎日来てくれるのに出発の前日になっても挨拶もなく出かけていっちゃうのよ。後でママに聞いたら私が大泣きするから内緒で出発していたんだって。それを聞いて私は小さかった時に冒険に出るというリオの足に抱き着いて大泣きした記憶を思い出しちゃった。テーブルでリオ達の冒険譚を聞くのが大好きだったわ」

ルナはちょっと笑いながら悪戯っぽく舌を出してみせた。



「リオ、カーリィ、皆!私、魔法学校に入学するのよ!来月から大きな街に出るの。卒業したら私も冒険者!」

ブリギットはリオ達に告げる。

治癒魔法の能力を授かったブリギットは教会からの推薦状をもらって街に試験を受けに行ったら入学の合格通知が届いたのだ。

「おぉ!そうか、やったじゃないか!本当に魔法使いになれるな」

「ブリギットなら面接と試験を免除でこのパーティーに入れてやるぜ」

「良かったぁ!最近危険な魔物が多くて、私一人の魔力じゃ治癒がきつかったのよ」

ブリギットが報告するとテーブル上は喜びに沸いている。

「リオ、私も冒険者になったら一緒に連れて行って!私も色んな街をみてみたい!色んな人に会ってみたい!色んな景色を見てみたい!」

「魔力が育ってきたとは言っていたけど、王立の学校に入学できるくらいになっているとはね。もちろん!冒険者になったら一緒に出かけよう」

リオは優しく微笑みながらリオの頭を撫でる。

「ブリギットは優秀だぞ。リオ、おまえもルナの異名をとられないようにな」

「あなたに入学のお祝いよ。この銀と魔石で出来たネックレス。首にかけるかワンドにかけていれば少し魔力の消費を抑えてくれるわよ」

カーリィは笑顔でブリギットの首にネックレスをかけてくれた。

冒険者らしい匂いに混じりフローラルな香水の匂いがした。



ブリギットはその抽象的な形をした銀と魔石でできたアクセサリをリリアに見せると、大事そうにローブの中に戻してみせた。

リリアは微笑みながら頷くと発泡酒を口に運ぶ。


「その頃は常連さんがお店に顔を見せなくなる理由とか深く考えてなかったな… たぶん両親も周りの人もまだ幼かった私に気を使っていたんでしょうね。私、常連さんや来ていた冒険者が突然店に丘出さなくなる理由なんて、ちょっとクエストが長引いているとか、どこか他の良い店を見つけたとか、理由があって移住していったとか、そんなことだと思っていたのよね… ましてや私の理想のナイトが… 私がね、街に出て寮に住んでいる間にリオ達はお店に来ては私の学校生活の事をパパとママに聞いていたんだって。私も帰郷休み中は故郷のお店でリオ達の帰りを待ってたけどね… それが最近まで街に戻って来てはお店に顔を出していたというのに、全然見かけなくなっちゃって… パパもママも、お店の常連さんも何を聞いても、長期のクエストに出ているって… だけど、二年以上も姿を見ないのよ、おかしいでしょ… 私それで冒険者ギルドに行って記録をしらべたの… そしたら…まぁ覚悟はして行ったつもりだったけど…現実って残酷よね…」

ルナはカップのお酒の水面を揺らすような仕草で寂しそうに笑う。

「未帰還?… それなら事情があって本当にどこかに…」リリアはカップを持つルナの手元を見ながら言う。

ルナはカップを揺らしながら小さく首を振る。

「故郷の教会に四人のお墓があったわ。皆があんな近くにいるのに二年以上も全然気が付かなった…記録だと山中の集落で住民と共に…通りかかった商人によって皆のタグだけ教会に届けられたみたい…」

「… そっか… そうなんだね…魔物より人間の方がよっぽど恐ろしいよ…」リリアは頷く。

「私、リオ達と約束したの。私は冒険者になるって。魔法でパーティーを助けるって。見て見たいの。、リオ達が見た景色を、カーリィ達が感じていた世界を」


「そうなんだ… 約束に固執することは無いと思うよ… 冒険者は危険な仕事だよ。だけど応援するよ」

リリアはそこまで言うと発泡酒を飲み干した。


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