表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
795/817

【449話】 遅延と黒煙

リリア達はティグレ達を起こす。

大酒を飲んで酔っ払って寝込んでいる本人たちの自業自得ではあるが、だからといって放って村に戻るわけにはいかない。

魔物に襲われて怪我人や死人が出てしまうことは冒険者仲間として避けなければならない。


リリア達に声をかけられティグレは起きて来た。

「うぃ… あ?あぁ…寝てたか、すまないな…」

酔っぱらたことはとにかく、ティグレは隊長を務めるだけあって少しは理解がある。

「すまないじゃないわよ、これ見て!怪我は治してもらったけど、シマのやつ、起こされたことに腹を立てて、爪を立てて来たんだよ」リリアが言いながら引き裂かれた服を見せる。

「… お、おぅ… そいつぁすまない… 後で言っておく」ティグレ。

「そんなのん気な問題じゃない!これは責任問題にさせてもらうからね!ちゃんとシマには責任とらせるわよ」リリアが鼻息を荒げる。

「わ、わかったぜ…何だか知らんが、後で本人からも何があったか聞いておく。それより、今日はもう撤収なのか?」

ティグレはオフェリア達が出発の準備をしているのを眺めて言う。

「そうだよ、さっき村に寄ってくれるって商人がいたんだよ。物騒だから一緒に村についてきてくれって言われたけど、あなた達が寝てるから、放って帰るわけにもいかなくて先に行ってもらっているの!追いかけるわよ、全員を起こして出発の準備させてよ」

リリアが言うとティグレはやれやれといった調子で重い腰をあげた。



リリア達が馬車の準備を整えたが、ティグレ達はようやく起きてきて、まだ準備中。

リリアがイライラしながら待っているとコトロから報告があった。

「旅人のようですね、こっちにやってきますよ」

リリア達が見ると、すぐ近くまで人影が三つ来ていた。

身なりからすると旅の冒険者か旅人のようだ。


リリアとオフェリアとが馬車を降りて挨拶すると、旅人は向こうから馬車に近づいてきた。

見ると成人男性と女性、青年といった年齢の男子の三人組だ。

男性と女性は軽装備だが武器と荷物を所有し、青年は本格的な鎧と武器、荷物を所有している。

「私達はダニヤ王国から旅してきた者だ。ルーダ港に向かっていたが迷ってしまった。ここがどの辺か教えてくれないか」

男性が地図を出しながら挨拶をしてきた。

男はガレンと名乗り、女性は妻のローザ、青年は息子のジャックと紹介した。

どうやら新天地を求めて冒険者登録をしてダニヤから越境してきたらしい。

今朝国境を越えて来たが、魔物に襲われたり、辺境の領主の小競り合いに巻き込まれ野山を逃げ回っている内に完全に自分達のいる位置を見失い、山野を歩き続けてきたようだ。

森の切れ目から出たところでここに駐車中の馬車が目についたので助けを求めてきたと言う。


「了解よ。地図を見せてね… 昨晩はダニヤ王国のこの村にいたのね… で、この監視所から通って… 話だとこの辺で小競り合いに巻き込まれて… うーん… この地図だとルーダリア国内の役には立たないわね… ちょっと待ってね、私の地図を持ってくる…  はいはい…えー… その話しだとこの辺で戦いに巻き込まれて、多分その川がここだから、この辺をグルグルしてんだと思う」リリアが話を聞きながら地図を辿る。

「ここはどの辺かわかるだろうか?」男が尋ねる。

「今はここだよ。この道とこの道が交わる部分。ルーダ港を目指すならこの道を東に行くことね」リリアが道の先を指さす。

男はリリアの説明を地図を覗き込みながら頷いていたが、リリア達とティグレ達、そしてリリア達の馬車を眺めながら訪ねる。

「予定だとこの東の先にあるはずの村に泊まる予定だったんだが、日暮れまでに間に合うだろうか?」男は妻と息子を心配しながら言う。

「うーん…正直ここから南も東も…まぁ、西もまだ行った事ないんだよね。その地図にもルーダリア王国南部の地図にも村の位置は書かれているから村は有りそうだけど… 誰かわかる?… だよねぇ… 距離的にその村は日没は厳しそうだね。その手前にも集落くらいはあるかもしれないけどねぇ…」リリア。

