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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【450話】 リーヤ村とトールさんと

リリア達は商人のトールと護衛のロンド、道に迷っていたガレン、ローザ、ジャック家族をリーヤ村に連れて戻った。

ガレン親子は一先ず村にある宿に宿泊となる。

北側の道を掃討し、リーヤ村への呼び込みに行っていた班、リーヤ村周囲の警戒に当たっていた班も戻ってきていた。


問題は色々あるがとりえず…

リリアはシマと大喧嘩になった。

酔っぱらったシマを起こしたらシマがぶちぎれてリリアに爪を立てた件だ。

取っ組み合いの大喧嘩!っとなりかけたが、さすがにティグレを始めタイガーマン達がシマを止めに入った。

ティグレ達だってさすがにシマが悪い、自分達が羽目を外し過ぎたことは自覚しているようだ。

シマも悪いとは思っているようなのだが、プライドというか、真向から指摘されるとツイツイ言い返したくなるタイプのようで、かなりヒートアップしている。

オフェリアを始めとするリリア班のメンバーは、何が起きても良いように様子を見ながら傍で待機。

その他の班のメンバーは何事が始まったのかと集まってきて様子を見ていたが、だいたい事情が知れてくると、心配しながら見ている者、興味本位で眺めている者、風呂や食事に解散する者等さまざま。

まぁ、冒険者は大酒飲んで二日酔いで動けない奴、酒飲を飲んでいないとやっていられない奴等ザラザラのざらにいる、よくある話とよく見る光景であり、「あぁ、はいはい」程度の者も多い。


「リリア、悪かった。ほとんど人も通らないだろうし、魔物も大したこと無いだろうしと安心していた。おまえ等も強いし、ちょっと酒飲みながらと思っていたら深酒になって皆で寝ちまっていた俺達が悪い。シマも今は興奮しているが言い聞かせておくから… な?…」

仲間がシマを眺めている間にティグレがリリアに謝る。

「当たり前だよ!確かにお酒は許可したよ。魔物も一掃できたし、あんまりやることも無いと思ったし、楽しくやってくれたら良いと思って許可したんだよ!今日一日中寝てただけじゃない!リリア達が案内表示を立てたのよ!あんたら男共が寝ていて、あたし達が埃にまみれて大工仕事しているのっておかしいでしょ!百歩譲って寝ていても構わないけど、緊急の用事が出来たから起こしたのに逆切れされて爪で胸を切り裂かれて!… で、注意したら、また逆切れされて!…ふざけんじゃねぇぞって話にもなるわよ!!」

リリアはまくし立てる。

理屈ではリリアの言う通りだし、自分達が悪かったのは十二分にも承知なのだが、血の気の多いタイガーマン達はリリアの言い草に不満の表情の者もいる。

ティグレはシマを抑えている仲間達をなだめながらリリアに謝罪する。

ティグレはさすがにリーダーを務めているだけのことはある。

「わかってるよ、わかってるぜ」ティグレがリリアをなだめる。


行動出来なくなるまでお酒を飲むのも悪いし、起こされて切れるのも悪いが、リリアが起こるのにはもう一つ重要な理由がある。

「すぐに出発出来ていたらトールさん達の護衛もできて、襲撃されずに済んでたんだよ!襲撃はあったかも知れないけど皆で防げたはずよ!そもそも村まで護衛するって約束で立ち寄ってもらうのを、ティグレ達がすっかり寝入っていて護衛ができなかったんだよ!酔いつぶれている間に全滅していった冒険者パーティーがどれくらいいると思ってるの!トールさん達に申し訳ないよ!楽しくやってもらって構わないけど、こんなことになってまで逆切れされるなら、今後はティグレ達を放置するから!」リリアが怒鳴る。

「誰がおまえらの助けになんか必要と…ムグムグ…」

シマが何か言い返そうとして周りに抑えつけられる。

「なんだぁ!てめぇ!もういっぺん言ってみろってんだぁぁ!」

リリアも負けじと怒鳴り返すとこちらもペコ達が入って来た。

「もう堂々巡りだからやめなよ、それより…」ペコ。

「そうです。酒癖は言っても変わりません。それより、もう明日の用意をしてご飯にしましょう」コトロ。

「命拾いしたわね!ペコ達に感謝なさい!本当なら鼻時がドバドバ出るくらい鼻パンしてやってたわよ!」

何だかんだで騒ぎは引いて、それぞれは明日の朝まで休憩となった。



次の日、活動は予定変更して担当制で村周りの周囲警戒のみの、実質オフデイとなった。

先ずは活動のけじめとしてシマの処分。

だが、結局リリアの口頭上の注意だけとなった。

本来なら規律違反とリーダーに反抗して傷を負わせた責任はかなり重いのだが、ここで重い処分を科しても戦力が落ちるだけの結果となりかねない。

リリアも一晩寝たら案外サバサバとしていて、最初は少々気色ばんでいたが、シマがちゃんと謝罪したことによって、「今度やったら、タマが口から飛び出る程金玉蹴るわよ!」っとか言って終わった。


そこで各隊は実質の休日になり、リリア達は村人たちとミーティング。

先ずは、多くのゾンビを葬った村外れの無縁墓地とその傍にある村の墓地。

アリスとルナが処置をしたので、再び土をかき分けて蘇ってくるような者が出てくる可能性は少ないが、多くのゾンビがいっぺんに葬られたこともあり、不安は残っている。

墓地もとにかく埋めましたって程度で墓地の体を成していないし、あれだけの量の魂を祭るのであれば石碑の一つでも立てた方が良さそうだ。

村には集会所のような教会のような建物があるが、本格的な教会を立てて墓地を見守る必要があるし、常駐するプリーストの一人でも置いておきたい。

大量のゾンビ達がどんな経緯で発生し、村周辺に集結していたのかも調べた方が良いし、一連の騒ぎによって、すっかり旅人や商人の足が遠のいたリーヤ村に人を呼び戻さなければならない。

それどころか、今回の犠牲者を含め、「こんな場所には居られない」「悲しい思い出でつらい」と離村する者達も出ている。



リリア達は今回、リーヤ村の治安回復のために来たのだが、現状を見るに、これらの助けの管轄となるはずのプロセルの街に報告し、援助を頼んだ方が良いであろう。

その話し合いを行った。

それに、この村の東側の山の中に気になる廃墟があり、そこにも魔物が多く集まっていたり、昨日トールさん達が荷物を奪取されたように、付近の道中はゴブリンや盗賊による被害が多いようだ。

ゾンビと魔物騒ぎで鳴りを潜めていたが、村一帯の治安が良くなったことで、また強盗被害が多くなるだろうと村人は予想している。

「強盗被害は防がないと、安全に暮らせないし人が寄り付かないものね。これもプロセルの街に戻って報告か…」リリアが紙にペンを走らせる。

「それと沈黙の森と呼ばれる場所に廃墟になった大聖堂と集落があるんだ。滅多に人が寄り付く場所ではないんだが、素材集めに山に入ることがあり、どうやら凶悪な魔物が住み着き始めてるようなんだ。今は生活に問題は無いが危なくて東の山には入れなくなってきている。それを何とかしてくれるとありがたい」村長たちがリリアに言う。

「沈黙の森… っと。いかにもって感じの意味深な名前だよね… それはちょっと調べて殻だね…」

リリアはちょっと苦笑いしながら紙に書き写す。

リリア達はできるだけ村の復興を手伝えるようにプロセルの街に提出する報告をまとめる。



ミーティング後ガレンさん達に挨拶をしたリリア達。

ガレン家族は数日滞在した後に次の街を目指すという。

こちらは可能な限り安全な場所まで送ってあげることは可能だろう。



問題は今回襲撃を受けて荷物と馬車を失った商人のトールさん達と護衛のロンドさん。

リリアは少なくともトールさんが荷物を失った件については責任を感じている様子だ。

トールさんは積み上げてきた資産を失って失意の中にいるが、一晩経ってロンドさんに励まされている。


「リリア、トールさんの部屋に行くの?」

村長たちとのミーティングの後に宿屋に向かうリリアにペコ達が声をかける。

「うん、ちょっと馬車を見てからトールさんと話すよ」

リリアは宿屋の横に止めてある焼け落ちた馬車を指さして言う。

「私達も行くわよ」

ペコ達もリリアについて行く。


「うーん… これは修理できるレベルじゃないよね…」

車輪とシャシー部分だけがようやく残っている馬車の現状を見てリリアが呟く。

「まぁ、これは全損として扱われてもおかしくないですよ」コトロ。

「車輪くらいは流用できそうだけど、荷台の部分は新規で作る方が早くて安いと思うわよ」ペコ。

「少しでも元を取りたいなら車輪を下取りに出して中古を買うのが現実的」

アリスが言うとルナも焼け残った部分を眺めて頷いている。

「ねぇ…リリア、あなたが責任を感じる必要はないのよ」

焼け残りの馬車を離れて宿に向かおうとするリリアの腕をオフェリアが引いた。

皆リリアの周りに集合してくる。

「そうそう、確かに一緒に護衛しながら村に来るって約束はしたけど、結局先に出発したのはトールさん自信の判断よ。確かに私達に責任は少しはあるかも知れないけど、間違ってもリリアが馬車や失った積み荷の保証を申し出る必要はないわよ」ペコが言う。