「お嬢さん達はどこから来なさった。今から戻れる距離に村でもあるのか?」男が言う。

「あたし達はこの北にあるリーヤ村に泊まってるの。そうよ!リーヤに泊まったら良いわよ。これから馬車で帰るところ、一緒に馬車に乗って帰ったら良いわよ」

リリアが言うと家族の表情は明るくなった。

「本当か!ありがたい!野山で迷って焦りながら彷徨っていたんでとにかく今夜の寝床が確保できればそれでよい」

ガレンと名乗る男は家族を振り返りながら喜々としている。

「お嬢さん達ありがとう、家族がたすかるわ」

ローザも息子も喜んでいる。

「よし!じゃぁ、とっとと撤収!さっきの商人にも追いつかないといけないし、ティグレ達も早く出発準備」

リリアは午後の日が傾く草原で皆を促す。



リリア達の馬車は交差点を出発してリーヤ村に向かって森の中の道を北上中。

ガレン親子を乗せ、先発している商人の馬車を追いかける。

ティグレ達はまだほろ酔いの状態のようで、少々頼りないので馬車列の交尾を任せたくはないのだが、商人に追いつきたいリリア達は急ぎ気味で先行する。


「ティグレ、こちらはリリア、あんまり遅れないでついてきてよ」

「わかってるって、ちゃんと追っかけてるぜ」

ティグレ隊の馬車は通信のイヤリングで会話できる距離範囲内ではあるが、道がカーブにかかると木々の間に隠れて見えていない時もある。

リリア達の馬車はリリアが操車席、オフェリアが護衛席、アリスが車掌席で見張りを行っている。

日は西に傾いていて、背の高い樹々から長い影がひかれ初めて、空気も肌寒い感じになってきた。

リリア達はビスケットとチーズをかじりながら馬車を早足で進める。


森が途切れ小高い丘を回り込むような道。

左手の丘の上の軍が施設した木造砦を眺めながら馬車が進む。

ティグレ達は元気が出て来たのかリリア達の馬車のすぐ後ろまで追いついてきた。

「結構早足で進めて来たから、もうそろそろ追いつきそうだけどね、商人さん達の馬車」

「どうかなぁ、こっちは人がいっぱい乗ってるし、案外彼らの馬車の方が早いんじゃないかな?」オフェリアが応える。

馬車は丘を回り込んで再び森の中の道に入る。

リーヤ村の南側にある小高い連山の山頂が見えてきている。


森の道に入り曲がりくねった道をしばらく進んでいると川と小さな橋がかかっている。

「リリア、この先に煙があがってるわ」

車掌席に座るアリスの声が降ってきた。

「え?煙?どこ?…」リリア。

「正面のあれ?」オフェリア。

見ると橋の向こうの森から筋のように煙が立っているのが見えた。

「何か燃えてるのかな?全員スタンバイしておこうか」リリアが言う。

「リリア、急いで!商人達の馬車かも」

アリスの声にリリアとオフェリアが反応して振り返る。

「急ぐわよ!皆に戦闘スタンバイさせて! ティグレ!こちらリリア。前方に煙、商人達の馬車かも、急ぐわよ。戦闘スタンバイ!」

リリアは言いながら馬に鞭を入れると馬車は速度を一気にあげ始めた。



「見つけた!何か燃えてる! 右端の道路脇」

「見えた、何か燃えてる、皆気を付けて」

「全員降車用意!スタンバイ、スタンバイ!」

森の道を曲がると少し先に黒煙を上げ、燻っている物体を発見した。

「ディグレ、急ぐわよ!スタンバイ、スタンバイ」リリアが通信する。

「見えたぞ、あれ、馬車だろ、野郎どもスタンバイだ!」

リリア達は道路脇で燃える物体を見つけて馬車を走らせる。


「馬車だ!馬車だよ!馬車が燃えてる!全員降車!周囲警戒と生存者確認!」

轟音を立てて走らせていた馬車を止めて、リリアの命令とともに全員が路上に飛び出す。


道路脇で馬車が燃えている。

火災になってから時間がある程度経過したのであろう。

幌は燃え尽き、車体は黒焦げになって燻る炎が午後の影の中にチラチラと赤く輝いている。

「さっきの商人は?」

「まださっきの商人と決まったわけじゃないわよ」

リリア達は武器を手に煙を上げる馬車に寄る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