リリアが見ると、皆心配そうにリリアを見つめている。

「うーん…まぁ、気の毒だよね。とにかく励ましてあげて保険が下りるように手伝ってあげないと」リリアは言う。

宿屋に向かうリリアの後を皆でついて行く。



「おはようございます。今日もご加護がありますように… あのぉ、トールさんの様子を見に来ました」

宿屋の二階にあがって宿泊先のドアをノックするとロンドさんがドアを開けてくれた。

部屋の中に招かれるとトールさんはベッドに腰かけていた。

あまり眠れなかったので落胆とやつれが表情に出ている。


「あぁ、昨日の… 冒険者のお嬢さん達… えー、リリアちゃん達だったね」

トールさんはくぐもった声で挨拶を返す。

「あのぉ、様子を伺いに来ました。つらいでしょうが、こんな時ほどよく食べて良く寝てください」リリアが挨拶をする。

「あぁ…ありがとう… はぁ…」

トールさんは頭を抱えながらため息交じりにお礼を返す。

「気を落とさずにいてください。この件で必ず保険は下りるはずです」コトロが言葉をかける。

「文字通り無一文だ。お店を買って定住を考えていたが… なかなか資金と折り合いがつかなくってな… 預金を馬車の車体に隠していたが、焼け落ちる際に底が抜けて地面に散らばってしまった… 俺も怪我で動けなかったし… いや、動いたら殺されていた… ギルドに預けていた貯金も下ろしキシャスの街でマジックアイテムを買って、今物価が良くなっているルーダリアの港で大きく取引を行おうと思ってたまたま大きくお金を動かしたところだったんだ… それが全て…」トールさんはため息をつく。

「旦那、すまねぇ。俺も防ぎきれなかったし、結局体も張れなかった…」ロンドが肩を叩く。

「あの数じゃ…太刀打ちは無理だっただろう… 死んでしまってはつまらない… 命が助かっただけでも… しかし、俺の場合はもう生活の全てを失ったも同然だ…」

「トールさん、とにかくプロセルの街に行こう。大きな街でトールさんの所属する商人ギルドもあるよ。ここで嘆いているより保険の適用を最優先で行って、また商売を再開しようよ。そしたら新たな希望も出て来るよ!」リリアが励ます。

「大勢のゴブリンと… オークかな?…とにかく道の両側から湧くように出てきて… もう大慌てでな… 商人の魂とも言える台帳も何もかも灰になったよ、どこまで保険を適用してくれるか… それがいつになることやら…」トールは頭を振る。

「トールさん、残念なことですが、移動中に強盗にあい、台帳や書類事全てを奪われることはあることです。きっとギルドも保険も善処してくれると思います。ここで嘆いているよりは最善を尽くしてみるべきです」コトロ。

「な、トールの旦那、俺もそう思うぜ。この娘達の言う通りだ。今はショックだろうけど、街に向かおう。何とか手立ても見つかるってもんだよ」ロンドが引き立てる。

「リリア達はプロセルの街から以来されて、この村の治安回復活動に来てるんだよ。最初の依頼はクリアした状態になったし、村の人とも話して早めに一度プロセルの街に帰るよ。その時は一緒に送って、街では書類の提出に全力で手を尽くすから、リリア達と街に行こう」リリアが言う。

「あぁ…そうだな。一時はつらいが何とか立て直せるものかもしれない。ここまでの苦労を考えると立ち上がる気力もないのだが… 昨日死にそこなったのも何かの縁、生きる意味が残っているのかも知れないな。助かった命だし、お嬢ちゃん達の言うように街に言ってみようか」

トールさんがいうとロンドも安心したようにトールさんの肩を叩く。

「よし…やることが一杯だけど、とりあえず一度プロセルの街に戻って村の復興とトールさん達の支援だね」

リリアは安心したようにペコ達を振り返った。

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